シンデレラはまだまだ厨二病?
つきの
◆ 実は物語はこんな風に始まってた訳で◆
最初から何となく嫌な予感はしてたのよね。
だから、お母様があたしと妹を連れて再婚したいって言い出した時、止めたのよ。
「お相手の方にもお嬢さんがいらっしゃるんでしょう?それも聞くところによると、とても美しいけど、なかなかに神経の細やかな方で、以前に再婚された方を何人も追い出されたらしいじゃありませんか」
だのにお人好しのお母様は
「だから、尚更よ。幼い頃にお母様を亡くされて愛に飢えてらっしゃるんだと思うの」
なんて呑気に言っている始末。
だから、お母様は苦労ばかりしてるのよ、とあたしは密かに
元々、貧乏貴族だったお父様と熱烈な恋の末結ばれたお母様。
でも病弱なお父様には呆気なく死なれてしまい、残されたあたしと妹のドリゼラを養う為にお金持ちの貴族の子女の家庭教師としてずっと働いてきた。
そしてそのお屋敷をたまたま訪問された、主のご友人である今回お義父様になられる方に見初められたというわけ。
反対しても無理だとはわかってた。
お母様は変な所で困っている人を放って置けないところがある。
それに人から求められると断れないところも。
溜息を、もうひとつついて、あたしは答えた。
「わかったわ、お母様」
§
そうして、御屋敷にやってきたわたし達親子を迎えて下さったのがお義父さまと義妹になることになったシンデレラだった。
あ、自己紹介が遅れちゃったけど、あたしの名前はアナスタシア。歳は21歳。
シンデレラは19歳らしく、妹のドリゼラは20歳だから、自然とあたし達はシンデレラの”お義姉様”になったというわけ。
初めて見たシンデレラは、そりゃあ綺麗だった。あたし達もそれなりだとは思うけど、そんなレベルじゃなかった。
キラキラ光る金髪に湖のような青い瞳は長い
滑らかな肌は白く、鼻筋は通って品良く花のような唇。
ここまでレベルが違うと嫉妬する気にも慣れない。
こんな綺麗な子が義妹になるんだってドキドキしちゃった。
これはドリゼラも同じだったみたいで、ウットリとシンデレラを見つめてた。
ドリゼラはまたお母様に似てお人好しで単純だし、綺麗な人や物に対する憧れが強いから、シンデレラに夢中になっちゃうだろうなぁって思った。
ただ、ちょっと気になったのは、シンデレラのドレスよ。
何故だか灰まみれ。
こんな貴族のお嬢様が自分で掃除なんてするわけないし。
何かのアクシデントでもあったのかしら?
いやいやいや、それにしても、あたし達が今日、この時間に来ることはわかってただろうに何をしてたのかしら?
あたしの頭の中では?が無数に飛び交っていた。
お義父さまを見ると、心なしか顔が強ばって汗をかいておられるご様子。
あたしの?はまたまた増えていった。
お母様は?と見てみると、さすがに少し首を傾げているけれど、元々なんでも好意的に受け止めるお母様のこと。
「初めまして、シンデレラ。あの、その灰は何処かで転ばれたりしたのかしら?お怪我はないの?大丈夫?遠慮なさらずに着替えていらして」
なんて、話しかけている。
シンデレラはそれを聞いて、少し寂しそうに睫毛を伏せて(それもまた美しかった)
「ああ、お義母様、お義姉様方に初めてお会いするというのに、このようなみっともない姿で申し訳ありません。さぞや軽蔑なさったことでしょう」
と答えている。
いや、軽蔑なんて……心配しても、そういう問題じゃないレベルの灰まみれだからね。
思わず、心でツッコミを入れてしまったあたし。
お母様は自己紹介もそこそこに心配で仕方の無い様子。
「ああ、軽蔑なんてとんでもない。とにかくあなたが怪我をしてなければいいのよ。ドレスもそのままだと不快でしょう。とにかく着替えて……」
そこまで言った時にシンデレラは
「私なんて、私なんて、この灰まみれの姿がお似合いなのですわ!」
「「「へっ?」」」
思わず、あたし達母娘は変な声を出してしまった。
お義父さまが困ったような顔をしてシンデレラとあたし達を交互に見ている。
お母様が恐る恐る、でも優しく声をかけた。
「あのね、そんなことはないでしょう。
あなたはそんなに美しいのだもの。
サッパリとした物に着替えていらっしゃいな。その方がお似合いよ」
シンデレラの美しい目が、心なしか少し、つり上がったように見えた。
と、思ったら
「誰にもこの孤独をわかってもらえない可哀想な私。この外見だけしか、愛するものはないとおっしゃいますのね」
わぁーーーっ!と泣き声をあげながら奥へと走り去っていった。
………………………………。
あ、あの……あの子、こんなキャラだったの?
っていうか、あたし達、まだ自己紹介すら、してないんですけどーー!
呆気にとられて立ち尽くしているあたし達に、お義父さまが済まなそうにポツンと言った。
「すまん、実は娘は、シンデレラは大変に思い込みが激しい
あたしは危うく膝から崩れ落ちそうになった。
これから、やっていけるんだろうか、あたし達。
まだ、ショックから冷めやらぬ我が母と妹を見遣りながら、あたしは密かにまた溜息をついたのだった。
(続)
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