第7話 戦慄のイケメンコール
薔薇を送って久しぶりの米を炊いてボソボソと肉なし野菜炒めを作り、
私は夕飯を済ませて手早くシャワーしてさあ寝るかと電気代節約の為に22時に寝ようとして気付いた。
スマホに電源を入れると暗闇にイケメンが光輝く。
「ぐわああああ!!」
思わずない胸を抑えて倒れこむ。
くっ!待ち受けを変えたい!
毎回心臓に爆弾をセットされている気分だ。
「私からお休みと電話しなきゃいけないのか…」
しないとまたどっか爆破されるな。
あいつを舐めてはいけない。本能でそう感じる。
しかし彼氏など生まれてこの方持ったことがない私が
バイトの面接とか以外で男に電話を自分からかけるなんて未だかつてないことだ。
私はとりあえずスマホを置いて23時30分を待った。
何を言えばいいのか?お休み?それだけでいいのか?
どうしようどうしようどう…頭がぐるぐるしてきた。
そしてついに時間が来てしまい、私は観念して電話をかけたら3回で出た。
「雪見さん?」
栗生院くんのイケボイスが耳元で大きく聞こえてきた。
ウグゥ!声だけで!
「ど、どうも…電話しました。えっとあの…お休みなさい!」
と言い私は切ろうとしたが
「待って待って!流石に早いよ!何か話しましょう!」
そう言ってちょっと笑い声がした。
「…今日もバイトだったんですか?」
「うん!闘って負けてきたー!でも一発だけヒーローのスネ蹴っといたよ」
と嬉しそうに言う。
「へ…へえ…。でも怪我ばかりじゃ大変ですね」
「怪我もバイトのうちだよ!気にしないで?あ、心配してくれてるのかな?それはちょっと嬉しい」
と素直に言われると照れる。
と言うか何この幸せな時間は!イケメンクソサイコなのに!
「雪見さんは今日何か良いことあった?」
「え?私はスマホをプレゼントされたし、あ…ありがとうございました。
栗生院くんの言うようにフリマアプリで売ってみたらすぐに売れました…凄いですね」
売ったのはあなたのくれた薔薇なんだけどね!!でも言えないわ。
「そうなんだ、良かったねえ!」
彼はあまり追求せずいつものようににこやかだ。売ったことがバレたら怒られるかな。
「それにしても雪見さんが電話してきてくれて良かったよ…忘れて寝ちゃってたらどうしようかと思った」
う…さっきまさに忘れて寝ようとしてた!!
だって私のサイクルにないものだったし!
「わ、忘れるわけないですよ…あは」
「そうだよねぇ!まぁ忘れてたら雪見さんの学校を爆破して僕の学校に編入させるとこだったけどー…良かった♡」
と聞こえゾクリとする。忘れなくて良かったあ!
「うん、それに疲れが吹っ飛ぶよー!雪見さんの声を聞けて良かった。良く眠れそうだよ!明日の朝は僕が電話するよ!」
…早起きしないとヤバイな…。
「あ、朝は何時頃かけてくるんですか?」
一応聞いとかないと起きられない。
目覚ましもセットしとかないと…と言ったら
「うん?教えないよ?」
「は?はあ?何で?」
目覚ましがセットできんだろ!時間を教えろおおお!!
「だって…寝起きの雪見さんの声が聞きたいし?」
と言われ世界が音を立てて崩れる気がした。
だって…私の寝起きの声なんて最悪なんだけど!
声なんか枯れてるババアみたいなヤツだよ!そんなの聞かせられる?
自分が可愛い女子でないことに後悔した。
「あの…時間を…」
「うん!教えないよ?楽しみにしててね?じゃあお休み雪見さん!大好きだよ!」
と言い電話を一方的に切られた。
私はまた石になりかけたがハッとして我にかえる。
一体何時なんだ?学校にいく準備だってあるんだから7時はない!6時か!妥当だ!
それなら5時30分にセットすれば大体声も大丈夫か?
とりあえず私は5時30分にセットして布団を被ったがさっきの大好きだよ!が頭にグワングワン入ってきて眠れない!
なんと言う安眠妨害な甘台詞を残していくんだよ!絶対に楽しんでいる!
あああ!私よしっかりしろ!あれはもう夢だ!あれはただのどっかのアイドルだ!
そう自分に言い聞かせなんとか眠りについた。
*
翌朝…5時きっかりに僕は電話をかけた。
しばらくコール音が聞こえやっと電話に出てくれた。
これは相当眠いだろうな。
「………」
おや、眠すぎて声がしないのか出したくないのかな?
「………い」
「雪見さん、朝だよ?起きてる?あ、今起きた?大丈夫?」
すると派手にコケる音がして物が落ちる音。
ガシャドシャ!
「雪見さん?大丈夫?どっか怪我した?」
「……い…えい…」
いえーい?
僕は震えた。面白すぎて。
寝起きで完全に声が枯れてる。
「雪見さん、ごめんね?ちょっと早かったね?もっと眠ってたかったよね?
でも少しでも早く聞きたくて電話しちゃった!雪見さんの声を聞いたら一日のやる気が出てくるんだけど…まだ眠い?」
しばらく無音が続き、
「ううん…うん…うおん、えほっ!えほっ!」
完全に声を整えようと努力している様子!
僕はもう爆笑しそうになり思わず口を抑える。
「おはようこざいまふ」
だいぶ頑張ったが最後が可愛いな!
はぁ、ヤバイ!本当に僕は元気が出てきたよ!
つまらない朝が全く新しく輝いて見えるよ!
雪見さん君は僕を楽しませる天才だ!
ああっ!なんて愛しいのだろう!
「おはよう雪見さん!君と登校できなくて残念だよ…学校反対だし…」
「そ…言えば学校…どこなんれすかあ?」
と掠れながらも諦めたのか聞いてきたので僕は学校名を告げると驚かれた。
僕の学校は超金持ち共が通う白樺学園だ。
「僕も雪見さんと一緒の学校が良かったよ…やっぱり爆破していい?」
「ダメ!!」
と彼女は爆破と聞いて覚醒した。
「ふふふ…冗談だよ?…今日雪見さんはバイトだよね?ちょっと買い物に行こうかなぁ、コンビニ」
「なっ…バイト先に来るのはちょっと!!」
「ん?大丈夫だよ仕事の邪魔はしないよ!それじゃ楽しみにしてるよ!」
と電話を切ろうとして
「あ、忘れてたよ!」
「まだ…何か?」
なんだかグッタリした声が聞こえるが
「うん、寝起きの雪見さん…とても可愛かったよ!」
と電話を切った。
朝日がこんなに美しいと感じたのは初めてだ。
*
私は電話を置いて戦慄した。
可愛いと言われた。
あの枯れたババアみたいな声が!!
というか5時とか早いよ!!何考えてんだこのサイコ野郎!!
しかもバイト先にお前が来たらどんな騒ぎになると思ってるんだよ!
「これは…死人がでるわ…」
1日の始まりから溜息が出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます