連休とX番

連休明けで、久しぶりに会社に出勤すると、死んだ目で仕事をしている田中さんがいた。


「おはようございます」


「おはよう~。三雲君、今夜暇?」


「いや、糞忙しいです」


「抱いて」


「いや、無理っす」


田中さんのネチネチした視線を背中で感じながら、僕は自分の仕事をテキパキ処理していく。


やっと昼休み……。


胸を強調してくる田中さんを無視して、半額のおにぎりを食べていると上司の木村さんに呼ばれた。


「明日から、また休みだそうだ。だから、今日のうちに資料をまとめておけよ」


「はい。分かりました」


自分のデスクに戻ると、田中さんの付箋紙が置いてあった。


『明日から、二人で旅行行かない?』


無視っ……と。


明日から、また連休。


久しぶりに実家に帰ろうかな。


「あっ…………停電?」


「キャッ! 恐いよぉ」


「ちょっ、あんまりくっつかないで下さい」



定時に退社。


僕と入れ替わるように【2番目の僕】が、出社してきた。


「おはようございます」


死んだ目で仕事をしている【2番目の田中さん】


「おはよう~。三雲君、アフターは暇でしょ?」


「いや、糞忙しいです」


「抱いてよぉ。何でもするからぁ」


「いや、彼女いるんで無理っす」



いつもの時間なのに駅内は、ひどく混雑していた。人身事故で電車が遅れている。


どうやら【8番目の僕】が、【12番目の田中さん】に線路に突き落とされたようだ。


二時間遅れでアパートに帰り、彼女と晩御飯を食べる。


「明日から、また休みなんだよね」


「うん。僕の替わりが大勢いるからさ。しかもどんどん増えてるし」


【4番目の田中さん】と映画を見ながらイチャイチャ、チュッチュッ。



明日は、田舎に帰って4番目の田中さんを親に紹介しよう。


きっと、喜んでくれる。



【51番目の僕の親】は、早い結婚を望んでいたし。



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