異世界転移 98話目

異世界転移 98話目




「ほら見てな? こうやって石と石の間に嬢ちゃんが持ってきてくれた小石をな……ほら、これで崩れにくいし強度も上がるってもんよ! いやぁ~、助かるぜ!」


「わぁ~、さすがに上手なのよ! ドラしゃん、もっと頑張って集めましょうね!」


「がお~ん♪」


石工が石と石の間に小石を入れてバランスを取るのを見て、アンナとドライトは手を叩いてほめるともっと小石を集めるとはしゃぐ。




その姿は美人の母のクラーラと、美少女の姉のクリスの血を確実に引いてると分かる愛らしさだった。


そしてそれを凝視する野郎が三人、事案発生かと思われたが男達が驚き見つめるのは別の事だった。


アンナは空になったバケツを石工から受けとると、すぐそばに居たドライトの背中によじ登る。


7歳のアンナの平均身長がこの世界や地球の平均よりも低い1メートルちょっと、ドライトは普段通り1メートル。

明らかに飛ぶのは無理だし背中にも乗れないだろ? っと思っていたら、肩車のような感じでドライトはアンナを乗せて、羽をパタパタと動かすとフワリと飛び上がり、自分も両手両足に石工からバケツを受けとり辺りを回り始める。


その姿に石工もアンナの時にはにこやかに、ドライトの時にはひくつきながらバケツを渡していた。


「! があがあ!」


「あ! またあったのよ、小石の山なの。

早く行って拾わないと他の人に取られちゃうのよ!?」


そしてドライトがたまたま見つけた! っとばかりにある方向を向き指差し鳴くと、そこには小石の山が出来ていた。


明らかにドライトの力で創られたものだが、アンナは気がつかずにドライトを急かして小石の山に飛んでいく。


そしてそんな2人の後をチビッ子軍団が手に手にバケツを持って追いかける。

だがよく見ると何人かの子供も、3メートルほどの子供の飛竜の背中に乗っていた。




「………………な、なんだありゃ?」


「………………竜騎士はすべての騎士の憧れなんですが。」


「………………いけませんな、白昼夢を見ていたようです。」


ケン達はアンナ達、チビッ子軍団が城壁造りを手伝っていると聞いていたが、どうやってかは聞いていなかった。


そのためドライトは何かしら手伝っているとは思ったが、テクタイトが連れてきていた竜種の子供に乗って手伝っているとは思わなかったので驚いたのだ。


外に近い城壁の建築現場に居て平気なのかと言うと、飛竜の子供の親達がしっかりと上空や城壁の外にいて見張っているので、下手な場所よりも安全そうだった。


「い、いや、驚き……ティーア!?」


城壁の外に目をやっていたクッコネンがさらに驚き叫ぶ、なぜならそこに自分の孫娘が竜の背に乗って飛んでいたからだ。


「……あそこに居るのはライナーとアネットか?」


「あ! あそこに居るのはハロネン子爵のお孫さんのイスト殿では、……うちの息子達まで!」


クッコネンの言葉にケンとロボネンも驚きながらよく見ると、クリスの弟のライナーとアルヴァーとフェリシーの娘のアネット、ハロネン子爵の孫のイストにロボネンの子供達まで竜に股がって空を飛んでいた。




「ありゃ……属性竜だな。」


竜に股がって空を飛ぶ子供達をぼうぜんとして見ていたケンだったが、あることに気がつき隣にいるクッコネンとロボネンに声をかける。


「……た、確かに属性竜ですな?」


「……バ、バカな……属性竜が人に馴れるなど、ましてや背に人を乗せるなど有り得ませんぞ!」


この世界の竜種もプライドが高く、戦闘狂気味である。

特に属性竜は並みの竜より遥かに力を持つものがほとんどなので、知恵と知識も凄いがプライドも凄かった。


そしてライナー達が乗る4頭の子竜は、チビッ子軍団が乗ってるものよりも小さな2メートルほどのサイズなのだが、問題はそれぞれが青、赤、緑、黄色と鮮やかな色がついていた事と、明らかに飛竜の子供などよりも力が有るのが分かることだった。


これは属性竜の特徴で、飛竜や属性の無い竜に比べると体が小さく、鮮やかな色を持っているのだ。

だがその力は強大で、特にその色と同じ属性は自在に使いこなすそうだ。


そしてロボネンが言った通りにプライドが高く力の強い属性竜は、子竜と言えど人に馴れないと言われていた。




「おーい、ケンのおっちゃーん!」


そんなことを考えていると、ライナーが竜を駆って降りてくる。


「おお、クソガキ! お兄さんだと何度言えば!?」


「閣下、少し黙っててください。

ライナー、なぜ子供達は竜に乗っているのだ?」


ケンが子竜と関係ないことを言い出したので、クッコネンがケンを押し退けて前に出るとなぜ子供達が竜に乗れているのか聞く。


「え? なんでって勝負して勝つか実力を見せれば乗せてくれるぜ?」


その言葉を聞き、クッコネンとロボネンは驚きに目を見開き。

自分達の子や孫に、アンナと一緒に小石を運ぶチビッ子軍団を交互に何度も見る。


「ちょ、ちょっと待ってくれ、竜達は子供とは言え竜だ、普通は騎士でも倒すのは難しいんだぞ。

それにお前達やうちの孫が乗ってるのは属性竜の子だぞ!?」


「何言ってんだクッコネンのおっちゃんは、倒してどうするんだよ……」


「お祖父ちゃん、竜達に勝負を挑むのも良いけど、自分の力、本当に力でも良いし魔法でも良いし、知識でも良いのよ。」


「ええ、私は力を示しましたが……」


「イコスは真正面から勝負をしました、アホかと思いましたよ。

あ、ちなみに私は魔力を認められました!」


「アネット、それは力と変わらねーじゃん。」


「そう言うライナー君も気功法で正面から戦って認めさせましたよね。」


「父さん、俺とリリヤは知識を認めてもらったんだ!」


「お父さんの言った通りに、知識は武器になりました。」


「へ、ヘンリク、リリヤ、私はそう言う意味で言ったんでは……」


ライナーに続いてクッコネンの孫のティーアが、ハロネンの孫のイストが、そしてアネットにロボネンの子供のヘンリクとリリヤが4頭の子竜に乗って降りてくる。


どうやらこの6人は子竜を4頭シェアしているようで、ライナーとティーアが1人づつ、アネットとイスト、ヘンリクとリリヤの兄妹が2人乗りで降りてきたが、少し相談すると乗る竜や面子を変えて再度飛んでいく。




「わ、我が孫の事とは言え、驚きましたな……」


「ええ、ハロネン子爵にもお伝えしなければ……」


「ん? あれはアランか、あやつも竜に挑んで……成体の属性竜は無理だろうに。

しかし閣下、上手くいけば竜騎士団を結成できますな。 ……閣下?」


属性竜に挑んで吹っ飛ばされるアランを見ながら反応の無いケンに不思議に思いクッコネンがケンの方を見ると、ケンはドライトに乗って石を運ぶアンナと竜になれるため、そして一緒に飛ぶための訓練をしているライナー達を交互に見ていた。




そしてケンはニヤリと笑うと―――




「おぉーいテクタイト! ちょっと一勝負といこうぜ?」




こうして天槍のケンVS黒竜王テクタイトの第2戦が始まったのだった。



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