終末世界で戦ってみた

からくれ

プロローグ

その日、人類はラッパが奏でる滅亡の音色を聴いた。


 雲を切り裂き、天から現れたのは無数の異形の天使。


 彼等は地上に滅亡を運び、神による審判は始まった――




 沈黙した信号機。大きくひび割れたアスファルトに廃墟と化した街。


 血を塗りこめた不気味な夕焼けの下に巨大な異形の化物の群行あり。


 およそ百メートル先。数百を超える神の代理の審判者〈テンシ〉の醜い姿に一人の男性隊員が身を強張らせる。


「こっ、こちら第三十二部隊! 〈ファースト〉を目視で確認! すぐさま迎撃に、」


 突如、通信が途切れた。


 同じく男の隣に身構えてた女性隊員の頬に’’何か’’が掛かった。


「え、」


 隣を見れば男の首から上が消え、安っぽいB級映画の死亡シーンのように紅すぎる血が吹き出ていた。


「いびゅっ――」


 叫ぶ暇もなく、次の女性隊員の頭が砕け散った。


「ひっ……」


 仲間が二つの血袋と化し、自分の立っている地面を赤いペンキをぶち撒けたかのように鮮血で染め上げる。


 顔を仲間の血で濡らし、精神と肉体を恐怖で支配された女性隊員が口に手を当て一歩、二歩と後退りする。


 三歩目を下がろうとした時、肩に手が置かれた。


「落ち着け。敵から目を背けるな。ここでお前が逃げたら死んじまった仲間に顔向けできねーぞ」


「あら、ソーマ君やさしー」


「黙れ」


「第三十二部隊下がれ。我々が先陣を切る。」


 そう言って前に歩き出したのは十人の隊員達。


 背中にはラッパ吹きのエンブレムが入った黒いジャケットに身を包み、隊員達から醸し出される雰囲気は死線を何度も潜り抜けてきた歴戦の兵士のそれだった。


 そこで気付いた。


 最近、背中に悪魔のラッパ吹きのエンブレムを担いだ、たかだか十人編成の一個小隊規模の化け物じみた戦闘集団がいると。


 “称号持ち”の精鋭部隊が第二防衛線から、ここ第一防衛線に送られて来たと。


 その十人編成の部隊称号は――


「死を奏でる奏団オーケストラ

……」


「「カシウス起動」」


『カシウス起動を確認……オンライン。使用者とアポカリプス細胞の同調を開始します』

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