異世界転移 69話目




「マリルルナ様!?」


「死にさらせぇ!」


この世界の最高神の名前を呼びながら驚くヘルダ、そして神々しいまでに美しい金髪ツインテールの美少女は双剣をドライトの頭に振り下ろす!




[パキーン。]




「ああぁぁぁ!? ま、また壊れたぁ!?」




「もごもごもご……っぺ! 美味しかったです! あ、ついでに手の火傷も治しときました。」


「いやぁぁ……あ、本当だ、クッキー焼いた時の火傷が治ってる!」


ドライトはクッキーを食べるついでにティーアの火傷を治していたようだ。


それはともかくとして、ドライトに双剣で切りつけた美少女である。


ドライトを切りつけたら粉々に砕けた双剣を呆然と見ている。


ケンはなんだこの女? っと思っていたが、ヘルダが漏らしたマリルルナという言葉に聞き覚えがあった。




そう、その名前はこの世界を管理する最高神の名前だった!




「マリルルナ様、あなた様はマリルルナ様でわ?」


恐る恐るっといった感じでヘルダが聞くと、粉々になった双剣を呆然と見ていたが自分が呼ばれているのに気がき、キリッとした表情になって皆の前に立つ。


「我が子等よ、苦労をかけますね……そしてヘルダよ、確かに私がマリルルナです。」


「「「マリルルナ様、あなた様に勝利を!」」」


マリルルナが全員に鷹揚に挨拶をすると、ケンとチェルシーに、いつの間にかティーアと一緒にドライトにクッキーを与えているアンナを除いた全員がひざまずき頭をたれて、この世界の祈りの言葉を捧げる……よく考えたらすげぇ祈りの言葉だな?


そんなことを考えているとアンナに抱っこされながらドライトが言う。


「今しがた私に負けたのに、勝利もクソもないんですけどね?」


「ちょっと五月蝿いわよ? 何にしろドライトさんはなんでまたマナルに居るのよ?」


「マ、マリルルナ様、それなのですが銀龍様が邪神の討ち漏らしがいると……」


「……はぁ……はぁ!? あ、あんの野郎共まだ来てるっての!? 皆殺しにしてやる!


それでドライトさん! どこに居るの!」


そう言うとマリルルナはアンナに抱っこされながらティーアにクッキーをもらっているドライトに向かい直る、凄まじい殺気を放ちながら!




クリスが思わずアンナとティーアの壁になってその殺気から守ろうとするが、どうやらドライトが何かしらの障壁を張っているようでアンナとティーアはキョトンとしている。


「マリルルナさん、殺気を静めてくださいよ? 皆さん怖がってますよ?」


「……スーハースーハー、よしドライトさん新しい双剣をちょうだい! 邪神どもをサイコロステーキにして焼いて捨ててやるわ!」


「邪神ですか? どこに邪神がいるんですか?」


「銀龍様、銀龍様が先ほど討ち漏らしがいると……」


ローデリヒ三世がそう言うと女神マリルルナはドライトの方に向き直る。


「いや、私は“いた”って言ったんですよ? つまりすでに捕まえて拷問部屋に送り込んでいます。


ちょっとどうなってるか確認してみましょう。


……おお! エグい! エグいですよ! 私の分身体にエグい拷問を受けています!」


うん、邪神が可哀想に思えてきた。


何にしろそんなドライトにマリルルナが質問をする。


「……それじゃああなたはここに何しに来たの?」


「クッキーを食べにですよ?」


「失せろ!」


「ウッヒョー!?」


ドライトの答えにマリルルナはドライトの角を掴むと放り投げる!


結果、ドライトは嬉しそうな奇声を出して空に輝く星となった。




「それでですね、邪神はともかくとしてケンさんに用はちゃんとあるんですよ?」


「うお!?」


「きゃあ!?」


「ッチ! もう戻ってきたか!」


今しがたとんでもない遠方に投げ捨てられたはずのドライトは、しっかりと後ろに居たアンナの腕の中に戻ってきていた。


「で、誰に用がある……お前、誰だ?」


ドライトがケンに用があると言って、アンナにケンの方を向いてもらう。


するとマリルルナもドライトが用があると言う人物に興味を持ったのかケンを見る、すると押さえていた殺気を再度放出しながらグレートソードを亜空間から取り出し、ケンに向け言う。


「私の目は誤魔化せないわよ? これでもこの世界の管理を任されている管理神、全ての魂が有る者の顔を覚え知っているわ……でも、あなたは私の記憶に無い。


正体を明かしなさい!」


マリルルナの金色の瞳が輝く、マリルルナは神眼を使いケンが何者なのか見抜こうとしているのだ!


「……都造、健一? 地球からの転移者ね、偶然や事故だとしても地球の管理神なり原始の神様から連絡が有るはずなのに、連絡はきてないし私が感知していないって言うことは邪神にでも送り込まれたのかしら?」


「ち、ちが「だまれ!」ぐぅ!?」


邪神に送り込まれた、そう言われて慌ててケンは自分を送り込んだのがドライトだと言おうとしたが、威圧されて何も言えなくなってしまう。


「……ふん! やっぱりね、あなたの称号に使徒とあるわ。


さぁ、あなたの主人が誰なのか、私に視せなさい!


……視えた! 銀龍ドライト! ってあんたかあぁぁぁ!?」


マリルルナが驚き怒りながらドライトに向き直ると……たくさんのドライトがそんなマリルルナを撮影していた。


テレビ局で使うような本格的な物からハンディカム、一眼レフカメラや8ミリフィルム等々で撮影していたのだ!




念写~っと言いながら自分の額にレンズ押し当ててる変なのもいる……本体じゃねぇか!




念写をしていたのはアンナに抱かれている本体だった。


何にしろ撮影されていることに気がついた女神は怒りと驚きの表情から、呆然とした顔になり、また怒り顔になって叫ぶ。


「ド、ドライトさん、まさかそれ!」


「はい、ドライトTVで絶讚、生放送中です!」


「な、なんてことしてくれてるのよ!?」


「視聴率80超えですよ!」


「こ、このボケ龍~!!」


春先のフェルデンロット男爵王都邸の庭に、女神マリルルナの悲鳴が響くのだった。



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