第41話 無
毎朝、同じ時間。同じ電車。同じ車両に乗る。
毎晩、同じ時間。同じ電車。同じ車両に乗る。
いつだってそう。乗るとこまでは覚えている。ただ、電車に乗っている時の記憶が俺にはない。
気づいたら、また電車を待っている。
そもそも。
俺は、どこに行こうとしてるんだ?
また電車が来た。
同じ時間。同じ電車。同じ車両。
「…………」
俺は、閉まるドアを黙って見ていた。
これでいい。
ゆっ……くり、動き出す電車。
車内には、1人だけ。姿勢よく座っている男がいた。
あれは…………………。
俺?
えっ、じゃあ、この俺は。
『本日をもちまして、この車両は』
ま、待って………
俺…を………
の………せ………
…
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