嘘から始まる私の恋

平川彩香

第一話 初恋は、一瞬で

美海side

「好きだ。付き合ってくれ‼」

「何でですか」

屋上に呼び出されて、またこれ。今回はバスケ部のキャプテンだ。

「何でって―――君が好きだから」

「私先輩のこと何も知らないんですけど。っていうか、何で私と付き合おうと思ったんですか」

先輩は少し困った顔をしてから言った。

「可愛いから?」

「見た目で決めるのやめてくれませんか?」

「はぁ?」

うわ、キレた。こいつ最悪。

思わず鼻で笑いそうになってこらえた。

「お前さ、自分が可愛いからって先輩のこと見下してんじゃねぇよ」

「は?私先輩の事情とか知りませんし、見下してません」

「残念だなぁ…。美海ちゃん可愛いと思ったのに」

知るかよ、と思って思わず言ってやった。

「残念でした。私こんな性格なんで」

「んだとぉテメェ…」

「ってか、自分から呼び出しといて、キレるとかおかしくないですか?私そう言う人無理なんで。もう帰りますね」

ホント、嫌。っていうか無理。

「待てよ‼」

手首をつかんできた先輩の手を振りほどいて扉へ向かっていると、先輩は素早い身のこなしで回りこんで来た。

「…何ですか」

「人を見下しといて、ただで済まされると思うか?」

「人を見下しているのは先輩の方じゃないですか」

先輩はゆでだこみたいに顔を真っ赤にして、大きな手の平を振り上げた。

あ、ぶたれる―――

思わず目をつぶった。

バシンッ

何かに当たった音はしたけど、痛くない。思わず目を開けると、目の前に大きな背中があって。

「——ってぇ…。ひどいじゃないですか」

彼は苦笑しながら体制を整えた。

「自分が呼び出しておいたのに、か弱い女子に暴力ふるおうとか」

「何だよテメェ…」

「それより、自分の心配をした方がいいんじゃないですか?受験を控えてるのに」

そう言って、彼はスマホを取り出すと先輩の顔の前にずいと突き出した。

「実はさっきの、動画取ってたんですよね。今もです。あ—―、大丈夫なんですか?女子に暴力ふるおうとしたって、先生にバレたら、大学、受けられませんよ?この子に謝って、もう話しかけないって約束してくれるんなら、この動画は削除しますけど」

先輩は悔しそうにしていたけど、私の方へ向き直って小さな声で誤った。

「すまなかった」

そう言うと、先輩は悔し涙をうっすら浮かべて走り去った。

「——ありがと」

恐る恐る声をかけると、その男子はふわっと笑みを浮かべて言った。

「ごめんごめん。通りかかって、つい聞いちゃったんだよね。それでつい。俺ってお人よしだから。でも、動画は取ってないから安心して」

「あの、私、水川美海っていいます。その——」

「俺は芹沢琉星。君も高一でしょ?タメ口でいいよ」

芹沢琉星は、一瞬で私の心を奪った。

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