第6話 ポンコツのレイム。まさかのポンコツ返上?
比呂貴とレイムは早速馬車を借りてドルクマン王国へ急いで貰った。比呂貴は道中、レイムにミダマのことについて色々と情報を聞き出していた。
馬車には滅茶苦茶急いで貰った甲斐もあり、なんとか暗くなる前にドルクマン王国の城門まで来たのである。
そして比呂貴はレイムに尋ねる。
「で、とりあえずドルクマンまで来たな。ブタ野郎の屋敷への案内よろしくな!」
「ええ! 城門からはそんなに遠くは無いわ。こっちよ。」
そして二人は公爵の屋敷の正門近くに来た。もちろん周りは塀のようなもので囲まれている。そして比呂貴は言う。
「うわぁ。これはでかそうだな? 東京ドーム一個分とかあるんじゃね? こん中のどこにいるんだよ。冷静になっているとはいえ、オレの怒りは相当のものだしこのままこの屋敷を血の海に変えながら突き進んで行くかな?。
「なっ!? ちょっとそれはやめなさい。今のあんたはドラゴンよりも強いんだからそれはシャレになんないわよ。
建物が壊れるくらいなら良いけど、中で働いている人は何の罪もないんだから!」
「まあ、それはそうなんだけどね。でもこの中からどうやって探そう。あんまり悠長にもしてらんないんだけどね。」
「そこは私に任せてよ! 長い間、この屋敷で働いていたんだからね!
二人のいる場所も見当がついてるからいったん潜入して確認してくるよ。その間、ちょっとここで待っててくんないかな?」
「場所知ってるんだったら、このまま爆破しながら突き進んで行けばいいんじゃね?」
「ああもう。だからそれはダメだって言ってるでしょ。私は空も飛べて壁のすり抜けも出来るから潜入捜査はめっちゃ得意なんだよ!
ロキはホントにここで待っててね。絶対だよ。待ってなかったら怒るんだからね!」
そしてレイムは比呂貴の返事を聞くまでもなく翼を生やして飛び出していった。周りはすっかり暗くなっていたのでうまく闇に紛れていた。
「あーあ、行っちゃったよ。一応待ってろって言われたから待つけどさあ………。
まあ、元は自力でシルバープレートまでいった冒険者だし、今日はキレッキレだったから大丈夫かな? いや、でもなぁ………。
そもそもがポンコツだし!
今日のボーナスステージがいつまで続くかわからんし、下手して捕まんなきゃいいけど。うーん、やっぱり心配になってきた。」
一方レイムは慎重に建物に沿いながら飛び、とある場所に向かっていた。
「おそらく公爵はあの建物にいるはず。寝室兼趣味の部屋っていうのかな?
あの部屋は私も散々恥ずかしいことをさせられた部屋。そこに向かうのはとても複雑な気持ちになっちゃうけど、でも、アイリスちゃんやファテマちゃんの役に立つんだからちょっとは報われるというものかしらね?
でもでも、あー、やっぱり複雑。」
そう思いながらもその建物にやってきたレイム。
『うっ、間違いないわ。私、特に気配とか感じることはできないんだけど、なんか無言の圧をめっちゃ感じる。きっとここにミダマさんがいると思う。』
そう思いながらレイムは慎重に、本当に慎重に気配を鎮めてから天井をすり抜けて部屋の中を確認する。
『ひえぇぇっ! やっぱりミダマさん居た!』
レイムはミダマを確認して気持ちが乱れそうになるところをなんとか耐えた。
女性にはそこまで酷い事をしないということはわかっているが、それでも次期魔王と呼ばれるだけの残虐性は十分に理解しているので存在だけでちびりそうになる。
『でも、ここからじゃ全体が良くわからないわね。ちょっと別のところからも確認をしてみましょう。
おっ、公爵もいたわ。さらに横に成長しているわね。まさにブタ野郎だわ。あああ、ファテマちゃんとアイリスちゃんもいた!
やっぱりこの部屋だったのね。ああ、あんな適当な椅子に縛り付けられてかわいそうに。すぐに助けてあげるからね。まあ、助けるのはロキだけど。』
そしてレイムはいったん建物の屋根に行き一呼吸を置いた。レイムにしては珍しくポンコツなミスを犯さずにいたのだった。
その時、ミダマは公爵に言う。
「ちょっと失礼。」
「なんだ? トイレですか先生? ロキがいつ来てもおかしくないですからね。早めにお願いしますね。」
「ふむ。わかっておるよ。」
そしてミダマはドアを開けて外に出る。その後、スッと姿を消す。
「なんだ、レイムでは無いか? 久しいな。」
ミダマはレイムの背後から宙に浮いている状態で声を掛けた。
「ひゃーーーーーーん! ごめんなさーーーい!」
潜入もうまく行き、一息付いていたところで後ろから声を掛けられたのである。完全に油断をしていたので心臓が止まる勢いで長い悲鳴を挙げて、そして何故か謝っていた。
「ひ、久しぶりですね。ミダマさん。わ、私に気付いていたんですね。」
レイムはまだびっくりで体中ビクビクしながら答えた。
「いや、気付いたといえばちょうど今だよ。そういう意味では潜入も上手くなったものじゃないか。ただ、詰めが甘かったようだな。」
「ぐぬぬぅぅ。上手くやったと思ったんだけどなあ。」
「いやはや、それにしてもレイムたちの活躍はドルクマンにも届いておるよ。成長したではないか。」
「あ、ありがとうございます。」
「ところでその話題の中心人物ロキはいないのか?」
「ロキも一緒に来ているわよ。ただ、今はちょっと待機して貰っているわ。」
「なるほど。それでは早く連れてくるが良い。
ドラゴンスレイヤーと呼ばれてどれほどのモノか楽しみでしょうがない。そして、調子に乗っておるようならそれを叩き潰すこともな。どのような苦痛の表情を見せてくれるものやら。
フフフ。」
「あ、相変わらず変な趣味と言いますか………。
でも、ロキを嘗めない方が良いわよ。本当に強いんだからね。ドラゴンスレイヤーのふたつ名は伊達じゃないわよ。油断してたら足元すくわれちゃうんだから!」
「ほほう。レイムにそこまで言わせるとはね。楽しみにしているよ。
それと、もう一つ急いだ方が良い理由としてユニコーンのお嬢さんたちだ。今は私がいるので我慢をしているようだが、ちょっかいを出したくてうずうずとしておるぞ。いつ手を出してもおかしくないな。」
「そ、そうだったわ。あのブタ野郎! 絶対にふたりに手を出しちゃダメなんだからね。絶対だからね!」
「それはレイム次第ということではないか? ロキをしっかりここまで案内してやるが良い。」
このミダマの言葉にレイムはひとつ頷いて空を飛んでいった。
「ただいまロキ。ふたりの居場所がわかったわよ!」
レイムは羽をしまいながらロキに言った。
「え? マジで? ちゃんと戻って来ただけでもホッとしたんだけど、まさかちゃんと居場所を突き止めてくるなんて………。
はっきり言ってそこまで期待してなかったわ。」
「ちょっ、いくらなんでもそれはひどすぎじゃんか! 私だって普段は普通なんだからね。」
レイムは比呂貴の言葉にジト目でボーっと立ち尽くす。
「アハハ。確かに酷い言い草だったな。ごめんごめん!
でも、調べて貰って申し訳ないんだけどやっぱり正面突破で派手派手しくいくことにするわ。
竜だろうが鬼だろうが公爵だろうが、ファテマとアイリスに手を出す奴は絶対に許さん。絶対にだ。なので、公爵やドルクマンの他の貴族たちにもオレの仲間たちに手を出したらどうなるのかってことをきっちりわかってもらう必要があるからね。
あっ、でもむやみやたらあちこち行かなくて済むのはありがたいね。そう考えるとレイムの潜入はありがたいね!」
「うっ。珍しく潜入捜査に大成功なのに効果半減………。」
「あ、ほら! 自分でも珍しくって言ってんじゃん。普段は成功してないんじゃん!」
「なっ、うっかり口を滑らしてしまった。ってか変なとこだけ拾わないでよ! まったくもう!
でもわかったわ。確かにそのほうがロキらしいわね。でも、派手に行ってファテマちゃんとアイリスちゃんは大丈夫かしら?」
「そこは大丈夫でしょ? もともと人質としてさらったんだから今、変なことしたら人質として捕えた意味ないからね。」
「な、なるほど。じゃあ、道案内するから付いて来てね! あと、公爵の近衛兵とかいると思うけど、ちゃんと私のことは守ってよね!」
「当たり前でしょうが!
言っとくけど、今回のがレイムが人質にさらわれたとしても、ファテマとアイリスを連れてここを血の海にしながら助けに来るからな。」
そう言って比呂貴はレイムの背中を叩いた。
『なっ、この人はこの状況で何サラッと言っちゃってくれるのよ。もう、ロキのそういうところ!!!』
レイムが口を半開きにしてあわあわとしているところだが、そんなことは構わず比呂貴が言う。
「ほれ、無駄話はこの辺にしとくぞ。ファテマとアイリスが待ってる。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます