第48話 あなた


僕の妻は、優しい。



「あなた。毎日、寝てばかりいちゃダメよ」


「うん……」


「本当に分かってる?」


「分かってるって」


妻は、まだ何か言いたそうだったが、口を閉じ。静かに僕の様子を見ていた。


「何だよ、黙って」


「………大丈夫?」


「何が」


「いろいろとさ。1人で寂しくないかなって」


「寂しいよ。でも慣れた。それにたまぁにお前が会いに来てくれるし。だから、大丈夫」


「ごめんね、1人にして」


「……………」


20年前に事故で死んだ。それから、ずっと----。


再婚もしないで。


「そろそろ帰るね」


「もう、そんな時間……。早いな」


「また、来るからね」


「あぁ。待ってる」



苦労した分だけ老けた、白髪頭の僕の妻。



でもその優しさと笑顔は、20年前と少しも変わらない。

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