惑星間飛行
スイングバイはいまだに有効な手法だ。
惑星間の引力を利用する、それはそれは自然をうまく利用していて、実に美しい航法だ。スイングバイが発明されてから1000年たったらしい。
ただ、なにか1000年を記念してイベントが開かれたとか、Kookleの検索欄の上のとこがスイングバイの絵に変わったとか、そんなことはなかった。
こんなにも人類が使っている手法なのになあ。自然をそのまま使ういわば原始的なこの方法は大々的に世の中に知らしめるのはナンセンスとでも"うえ"の人たちは言いたいんだろうか?
プラズマエンジンのほうがかっこいい?我々の技術が人類の未来を拓く力という証明になる?
まあ、たしかにプラズマエンジンのほうがかっこいい。それは僕も同感だ。
プラズマエンジンは、2000年ころに産声を上げたらしく...
「こら、こんなときにまた日記なんてつけるな! こっちにきて、はやく救助用シグナル伝達するの手伝いなさいよ!」
甲高い声が船内に響き渡る。
やれやれ、こういう命の危険が差し迫っている時だからこそちゃんと日々の日課をすますことが大事なんじゃないか。
心では10^-3秒でそう思った。ただ、頭は即座にその思いを訂正。彼女に歯向かったらこの日記をびりびりに破られ、僕のマイスペースにおいてあるA4ノートがびっしり詰まった段ボール箱も宇宙空間に放り出されて宇宙のかなたまで飛んで行ったしまうだろう。僕に日課があったことさえもなかったことにされてしまう。
まあ、もしかしたら宇宙かなたで生まれているもしれない生命体が僕の日記を読んでくれるかもしれないけど?
「わかったよ、救助シグナルおくればいいの?そんなのボタン一つ押せばいいだけじゃない」
「それじゃだめだろ、私たちは大事な使命を授かっているんだから。信号は本部にだけ届くように加工しな。メディアの"皆さん"に傍受されてこういう事故は報道されたらだめ。説得力なくなっちゃうだろ?」
足で故障個所を抑え、手では機体にへばりついた粘着性デブリを刺激しないように排除しながら彼女が言う。
たしかにそうだ。もしメディアの"皆さん"がそんなこと言って民衆をはやし立てたら、僕らが宇宙空間に飛び出ることがさらに規制されてしまう。
「わかった」
僕は即座に、たぶん10^-4秒くらいの間隔で彼女の言葉に対し返事をすると、コンピュータの前に座った。
そらたか @mechero
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