第6話 わが家が貧乏な理由がわかりました
私が最初に畑に肥料を撒き、それを吸収した土を畑全体に広げてから、早一年。私は三歳になっていた。これまでは赤ちゃん感が強かったが、そろそろ立派な幼児である。こどもという言葉が似合うようになってきた。
畑のほうはというと、これがかなりいい感じである。これまで芋やにんじん、玉ねぎなどは植えた苗に比べて、収穫量は多くなかった。けれど、今では芋を植えれば一つの苗から二十は取れるし、にんじんは種を植えれば甘くてまろやかなにんじんがたっぷり獲れた。たまねぎもいい具合に太って、まんまるで大きい。今ではグオーラさん家の野菜はおいしいとご近所さんにも評判だ。
さらにS素材もざっくざく獲れている。
最初、畑からS素材である【薬草(特)】が生え始めたとき、母は悲鳴を上げ、父は薬草が生えた畑に囲いを立て、周囲からそれが見えないようにした。一般家庭の畑にS素材が生えてくることを知られるのは、良くなかったらしい。
父と母はS素材が畑から獲れたことを隠し、猟師をしている父が、森で採取したことにした。そして、父の伝手で、道具屋に卸しているようだ。
畑で獲れた【薬草(特)】、【睡眠草(特)】、【爆薬花(特)】などなどのたくさんのS素材は、母が採取、乾燥をさせ、父が売る。ことでたくさんの資金を得ることが出来た。
これで、私が当初に計画していたことはすべて完遂できたと思う。
・父を元気にすること
・畑を肥えさせ、収入源を確保すること
だから、わが家は貧乏から脱出できるはずだったんだけど……。
「やっぱり、びんぼうなまま……」
恐ろしいことに、一向に豊かにならない。貧しさがとまらない。
そこで、畑に肥料を撒き、おたまで土を広げる間に、なぜわが家が貧乏なのか、できる範囲で調査をしてきた。そこでわかったことは――
「しゃっきんをしてるみたい」
そう。どうやら父と母はだれかに借金をし、その返済やらなんやらで、首が回らなくなっているようなのだ。
でも、そんなことってある?
健康な若い父と母が寝る間も惜しんで働き、畑からはざくざくS素材が出て、野菜も豊作で食うには困らない。それなのに、借金が返しきれないなんて……。
たぶん、借金をしたのは、父が病気になってからだと思う。今、真面目に働いている二人が、私が生まれる前に、身を持ち崩して借金をしたとは考えにくい。
やはり、父が病気になり、母はまだ働きに出れなかった、生後一か月。あの辺りが怪しい。その時期にわが家にお金がなくなってしまったため、父か母が借金をし、その返済が現在まで続いている。
「……だまされているよかん」
するよね? すごく父と母がなにかに騙されたり、仕組まれたりしている予感がする。だから、私は家の扉をガンガンガンッと乱暴に叩かれたとき、ああ、ついに来たな、と思った。
「おい! 扉を開けろ! いるのはわかってるぞ!」
「貸した金を早く返せ!!」
そう。明らかにカタギではない、借金取りの登場である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます