第20話 観覧車

彼女のいない俺は、気分転換に観覧車に乗った。10年ぶりぐらい。しばらく外の景色を眺める。


一番上の白い棒が見えてきた。


「!!!!?」



人……か?


老婆が、棒にしがみついている。絵本に出てくるような痩せた鬼婆。


俺は、目を閉じた。絶対に見てはいけない。


「…………………」


見てはいけない。



はぁ………。


はぁ……………。



今、どの辺だ?



こうやって目を閉じたまま、下まで降りよう。係りの女がドアを開けたら、目を開ければいい。


「………………」



まだか?



「………………………………」



まだか?



「…………………………………………」



まだ?





もしかしてーーーーーー



止…まっ…………て




俺しかいないはずの籠の中。

今は、誰かの息づかいを感じる。



俺は、ドアに体当たりした。



「なんだよ、これ………」


開くはずのないドアが簡単に開き、真っ逆さま。俺は地面に叩きつけられた。即死。



観覧車は、『一番上』で停止していた。

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