第36話

 女性に対して、とても酷い事に言いました。

 でも仕方がないのです。

 跡継ぎがいない国や貴族はとても不安定なのです。

 敵対する国や貴族から見れば、跡目争いに加わることも、跡目争いに乗じて戦争を仕掛ける事もできるのです。

 家臣領民も主人の血を分けた後継者を求めます。

 血の濃淡が忠誠を尽す前提なのです。

 だからこそ、愚かなダニエルを奉じて謀叛を起こす事ができたのです。


 建国間近のオリビア王国は、王族が私とルークしかいません。

 国民は一人もいません。

 では、守るべき民がいないかと言うと、そうではありません。

 ルークが助けてきた半人間がいます。

 助けた以上、最後まで責任を持たなくてはいけません。

 それに大魔境に狩りに入る猟師と冒険者がいます。

 私達が死んでしまって、国が崩壊するような事があると、混乱が収まるまで彼らはとても困るでしょう。


 そこでよく考えてみました。

 私は血に拘り過ぎていたのではないかと。

 後継者は私やルークと血が繋がっていなくてもいいのではないかと。

 ただ問題は、その考えが他の王家や貴族家には通用しないと言う事です。

 血統が重んじられる王家や貴族家が、私やルークと血の繋がりの無い後継者を認めるとは思えないのです。

 必ず攻め込んできます。


 その時に必要になるのは強さです。

 オリビア王国が建国できたのもルークが強かったからです。

 弱体化したトーレス王国が攻め込まれないのも、ルークが強いからです。

 名門王家がオリビア王国の建国を認めたり黙認したりするのも、ルークが強いからです。

 可愛そうな境遇の子供で魔法の才能がある者を、私かルークの養子にする方法がありました。


「お姉ちゃん。

 半人間の子供じゃ駄目?

 半人間はお姉ちゃんを困らせないし、悪いこともしないよ。

 僕を嫌ったりもしないよ!」


 私が黙って考えていたので不安になったのでしょう。

 ルークなりに一生懸命考えて、半人間の子供を可愛がればいいと言ってくれます。

 確かに半人間の中にはとても愛らしい姿の子もいます。

 可愛がるだけなら十分です。

 でもオリビア王国の後継者には出来ません。

 どの国の王族も貴族も、半人間を王国の後継者と認めないでしょう。


「ええ、半人間はとても可愛いと思うわ。

 子供として可愛がるだけなら十分だわ。

 でも私やルークの跡継ぎとしては駄目なの。

 どの国の王族も貴族も認めてくれないわ」


「えぇぇぇぇ!

 そんな事言う奴は僕が懲らしめてやるよ。

 でんでん虫に変えて、大魔境に放り出してやるから大丈夫だよ。

 ねぇ、王様」


 ルークに振られたローガン陛下が狼狽えて目を白黒させています。

 言葉に詰まって返事も出来ません。

 とても可愛そうなので、ルークをなだめる事にしました。

 

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