第92話 待ち合わせ

彼女との待ち合わせに遅れた。


「………………」


わざと。



頭でカウントする、3週間。



また、待ち合わせに遅れた。


わざと。



3年後。



「………………」



30年後。


「………………………………」



300年後。



待ち合わせ。やっと、間に合った。

暑くもないのに、なぜか額から汗が流れる。



「どうしたの?」



「………ずっと、ずっと昔。前にも君に会った気がする」



「ふ~ん。それって、前世かなぁ。じゃあ、こうして死ぬのも2回目なのね!」


「っ!?」


躊躇なく、鋭い何かで刺された。深く、深く。抉る。今も。



もうすぐ死ぬと言うのに、まだ彼女の美しさに心を奪われている。





彼女との待ち合わせ。


しかし、どうしてもこの体は『わざと』待ち合わせに遅れてしまう。





次。


彼女に会うのは、いつだろう。


楽しみで仕方ない。

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