第61話

 レイナとは、真剣に忌憚なくしっかりと話しました。

 誤解の余地がないように、率直に話しました。

 その結論は、レイナもおかしいと言う事です。

 ルークのような特別な力はありませんが、考え方が普通の貴族令嬢とは全く違っているのです。


 異常な動物好きで、動物に執着しています。

 ですから、自分がルークに変化させられるのも望むところだと言うのです。

 全然全くついて行けませんが、一つはっきりしている事がありません。

 そんな事を本当にやってしまったら、ルークの評判がまた最悪の状態になってしまうと言う事です。


「レイナ嬢が本気なのは分かりました。

 ですが最初に話したように、私の一存では決められません。

 ルークに話を聞かなければいけませんし、レイナ嬢の家族はもちろん、国王陛下にも話を聞かねばなりません。

 レイナ嬢が本気であればこそ、私やルークだけで決める事はできません。

 本国に連絡してもいいですか?

 嫌ならこの話は聞かなかったことにします」


「分かりました。

 私から国王陛下と父母に手紙を送り、許可を求めます。

 そうしたら、女王陛下はルーク殿下に話をしてくださいますか?」


「先程も言ったように、この話はルークに聞かねば返事ができない大切な事です。

 必ずルークに話をしましょう。

 女王として約束します」


「有難き幸せでございます」


 本当に疲れました。

 精神的に疲れました。

 普段使われることのない謁見願でしたから、多少は覚悟していました。

 それでも、こんなに疲れる話になるとは想像もしていませんでした。


 私は覚悟を決めて、ルークを呼び出しました。

 ルークから沢山の魔道具が渡されていますから、どれほど離れた場所にいても、直ぐに話しができます。


 どれほど遠くにいても、転移魔法で直ぐに戻って来てくれます。

 私が話がしたいと連絡すると、連絡の魔道具を通じて話すだけは満足できないのでしょう。

 どれほど遠くにいても、どれほど重要な話をしていても、相手を放り出して転移魔法で帰ってきてくれます。

 ルークにとっては、私との雑談以上に大切なモノは存在しないようです。


「とっても大事な話ってなぁに、お姉ちゃん。

 別に大事な話でなくても、お姉ちゃんがお話してくれるのなら、一日中だってお話しするよ」


 私は正直に全てを話しました。

 ですが、ルークにはレイナの異常性が理解できないようです。

 好きな動物がいて、それに変化してみたいというのは、ルークにとっては普通の欲求のようです。

 

 ですが、異常性は理解できなくても、私の御願は直ぐに実行してくれました。

 レイナの父母兄妹、国王やその周辺の権力者がレイナに圧力をかけ、無理難題を押し付けた事で、レイナが狂ってしまったのではないかとい、私の心配を。

 

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