第四話 募る思い
美海side
「はぁ…」
芹沢君と別れてから、家のベッドに寝転がってるけど、いまだに熱が抜けない。粗熱を取る前のプリンみたいだ。(実はさっき、公園の周りを走って来たんだよね)
でも、冷静に考えてみると、芹沢君、どこか女の子慣れしてるっていうか…。
前に彼女でもいたのだろうか。そうだとしたら、罰ゲームとして嘘告するものありだなぁ、なんて思うんだろうか。
もう今の私は、ついさっきも私と打って変わって、熱なんて何処かに行ってしまった。
芹沢君は、元カノがいたという噂がある。
「もしかしてまだ、元カノのこと好きだったり…して?」
自分の声が誰もいない部屋に消えた。
なんか、やだな。
芹沢君を、取られたくない。
改めて、素直じゃない自分に腹が立つ。
「明日も学校とか…。心臓持たないし…」
どうしたら素直になれるんだろう。
そんな思いばかりが募って、宿題に手が付かない。
まぁ、どうせ明日提出の宿題はないんだけど。
芹沢君は私と本当に付き合いたいのかなぁ。
あぁ、今すぐ芹沢君と話したい。
その時、ラインの通知音が耳に入った。
(誰だろ、こんな時間に)
そう思って画面を開くと、そこに移った名前は―――。
「せ、芹沢君…」
神様に、私の気持ちが伝わったんだろうか。
そんな疑問を抱えながら、ラインを開いた。
『今日は楽しかったね』
なんだ、決まり文句みたいなもんじゃない。
そう思ってしょんぼりしていると、すぐにまたラインの画面にメッセージが表示された。
『明日もあいてる?でも、明日は軽音あるし、遅くなるかな?』
そっか。明日部活だ。ということは、芹沢君と放課後も一緒に過ごせる時間が増える。
果たしてそれが嬉しいのか、私にはわからなかった。
「そうだね。一応あいてるよ」
そう送って、返信を待った。
『じゃあ、明日は学校の近くにあるカフェに寄って行かない?あそこはパンケーキが旨いから』
気を使ってくれているのがわかる。
それってなんだかくすぐったい。
でも、この時気付いた。
これが、本物の恋だって。
「芹沢君が言うなら」
相変わらず素直じゃない返事だな、と思ったけど、それでいい。
芹沢君は、この告白を、ただの罰ゲームとしてしかとらえていないんだもん。
いつかこの恋には、終止符を付けないと。
でも、それは突然やって来そうで、それが怖い。
でも、私にはこの恋を諦められる覚悟がない。
だって、芹沢君には本気で恋をしているから。
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