【閑話】 グリーンの悲劇

 ゴオオオオオ!

 

 炎の断末魔が聞こえ、

 外の人集りに紛れて俺は泣きながら自分のアパートに駆けよろうとしたが消防や警察に


「危ないですから!若竹さん!」


「住民は全員避難してます!」

 警官が気遣うがあの部屋には!


「俺のっ…俺の大切な彼女たちがあああっ!!」

 燃え盛る炎の中には大量の俺の彼女たち…フィギュアがあるのだ。

 正直部屋なんか燃えてもすぐ次の部屋借りれるくらい正義のヒーローの給料はいいけど、

 俺は給料の大半を美少女フィギュアに費やしてきた!だから安いアパートを借りてたのにっ!

 誰だ!放火なんかしやがったバカは!

 絶対に許さんぞおおお!!


 俺の正体はヒーローのグリーン。

 毎日毎日怪人共と戦って汗水流して貯めた金で美少女たちに囲まれて休日を過ごすのが日課だったのに!

 そりゃまた買えばいいのもあるけど!絶版になった美少女たちもいるんだぞ!!


 そう、俺はオタクだ。顔も別に普通。普通にコミケとかに行く。

 やらしい薄い本も買う。それも燃えたけどな。


 俺は溜息をつくと、仕方なくレッドの部屋にしばらく泊めてもらうことにした。

 ブラックとピンクはバカップルだし、イエローは正体がインド人でカレーのこだわりが凄く家いくとそこら中がカレーシミだらけだし

 カレー臭えしカレーのストックが凄いし、後、インド人だから日本語に慣れてないのか時々何言ってるか解らねぇ!

 だから戦闘の時もイエローはたまにベンチに座ってカレースナックをボリボリ食べている時がある。

 何でこんな奴をヒーローにしたんだ!司令部!いい加減にしろ!


 だからイエローはカレーばっか食ってるの歴史が繰り返されるんだよ!


 そしてブルーはもうダメだ。

 あいつは…もう手遅れだ。

 正体が中二病を拗らせたサラリーマンなのだ。

 大人のくせに何やってんだ!!カッコいいと思ってるのが痛い。


「そんな訳でお前んちしかなかった」

 と高級マンションのエレベーター前のカメラ付きのセキュリティ機械に向かって俺は頼んだ。


「うぜえ…」

 と彼、レッドの小高暁雄はイケメンだが半目で対応して渋々ロックを外した。

 俺はエレベーターに乗り最上階のボタンを押す。20階建の最上階に奴の部屋がある。

 こいつっ、リーダーだからっていい暮らししてんな。


 しかし部屋を開けるとゴミが散乱している。

 こいつはイケメンだがめちゃくちゃだらし無い。

 普段はヒーローの時、めちゃくちゃ正義感溢れた熱い男になるんだが、

 仕事が終わったらまるで人が変わったみたいにだらし無くなる。二面性だ。


「おい、掃除くらいしろや!なんだよもう!カップ麺ばっか食って!お前レッドだろうが!」

 俺はとりあえず片付け始める。


「ありがとう、お母さん」


「お母さんじゃねぇよっ!」

 殴り付けたいが我慢した。

 洗濯もんも溜め込んでからに!あんな高級な洗濯機買っといて回した形跡がない。

 説明書を読むのがだるかったんだろうな。


「今日の戦闘もだるかったな…」


「え?お前めっちゃカッコよく技決めてたろう!決め台詞も完璧で」


「いやいやまぁね、でも今日はカメラ来てなかったから70%くらいのやる気出してた。ほんとクソだりい。怪人とか倒すの。給料高くなきゃやってないわー…」

 レッドは…もう全てが怠いに取り憑かれているのか寝巻きに着替えるがボタンも掛け違えているがそのままだしほんと決まらないなこっちは!


「もう新しいヒーロー入れたいわ!こないだのあのイケメン高校生とか見習いでいいから入ってくんねーかな?」

 と今、話題の怪人を倒したイケメンを思う。


「おいおい高校生だろ?弱い怪人だったみたいだし…あんまり無理させんのもな」


「ブラックとピンクも高校生だろうが!あいつら見てるとイラつくわ!」


「自分がいないからって妬むなよ」


「いたわ!人形だけど!!」

 レッドは哀れむように見る。


「彼女なんかめんどくさいわ…デートだのなんだの超めんどい。他の女の子と食事したり遊びに行ったらすぐ怒るじゃん?」


「世間ではそれを浮気という」


「それもそうだな…ああ、だりい」


「お前司令部の女子にも手を出したろ?」

 女にもだらしないなこいつは!


「違うよ、向こうからだよ、俺はいつも向こうから告白してくるから1.2回付き合ってやってるだけだ」


「あっそう…」

 女性の前では上部だけいいからなぁこいつ。

 何股してるのか自分でもわかってなさそう。


「そういや、あの怪人倒したイケメン高校生の彼女があの入院した店員なんだけど、めっちゃクソダサいメガネ女でびっくりしたよ!イケメンなのに凄い趣味してんなぁ…なんか睨まれたし」


「へぇ?何それ面白いじゃん?」

 レッドが珍しく興味を持ちやがった。


「お前…変なこと考えてない?」


「いやあ、考えてないぞ?失礼な…俺は正義のヒーローだよーん…。そんなさあ、その彼女の見舞いに行って俺に惚れるかどうか検証しようとか思ってないよ?正義のヒーローとして行くんだから勝手に向こうが惚れても知らね」

 なんて野郎だ。高校生相手に大人気ない!


「はぁ…まぁ俺も行くよ…見舞いくらい行かないとな正義のヒーローだし俺たち…」


 ちなみに俺たちの正体は国民全員が知っている。だって外で変身するし。モロバレして応援されているのだ。

 司令部も正義のヒーローは悪みたいにコソコソ正体隠す必要なしで、雑誌とかにもバンバン載ってるのだ。

 俺は地味顔だからいつも隅っこの後ろなんだけど。もちろんレッドは真ん中。

 これで余計にファンの女がキャアキャア言うのだ。アイドルグループじゃねっつの!


 レッドが欠伸をしてソファーで寝ようとしたから俺はレッドを寝室まで引きずって言ったがそのベッドの下に女が潜んでいた。


「わっ!!!」


「れれれれっレッド様あああ!」

 女はどう見てもストーカーだった。


「うわぁ…また出たあ…」

 そしてレッドは女に近寄り腹パンをかまして警備員に連絡した。

 なんて手際よくストーカーの始末をしてるんだ!こんな時だけ!


「季節の変わり目によく出没するんだよ…やっぱ掃除しとかないと湧くなこんなのが」

 とレッドはまるでゴキみたいに気絶した女に向かって言った。


 俺は思った。早く新しい家探そ。

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