第24話 餓鬼と僕

「あなたは、何を食べているんですか?」


「人間だったモノだよ」


「美味しいですか? 人間は」


「不味い。糞不味いよ。食べる前にだいぶ腐っていたしね」


「じゃあ、僕を食べてみたらどうですか? 若いし、まだ生きてる」


「………いや、お前は食べない」


「どうして食べてくれないんですか?」


「…………」


「どうして」


「お前には、この糞のような終わった世界で生きていてほしい」


「僕は、もう生きたくないです。だから、早く。僕を殺して下さい」


「そうか……。分かった。殺そう」


「…………はぃ」


「でも『今』じゃない。お前が、この世界で他の人間と幸せに暮らせるようになったら、その時。その時は、必ず、お前を殺しに行くよ」


「分かりました。じゃあ、そろそろ僕は行きます。南に」


「あぁ」


「さようなら」


「ちょ、ちょっと待て! これを持っていきな」


「缶詰め? こんな物どこで手にいれたんですか?」


「まだ、食べれるはずだよ。こんな餓鬼の私を恐れずに今まで付いてきてくれて」



『ありがとう』



「…………」


「お前は、餓鬼になるんじゃないよ」


「……………………は…ぃ」



僕は、前を向いて歩く。歩く。



餓鬼の悲痛な叫びを背中で聞きながらーーーーーー

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