親友2人と俺でラブコメの世界に転生した件について。

べんぜん

第1話

人生において、終わりというものは唐突に訪れる。


俺のじいちゃんだって、病院では元気に軽口を叩いてゲラゲラ笑っていたのに、次の日には嘘みたいに静かに、幸せそうに息を引き取った。

大往生だった。


俺たちにとっては唐突だったのかもしれないが、彼にとっては予期していた事なのかもしれない。


だって、じいちゃんが入院してからはいつも言われてたんだ。


「いいか、⚫。

後悔だけはしないように生きるんだぞ。

最後の1秒まで、人生の素晴らしさを吸い尽くせ。」


だからこそ、じいちゃんがくたばってからは後悔しないために一切の努力を惜しまなかったし、人助けだってした。現状において、順調に人生の素晴らしさとやらを満喫出来ている。

そして、これからもそのはずだった。


…でもさ、じいちゃん。そんなこと言ったってさ、これは無理だよ。





俺と俺の親友2人は、空から迫る鉄骨の殺意に晒され、そのまま貫かれた。






― ̄― ̄― ̄― ̄― ̄― ̄― ̄― ̄― ̄― ̄― ̄―


「っ!」



「目覚めたようですね。おはようございます、でよろしいでしょうか?」



「貴女…は?」


目を向ければ、そこにはひとりの女性の姿があった。


質問に対し、彼女は口を開く。


「あら?学校集会はお嫌いですか?

私の名前は織姫 麗。一応、生徒会長の座を賜っています。」


見覚えのない顔が映った、理知的な双眸の両端を下ろし、微笑む。この世の慈愛を全てぶち込んで、蜂蜜で溶かしたような微笑みだった。

同時に、そのシャープな輪郭を傾けるものだから、烏の濡れ羽色をした髪の毛が、はらはらと零れる。


俺は、時を忘れ、思わず見惚れてしまった。うちの学校でも、いや、テレビですら見ることのない美人だ。視界の下部に映る彼女の胸は豊満であったが、視線は彼女の顔から動くことは無い。…この形容の仕方、自分で自分の事をキモイと思ったが、褒め言葉に関しては一切誇張のない評価である。



唐突に、目の前の顔が曇る。

「無視は酷いですよ!

下校時刻になっても教室にいる方がいらっしゃるという報告を受けて起こしに来たのに!」


その言葉に、違和感を覚える。

―――そうだ、鉄骨に…!


俺は跳ね上がるように立ち上がり、辺りを見渡す。「わわ、なんですか!?」見覚えのない教室の隅に座っていて、足元にはスクールバッグ、机上のぬくもりと彼女の発言から察するに、俺は寝ていたのだろう。なぜ俺がここに?そもそもここはどこだ?2人はどうした?…ダメだ、分からないことが多すぎる。


「また無視ですか!もういいですっ。起きたのなら早く帰ってください!延長届のない生徒の下校時刻はもう過ぎてるんですからね!私は生徒会室に戻りますから!!」


織姫さんは踵を返し、そのまま教室を出ていった。


参ったな。そしてやらかした。ここがどこなのかくらいは聞いておくべきだったかもしれない。

もっとも、恐らくこの学校の制服であろう衣服(織姫と似たデザインだった為、そう推測した)をまとう俺がその質問をすれば狂人認定されること請け合いだろうが。



とりあえず、学校を出るか。

帰るための手がかりが何一つ見つからなければ警察にでも世話になるしかないだろう。 一緒に死んだハズの2人の安否も気になる。


俺は足元のスクールバッグを手に、教室を出ていった。


――下駄箱まで行ったところで自分の靴が分からなくなり再び教室に戻ったことは早いとこ忘れたい。

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親友2人と俺でラブコメの世界に転生した件について。 べんぜん @benzene3

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