恋人たち(第77番)

    【本歌】

    瀬を早み 岩にせかるる 滝川の

    われても末に 逢はむとぞ思ふ


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    あなたと一緒の世界を知って

    忘れたくないことが沢山生まれた

    どこまでも持ってゆきたい

    想いの総て

    

    ねぇ

    出逢いは地球だけじゃないはず

    いつか私がここから去る日が来ても

    きっと又 逢えるでしょう


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


中学2年のとき、突如【クラス対抗 百人一首大会】なるものが催された。

いったい誰の発案だったのか。校長か、教頭か、学年主任か、国語教諭か。


まず、クラスをグループ分けし、そこで1位を決める。

次いで、各グループの1位同士を戦わせ、クラス代表を決める。

ハッスル(死語)しすぎた私はC組の代表になってしまった。焦った。


A組の代表はTちゃんだった。彼女は1年の時のクラスメイトで、親友だった。

2年になりクラスが別れてしまったが、交流は続いていた。私が新井素子さんの

大ファンになったのは、彼女が貸してくれた小説がきっかけだ。


ある日、Tちゃんが嬉しそうに声をかけてきた。

「C組の代表、由貴なんだってね。すっごい愉しみ!」

彼女は、競技かるたの名人だったのだ。ビビった。聞いてないぞ、そんな話。


【一字決まりの七首】を教えてくれたのもTちゃんだ。

彼女は百首の中で一番好きな歌を教えてくれた。それが、今回の77番。

「これだけは誰にも取らせないの」

と云ってTちゃんは、不敵に可愛く笑った。

私は41番が十八番おはこだったので、かぶらなくて良かったと思ったものだ。



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