患者の眼

ひーちゃん

第1話 私は足を骨折して入院した…。




病室には、いろいろな患者が存在する。

手術に対する不安や孤独感を感じつつ入院生活をスタートした。

病室は4人部屋。

斜め隣から独り言が聞こえた。

その場は気にせず過ごした。

カーテンから80歳近い老人が出てきた。(村田さん)

愛想がよく紳士的な老人だ。

翌日、娘さんが来て親子の会話をしていた。娘さんが『明日、兄さんが来るよ。』

娘さんとは親子関係は良好だ。

しかし息子とはどうだろう。

村田さんは、嫌がった。『あいつとは話しが合わん!いつも最後は喧嘩別れじゃ!』

全ての話しが筒抜けで聞こえる。娘は帰り、息子(兄さん)から電話があった。

息子…『親父、なんか欲しい物あるか?』

携帯をスピーカーにしていたから話しは息子の声まで、まる聞こえ。

村田さん…『週刊実話を買って来てくれ。後はいらん』

どうも、息子さんとは、あまり仲が宜しくないみたいだ…。


夜、8時、病棟は静まり村田さんの所から声が聞こえだした。歴代の総理を遡って独り言で言っている『…片山哲、吉田茂、幣原喜重郎……んっ…誰だったけ?』

娘に連絡した。

娘は携帯で調べて

『東久邇宮稔彦王だよ』

全て携帯のスピーカーで聞こえた。

迷惑ではないが村田さんに興味が出てきた。


そして翌日、息子が来た。

 どうも、手ぶらだ!

『おい、和彦!週刊実話は!』

『親父、本屋で週刊実話あって中みたらエロ本やんか!買わんで出てきた。』

俺はカーテン越しに笑った。

村田さんは『そんな、とこもあるが、ほかの所が見たいんじゃ!

俺の気持ちが解ってない!

帰れ!』

息子さん来て5分、あっけなく帰った。


その日の夜は超長めの般若心経だった。

超えんぎでもない

楽しい入院生活が始まりそうな予感。

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