異世界転移 80話目
「誰だ!?」
「冒険者か? 俺達を見たからには死んで……え?」
「お、おいどうし……あれ?」
「敵だ! 応援を……へ?」
見張りの傭兵達は見馴れない男が来たことで即座に臨戦態勢になる。
だが、隣で仲間が倒れていくので不思議に思い、最初に誰だ!? っと誰何した傭兵がケンから目を離して仲間を見ると、見張りの仲間が3人全員が倒れていたーーー首から上を失って。
「な!? き、貴様! ……え?」
そしてその傭兵も目のはしに光るものを見たと感じた後、自分が何故地面を見ているのかわからずに永遠に意識を失ったのだった。
「やっぱ傭兵は経験豊富だな、もうほとんどが起きてやがるわ。」
「き、貴様! 何者だ!?
この者達を殺したのは貴様か!?」
見張りを倒したケンだったが騒ぎを聞きつけ、近くの傭兵らはほとんどが起きていた。
野営地の奥からも「全員起床しろ!」等の怒鳴り声も聞こえ始めている。
「貴様! 我々の質問に答えんか!?」
「んー? おりゃケンって言う冒険者さ、違法な奴隷狩りをしている連中がいるって聞いてな? ぶっ殺しに来たんだわ。」
「! 天槍のケンか!
ま、まて! 我々はカルタサーラの者だ、交戦の意思はない!」
天槍のケンっと知ってヤバイと思ったのか、少し豪華な装備の傭兵の1人が身分を明かして戦う意思は無いと言ってくる。
だがケンは笑いながら言う。
「盗賊や違法奴隷狩りはみんなそう言うんだ。
ああ、言い分けはするなよ? まっとうな商人が街道からこんなに外れたところに居るわけないし、冒険者にしては人数が多すぎる、それにこんな人数の冒険者が一緒に活動してれば俺の耳にも入るはずだしな?」
そう言ってケンが槍を構えると傭兵達も武器を構え始める、すると1人の男が半裸の蒼い髪の女の子の腕をつかんで前に出て来る。
「ふん! 要するに話は一切聞かんと言うことか、大方逃げた2匹にでも頼まれたのだろうが、たった1人で来るとは自殺がしたいとしか思えんな! おい、殺せ!」
「待って! アルマとポリーは無事なの!?」
「ああ、無事だぞ? 俺が保護してチェルシーとホッペを舐めあってたぞ?」
「! 良かった……あの2人は会えたんだ……」
「まぁお前もこのあとにホッペを舐め合えば良いんじゃね?」
「何言ってるのよ! 見ての通り私はこの男に捕まって……あれ?」
少女はいつの間にかケンの隣に立っていた。
「な!? い、いつの間に!?」
「短距離転移ってんだ、覚えとけ? ……あの世に覚えていっても意味ないか。」
そう言うとケンは槍を突き出す、周りを囲み始めていたカルタサーラの兵士達のほとんどが1度突きを繰り出したようにしか見えなかったが、首が飛んだのは10近くだった。
「い、一斉にかかれ! かかるんだ!」
「わぁ!? き、来たぁ!?」
「フン!」
「わ、わぁ……吹っ飛んだ……」
蒼い髪の少女を連れていた男の命令で一斉に突っ込んで来た兵士達は、ケンの槍の一振りで吹き飛ばされる。
「んで、お前がパールか?」
「な、なんで私の名前を!?」
「チェルシー達から聞いたんだよ、もうすぐ会えるオラ! と思うから会って聞いてくれ。」
「あ、あなた、本当に何者よ!? 私達があれだけ苦戦して、結局負けちゃったこいつらを一方的に倒すなんて!」
「はっはっはっ! 天槍のケン様だ、ご主人様と呼んでいいぞ? オラオラオラ!」
ケンはパールをかばいながらカルタサーラの傭兵や兵士達を倒しまくる、一流の傭兵で構成されたカルタサーラの奴隷狩り隊も流石に遠巻きに様子見に入る。
「お、おい貴様! 何をしている、早くあいつを殺せ!」
「坊っちゃん、無理を言わないでくだせぇ、天槍のケンって言えば音に聞こえた英雄ですぜ?」
「黙れ! さっさとあいつを殺して俺の女を取り返せ!」
「……ゆっくりと囲め! 盾兵が前列に立って槍を防ぐのだ!」
「ん~? そんなにのんびりしてて良いのか?」
どうやらパールを連れていたのはお飾りの隊長で、少し豪華な装備を身に付けたのが実質的な指揮官のようだった。
その指揮官は長期戦に持ち込んで疲弊させようと考えたようだが、ケンはそんなにのんびりしてて良いのかと聞く。
「? 何を言って……蹄の音!
それに奴隷共が出てきている!?」
傭兵隊長の耳に近づきつつある蹄の音が聞こえ、周りには捕らえた奴隷達が手に手に武器を持って兵士に襲いかかっていた。
「ど、どう言うことだ!? なぜ奴隷達が解放されている!」
「そ、そう言えばあの娘の隷属の魔道具はどうなって……あ!」
「ほれ、外れたぞ?」
「う、うそ……簡単には外れないって長老が……」
ケンはなにやら鍵のような物をパールの首についた隷属の魔道具に当てると、隷属の魔道具はアッサリと壊れて取れてしまう。
「き、貴様! 何だそれは!?」
「こいつは解錠の鍵ってな? 鍵はもちろん人を縛るような魔道具も解除してくれる、優れものなんだよ。」
「バカな! そんな魔道具聞いたことがないぞ!?」
「そりゃ銀龍ドライトがくれたものだからな?」
「銀龍……じ、神器だと!? だがなぜ他に居た者達も……」
坊っちゃん隊長が驚きながら問いかけようとしたが、目のはしに驚きの光景が写った。
「早く逃げるのです!」
「武器ならそこらに転がってるわ!」
「回復薬だよ~、みんな飲んで飲んで~!」
3人の獣人の少女が手に手にケンが持つのと同じ鍵を持ち、奴隷達を解放しまくっていた。
しかもたちの悪い事に彼女達は武器の入った箱やらを引っくり返したのか、そこらじゅうに剣や槍が散乱しており、解放された奴隷達はそれを拾い上げて戦っている。
体力も落ちていたはずなのだが、よく見たら少女達はポーションを手渡しており、奴隷達はそれを飲むと一気に回復して元気に暴れまわっていた。
「撤退! 撤退だ、全員散り散りになって逃げろ!」
「おう、素早くて的確な判断だが一歩遅かったな?」
そうケンが言うと同時に騎兵がなだれ込んでくる。
その背後には多数の歩兵も居るようで、かなりの人数の足音がする。
傭兵達は真っ青になり、生き延びるために必死に逃げ始めるのだった。
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