第4話 神社巡り

日曜日の朝、京都に向かって俺は出発した。

休みの日とあって、行き交う人は多い。

だが…早速ついていない…

線路の確認等で待たされたため、京都についた時にはもうお昼となっていた。

そうして京都駅についた俺は、観光客の多さに驚いた。


「すげぇ……これが古都京都かぁ。歴史的な建築物の数々…きっとお宝な古書も数多く眠っているんだろうなぁ」


京都駅から須賀神社まではバスで移動する。

俺はバスに揺られながら、京都の街並みを見つめる。

そして、俺はふと隣の席に座る少女に目をやった。

昨日、古書店にやって来た少女”ミサキ”だ。


「というか……どうして、あなたがいらっしゃるんですかね?」

「今は店主と客という関係ではないのだから、堅苦しいのは無しだ」

「お……おう」


京都駅に着い時に、たまたま少女と出会ったのだった。

どうやら、少女は京都に住んでいるらしい。

そんな少女は、昨日会った時と同じ服装をしていた。

とういか、いつも袴姿なのか…

それにしても……昨日も思ったのだが、この少女は子供のようには思えない尊大な態度をする。

最近の女の子は、皆こうなのだろうか?

しばらくバスに揺られていると、目の前に神社が見えてくる。


「おぉ…これが熊野神社か~」

「熊野神社と言えば、和歌山を思い浮かべるな」

「そうなのか?」

「本宮は熊野三山にあるからな。ここの熊野神社は縁結びや安産などの神がいるようだ」

「へぇ~」


熊野神社前というそのままの名前のバス停でバスを降りて、東の方角へ歩く。

京都の街並みの中を徒歩数分、須賀神社が姿を現す。

どうやら、須賀神社も縁結びの神様らしい。

なんだか、この辺りは縁結びの神様が多い気がする。

そう言われてみれば、確かに若い男女が多い気がする。

須賀神社に着くとすぐに、ミサキは真っ先に日本で唯一と言う交通神社に向かった。

というか……どうして、ついてきたんだよ…

俺は当初の目的の通り、神主さんに話を聞きに行く。


「あのぉ……すみません」


立派な社を横目に、静寂に包まれた詰所で問いかける。

部屋の奥から若い職員が姿を現した。

その職員は、俺のような変わり者相手でも丁寧に対応してくれた。

そして俺の話を聞くと、職員の人は部屋の奥へ神主さんを呼びに行ってくれることになった。

本当にありがたい。


「お待たせしました……どうかなさいましたか?」

「わざわざすみません。実は俺はとある人を探しているのですが……」

「ふむ……その人物というのは?」


俺はカバンの中から、親父が映った写真を取り出す。

昨年の夏に撮った写真だ。

できる限り最近撮った写真を持ってきたつもりだ。


「探しているのは俺の父さんで、名前は多智花隆と言います。この人なんですが…」

「ふむ……確かに見たことがありますね」

「本当ですか!?」

「えぇ……昨年でしたが、神様について聞きに来られました。しかし申し訳ないのですが、それ以外のことは分かりませんね…」

「そうですか……」


神主さんは、申し訳なさそうな顔でこちらを見つめる。

親父と再会するこてゃできなかった。 

だが、親父は京都に来ていた。

これだけでも大きな収穫だ。

そう思っていた時、神主さんは突然何かを思い出したかのうように口を開く。


「あぁ……そういえば……」

「はい?」

「その時、そのお父さんは娘さんを連れてきていましたよ」

「え……?」

「娘さんと色々話しながら、神様のことを聞いてきてね。細かいところまで聞かれるので、分かりやすく答えるのが大変でした」


娘……?

妹はずっと家にいるはずだ。

じゃあ、一体誰が……

娘の正体が誰なのか思案していると、部屋の奥から巫女さんがやって来た。

段ボールを担ぐという力仕事をこなすその姿は、巫女さんのイメージとはかけ離れている。

運んできた荷物を置いた帰り際に、巫女さんは親父の写真を見て話し始める。


「あっ、これ……あの時の男性ですか?」

「そうです。この男性の父親のようでね」

「へぇ~……あっ、だからか~」

「え、どういう意味ですか?」

「さっき見たからさぁ~。その男性が連れてた女の子!」

「本当ですか!?」

「見間違うわけないよ~。だって袴姿に大きなリボンなんていう独特な服装なんだから」

「え……」


袴姿にリボン……まさか……

気が付くと、俺は走り出していた。

袴姿に大きなリボンという服装のため、探し出すのに苦労はしなかった。

神社を吹き抜ける風は荒々しく、俺の髪をぐちゃぐちゃにする。


「おい!」

「どうした?」

「話を聞かせてもらう」

「そんな怖い顔しなさんな……あっちに静かな場所があるから、そこで話そう」


少女は境内の端に向かって歩き始める。

俺はその後をついていく。

少し重苦しい空気になってしまった。

でも、せっかく掴んだ尻尾を離すわけにはいかない。


「さて、何を聞きたいのかな?」

「お前は親父と京都に来ていたんだな」

「……」

「教えろ!」

「見られていたのか…わざわざお前とは別行動を取ったのだが失敗だったかな」

「親父はどこにいったのか知っているのか?」

「……残念だが、それは知らない」


流石に、親父の居場所を明らかにすることはできなかった。

でも、この娘が何かを知っているのは間違いない。


「じゃあ、親父とは何をしにここに来たんだよ?」

「それは……」


ミサキは口ごもる。

一体、何を隠しいているのだろうか…


「少し時間をくれ。京都駅で必ず話す」

「……分かった」


俺の心の中では、モヤモヤが渦巻いていた。

そんな俺を他所に、ミサキは観光を楽しんでいる。

しかし、俺にはそんな余裕はなかった。

自分でも気づかないうちに、拳を握りしめていたことに気付く。


「多智花くん」

「え……?」

「おみくじを引こう!」


何気に名前で呼ばれたのは初めてだったので、少し唖然としてしまった。

俺はさっきキツイ言い方をしてしまったのに、何もなかったかのように接してくれる。


「じゃあ…おみくじ2回分お願いします」

「はい。ありがとうごいざいます♪」


優しい声で巫女さんが、みくじ筒を手渡す。

みくじ筒は、何故かずっしりと重い。

俺がみくじ筒を持っているのを、ミサキは見つめる。

勢いよく降ると、中からみくじ棒が出てくる。

”15”か……

俺は引いた棒を筒の中に戻し、ミサキに渡す。


「ほら、どうぞ」

「ありがとう。じゃあ、引くぞ」


ミサキは軽く振り、中から棒を取り出す。

その顔には笑みが浮かべていた。

彼女は、取り出した棒を見せつける。


「私も15だ」

「え……」

「おそろいだな」


なんだろうか……

何か運命を感じてしまうのは気のせいだろうか?

そして、2人そろって、おみくじの結果を確認する。


「15番ですね。うーんと……はいコチラですね」

「ありがとうございます」


ミサキも同じ結果をもらった。

境内の端に移動して、内容を確認してみる。

同じ15番を揃って渡したので、巫女さんが微笑んでくれていた。

少し恥ずかしい。


『      ”大凶”

運勢の大恐慌。場の流れを把握して損失を最小限に。』


何てことだ……

そういえば、電車の遅れたり、途中で転んだり、悪い事ばかりが起こる……


「残念だったね~また次があるよ」

「どうして、そんなに明るいんだよ……大凶なんだぜ……」


2人でお祈りし、神社を後にする。

京都駅に向かうバスの中は、沈黙に包まれた。

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