ツイてない男(ヤツ)
棗りかこ
ショートショート「ツイてない男(ヤツ)」(1話完結)
世の中には、ツイてる男と、ツイてない男の、二種類しかいない。
この話は、ツイてない男の話だ…。
カースラーは、科学者だった。
だが、恵まれた科学者とはいえなかった。
指導教授と、そりが合わず、大学を追われた科学者だった。
研究所でも、彼の研究は、儲けが期待できないと、冷遇される一方だった。
男は、親の遺産が手に入ると、
「カースラー研究所」を自宅の庭に作り上げた。
そこで、画期的な研究に着手した。
「できた!」
カースラーは、今度こそ、研究が実ったと、狂喜した。
だが、研究の一日前に、ライバルが、彼と同じ研究を、特許登録していた。
そして、彼の目の前で、そのライバルが、ノーベル賞を受賞したのだった。
「今度こそ!」
誰も思いつかないような、発明を…。
カースラーは、タイムマシンの研究に着手した。
「これを発明すれば、今度こそ、ノーベル賞も…。」
そして、彼は、苦心の末に、タイムマシンを完成させたのだ。
「成功してくれ。」
彼は、祈りながら、タイムマシンの、スイッチを回そうとした。
理論を思いついてから、二十年の月日が経っていた。
試運転に成功すれば…。
彼には、今迄の苦労も吹っ飛ぶ、バラ色の未来が約束されていると思われた。
よし…。いくぞ。
カースラーが、スイッチを回そうとした、その時、
不意に、カースラーの、鼻孔がかゆくなった。
ハアックショーーーーーーン。
運は彼に、味方してはくれなかった。
運悪く、スイッチが入って、カースラーは、
タイムマシンの目盛を、同時に回しすぎた。
うわああああああああ。
カースラーは、
ウイーンという機械音と共に、過去に飛ばされていった。
彼がタイムマシンを思いつく、以前の過去の地球に…。
老いたままの、姿で…。
ツイていない男…。
―完―
ツイてない男(ヤツ) 棗りかこ @natumerikako
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます