投手として無理なら野手で!

@komepipi3

第1話 育成からの再スタート

「君には来シーズンから支配下から外れてもらって育成契約でお願いしたいんだ。」


プロ野球球団、東京ヤコルトペンギンズ球団事務所にてプロ入り3年目のシーズンを終えた自分、坂田球児は契約更改に臨んでいた。


GMからの、ある程度は覚悟していたはずの言葉であった。しかし、やはり現実として突き付けらるとくるものがある。というのも致命的な怪我により今季は1軍どころか2軍ですら登板ができていない。リハビリしたところでもとのように投げられるかさえわからない現状、育成落ちは当たり前でむしろクビにならないだけマシではあったのだが…


思うに自分の投手としてのピークは甲子園までだったのだろう。左で投げる最高150kmのストレートとチェンジアップを武器に県内ではちょっとした強豪程度の母校を甲子園決勝まで導き、延長の末敗れたのだった。

その時の快進撃はマスコミでも話題にはなり競合はしなかったもののこのヤコルトにドラフト1位で指名され鳴り物入りで入団したのだった。

ただそこまでだった。

プロでは150kmなんてめちゃくちゃ速いわけでもなくコントロールも高校レベル、チェンジアップは全く通用せずプロの壁にあっけなく弾かれてしまった。

さらには無理して一人で投げ抜いてきたせいか肘は既にボロボロ。この若さで何度となく手術を繰り返している。

自分でももう投手としては限界じゃないかって思わざるを得ない有様だ。


「ところで君は野手に挑戦してみるきはないかい?」


突きつけられた現実に黄昏れながら話を聞いていた坂田にふと思いがけない声がかかった。

「コーチの大杉くんからね、君が打撃練習で結構打つんだって話はあがっていてね、もしよかったら野手で挑戦してみないかって話があるんだよ」


「やります!」


自分でもびっくりするくらいはっきりと大きな声が出た。


自分は昔から大人しいやつだ、自己主張が弱いやつだと言われてきたし自分でも自覚があった。

親が何か変わるかもと勧めたから野球を始め、左で投げれるからと、投手を勧められ言われるがままに野球を続けてきた。

言われたら逆えず無理してその結果肘が限界を迎えて…


今回も言われるがまま野手転向を受け入れて…?


いや、今回は違う。自分は野球が好きなんだ。どんな形でも野球を続けたいんだ。ピッチャーとしてもう投げれないならバッターとして野球をすればいいじゃないか。これまでの悩みに対する答えがたまたま示されたんだ。

きっかけをもらえたんだ。だから飛び付いたんだ、自分の意思で。


GMは坂田からの思いがけない大声に戸惑った様子で、「そ、そうか。なら良かった。でポジションとしては外野でどうだい?左は厳しくても右手で投げれると聞いているし問題はないと思うのだが?」


だから今度は自分の意思を述べる。

「いえ、できれば捕手をやらせてください。」と…

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