異世界転位 165話目




「さて、次からはスキル持ちや加護持ちの者達です、今年は当たり年のようでかなりレアで強力な加護やスキルを持つ者が複数います。 皆様、競ってお金を出しまくってください。」


「もうそんなに出せねぇぞ?」


「私も結構買い取りましたからね。」


「金が無いならさっさと去ね!

はい、と言うわけでレア1号前に!」


ケンとフェリクスはそれぞれが鉱山関係者やそういった町や村に住んでいた子供達等を中心に数百人ずつ買い取っていた、今はその子達はチェルシー達に引率させて外で食事を取らせている。 と言うかケンとフェリクスにアイヒベルク侯爵の名で屋台に先払いして誰にでも食べさせるようにと、店ごとに金貨を1枚渡していた。


もちろん衛兵や冒険者が見張っているが……何にしろ予算も有限だし、もうそんなに金は無いぞと伝えるとペトラ嬢に唾を吐かれながらそう言い捨てられる。


そしてペトラ嬢がレアなスキル持ちの奴隷のステータス等を説明し始める。


「なんと次の奴隷は性技のスキルを持つ性奴隷も可な奴隷です!

さぁケン様、幾ら出しますか!?」


「よし、大白金貨で100枚……ぶっ殺すぞ!?」


ペトラに呼ばれて出てきたのは世紀末覇王のハゲリボンだった、ケンが激怒して叫びフェリクスも静かに怒りのオーラを出していると、ハゲリボンは舞台に立って叫ぶ。


「妻よ、もう勘弁してくれ!」


漢泣きに泣いたハゲリボンに、戻れと声がかけられてペトラも失せろと舞台から蹴り下ろす。


「今のは軽い冗談です、次からは本当に目玉商品ですのでご安心下さい。」


「よし、ペトラ嬢、次に同じ様な冗談を言ったら……。」


「なんですか? 貴族としての権力でも使って罰でも与えますか?」


ペトラがそうニヤニヤ笑いながら言うと、ケンが戦慄することを言い放つ。


「どんな手を使ってもお前を押し倒して三日三晩、相手をしてもらう。」


「冗談でもやめてくださいよ!?」


「ハハハ、冗談だと思うか?」


「ケン様、鎧を脱ぎながら近づかないで下さい、近づくな!」


少しずつ服を脱ぎながらペトラに近づくケン、それを本気の殺気を発しながらペトラは牽制している、するとフェリクスが怒鳴り付けた。


「お前らアイヒベルク侯爵様がいるんだぞ、もう少し真面目にやれ!」


「「すんませーん。」」


2人が謝ると本格的にレアな奴隷の競売が始まるのであった、ペトラはケンから一歩離れていたが。




「えーっ、侯爵閣下も居ますし本格的に始めますね。

エントリーナンバー2番、歌唱のスキルと音楽神の加護を持つ少女、ラヴィです!」


「う、歌うのは好きですし、多少は自信が有ります、よろしくお願いします!」


「それでは金貨10枚「白金貨10枚。」いきなり空気を読まないアホがいますが、白金貨10枚以上の方はいらっしゃいませんか?」


「白金貨10枚……。」


「出せなくはないが特別に見目が良いわけでもないしな。」


「しかしフェルデンロット子爵がいきなりあんな金額を出すと言うことは、何かしらの有益なスキルなりを隠し持っているのでわ?」


商人や貴族等が何故にケンが高額で彼女を買おうとしているのか分からず、それでもケンが高額で買おうとしているので何かしらの秘密が有るのでは?っと考えて参入しようとした時だった。


「おい、何でそんな高額で彼女を買おうとしてるんだ?」


「なんだフェリクス、知らないのか? 歌は胎教に良いんだぞ、ミラーナとクリスの側で歌わせるのさ。」


「よく分からんがお前が大バカだと言うのは分かったわ。」


ケンの言葉にフェリクスは飽きれ、アイヒベルク侯爵は椅子からずり落ちている。


「えーっと、何にしろこれ以上の入札は有りませんね。 それでは落札です!」


ケンの言葉を聞いた皆が参入せずにアッサリとケンが落札する、そしてラヴィを連れた係員が来るとケンの所に置いていく。


「よ、よろしくお願いします!」


「おう、お前の仕事は俺の妻達の側で歌うことだ。」


「は、はい!」


ケンに命じられたラヴィは緊張しながらも元気よく返事をする。

それをフェリクスやアイヒベルク侯爵は呆れながら見ていたが、続けて放たれたケンの言葉に驚愕する。


「それとお前、聖歌を歌えるだろ? 癒しの効果が有るしありゃドワーフ族が喜ぶからな、教会やドワーフ達の前でも歌ってくれや。」


「はい、頑張ります!」


元気に答えるラヴィだったが、元気でいられないのはペトラやフェリクス、そして他の競売の参加者だった。


「まてまてまて! 聖歌が歌えるのか!?」


「そ、それなら競売のやり直しです!」


聖歌とは神々が歌う様々な効果を持つ歌で聖女や一部の者のみが歌える希少なスキルだ、もちろんかなり希少で聖女の称号を持っていても歌えない者もいて、そんな者が奴隷として売り出されればとんでもない高額になるはずだった。


それを聞いたペトラや他の参加者はもちろん、帝国の騎士達も慌て始める。


「もうこの子の競りは終わったんだろ、それをやり直せってのは本気で言ってるのか?」


「……いかなる理由が有ろうと、それはわしもレーベン王国の侯爵として認められんな。」


「クゥ! 何で聖歌のスキル持ちだと分からなかったんですか、責任者はここに来なさい!」


ケンの言葉とそれを追認したアイヒベルク侯爵の発言により、ペトラ達も競りのやり直しを諦める。

代わりに鑑定した責任者を呼ぶがケンの新たな言葉によって凍りつくのだった。


「言っとくけど聖歌のスキルは神々によって隠蔽されてるぞ? 見破るにはそれこそ看破持ちの家のクリスや、ヘルダのババアが本気で長時間見ないと無理だろうな。」


「ならなんでお前には分かるんだよ?」


「聖歌のスキルは歌唱のスキルと音楽神の加護持ちが持ってることがほとんどなんだ。 んでこの聖歌持ち、昔に色々とあったらしくって音楽神が隠蔽しているんだと。」


「だからなんでお前は持ってるって分かるんだ?」


「俺の竜眼はな、ドライトの奴がくれたんだが……ドライトよりも格下の奴がつけた隠蔽なんかは無効化するんだわ。」


ケンは少し悩んでから暴露する、その言葉に聞いてた全員が唖然とするのだった。




「えー、かなり卑怯な人がいますが競売を進めさせていただきます。 エントリーナンバー3番、剣の高レベルスキルを持っていてソードマスターの称号を持つリルトン君です! 金貨15枚から始めます!」


「金貨16枚!」


「17枚。」


「20枚だ!」


ソードマスターの称号を持つ少年だったが、ケンは興味がないのか参加しない。


「フェルデンロット子爵は参加しないのか?」


「あー、侯爵閣下。 うちの軍は集団戦の訓練しかしてないんですよ、あの少年確か帝国の剣聖の弟子でしょ? なら個人戦の訓練しかしてないからうちには合わないんで「リ、リルトン。」白金貨10枚!」


「だからいきなり金額を跳ね上げるな、11枚!」


ラヴィが悲しそうにリルトンを見つめながらつぶやいたのを聞いてケンはいきなり参加する、しかもまたいきなり高額提示して。


「ずいぶんと優しいな、フェルデンロット子爵。 15枚。」


「いやラヴィの幼馴染みみたいですので、あいつの前でこの娘を押し倒したら面白いかなと思いまして。」


「「とんだクズだなお前!?」」


ケンの言葉にフェリクスとアイヒベルク侯爵が蔑んだ目で叫び、ラヴィは真っ青になる。

そしてかなり離れていたはずなのにリルトンは顔を真っ赤にして怒ると、ケンに向かって跳躍して殴りかかってきた。


「死ね!」


「やらせんよ? ほりゃ!」


そんなリルトンだったが、座ったまま余裕の姿のケンを殴る寸前でリンカに頭を押さえつけられ床に叩き伏せられる。


「小僧、後衛に叩き伏せられる気持ちはどうだ? あとお前、感情が顔に出すぎだ、さっきから俺を睨んでたしな。」


「ち、ちくしょう!」


「し、子爵様、リルトンを赦してあげてください!」


「ケン、今のことをクリスさんに報告されたく「よし、白金貨30枚で買ってやる、そして俺が鍛え直してやる!」だそうよ? 2人ともよかったわね。」


エルフリーデに脅されたケンはさらに値段を釣り上げる。


「侯爵様、どうされますか?」


「少し惜しいが30枚ではな、降りるよ。」


「他の方は? では決まりですね、リルトン君もケン様のアホに決まりです、そのままそこにいてください。」


こうしてリルトンもケンの所に来ることが決まった。




「いいか、表情に出れば行動も読まれるぞ、自分の精神をコントロールする術を学べよ?」


「……師匠にも言われた、だけどもラヴィを!」


「バーカ、彼女は性奴隷じゃねぇだろ? お前を挑発するために言ったんだよ。」


「精霊歌ですか?」


「そうよ、聖歌とはちょっと違うんだけど同じように様々な効果を産み出すのよ、私が今度教えてあげるわ。」


「私も祝詞ちゅうのを教えてあげるけんね!」


「は、はい!」


その後のケンは他の就職希望者、奴隷には入札せずに様子を見守っていた。 たまに興味を引くのがいたようだが値段や他に是非にも欲しいと言うわけでもなく様子見に徹して、リルトンやラヴィに色々と教えていたがペトラ嬢の言葉で前に集中をする。


「次は今回の目玉の1つです、エントリーナンバー23番。 ドワーフの赤棘山氏族、約300人です!

彼等は白金貨50「ちょっと待った!」……ケンさん、競りの途中で遮るのは止めてください、妨害行為ととらえますよ?」


「ドワーフの氏族なら是非とも欲しいが、確認しないといけない事が有るんだ。」


「……周りにも聞こえるようにしてくれるなら、許可します。」


ケンが真剣だと感じたペトラはそう言って許可を出す。


「代表だけ答えればいい、黒石を掴む手との関係は?」


「……敵対しとる。」


「チ! 俺は降りるぜ!」


ケンは答えを聞くとつまらなそうに椅子に座り直す。


「ご主人様、お買いにならないんですか?」


「ラヴィ、ありゃダメだ、手を出せんわ。」


「なんでだっちゃ、ドワーフなら鉱山でも鍛冶場でも役に立つちゃろ?」


「リンカ、ドワーフってのは頑固だ、そして恩を忘れない。 そして同時に、仇も忘れないんだ……そしてあの氏族の族長はうちの氏族と敵対しているって言った。 そんなのを一緒には置いておけないし、買って連れていけば俺まで責められる、リスクが高すぎるんだ。」


ケンの言葉に納得した2人はフェリクスの方を見る、領地に鉱山や採石場のあるフェリクスなら購入するかと思っていたがフェリクスも首を振って参加しない意向を示す。


「うちもケンとの付き合いを考えるとな、降りるよ。」


「わしの領地には鉱山は無いし、高額の支払いをして今いる鍛冶屋達のライバルを作るのもな……。」


アイヒベルク侯爵も降りると言うと、ドワーフ達は落胆の顔をしてペトラ嬢も困った顔をしながらも競りを始める。


「この氏族は白金貨50枚からです、入札される方は……入札される方はいませんか?」


貴族達も商人達も顔を見合わせて何も言わない、商人達にしてみれば中々払える金額ではないし、貴族にしてみれば自分のところのドワーフや鍛冶屋等との揉める原因になりそうなものを買う気にはなれなかった。




「……最終入札です、ここで入札がなければ流させていただきます……それでは。」


競りが流れるかと思った瞬間に、ケンがボソリとつぶやく。


「……詫び入れるか?」


「! 子供らが生活できなら何でもするぞ!?」


「よし買った!」


「はい、ドワーフの氏族はケン様がお買いあげ!」


赤棘山の氏族長がそう叫ぶように答えると、ケンがアッサリと落札した。


「おい、いいのかよ、揉めるんじゃないのか?」


「謝罪するって言ったからな、どんな具合で落ち着くはハロネンなんかと話し合いをするよ。」


「ふーん、珍しいな、お前がそんな苦労を買って出るなんて。」


「ああ、白金貨70枚なら格安だしな。」


「……50枚じゃなかった?」


「そうだった、必要経費を入れちまったぜ。」


「……おいお前まさか!?」


「やりおったな。」


ケンの言葉にフェリクスもアイヒベルク侯爵も不思議そうな顔をしているが、ペトラ嬢と帝国の騎士達が顔を背けているのに気がつき、コイツら談合しやがったなと気がつく。


こうしてケンは白金貨100枚はするであろうドワーフ達を、70枚で買い取ることに成功したのだった。



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