異世界転移 66話目



「よぉし、まずは俺から鑑定してもらうか!」


「いきなりケンからですか? また大本命が来ましたね?」


ケンはニヤニヤ笑いながら鑑定の石版に手を置こうとする、すると待つように声がかけられる。


「待ちな! あんたらのスキル鑑定には私も同席させてもらうよ!」


そう言って現れたのは、レーベン王国の冒険者ギルドを統括する魔女ヘルダだった。


見た目は15、6歳だが、実際には100年以上生きていると言われる妖怪だ!




「誰が妖怪さね!」


「な、なんでそれを!?」


「全部口から出てたよ! なんにしろあんたらのスキルには私も興味があるからね、同席させてもらうよ?」


そう言ってヘルダはペトラの隣に座ると、鑑定の石版をケンの方に押し出す。


「さて、俺のスキルはどうなってるかな?」


ケンはそう言うと、ケンは鑑定の石版に手を置く。




そして鑑定の結果が出る。




「火魔法が10に詠唱破棄が6か……中々だな?」


「ふざけんじゃないよ! あんた槍術と気功法はどうなんだい!?」


「……それぞれ5だな、これも中々だ。」


「よし失せな! 次はフェリクスだよ! 早くしな!」


ヘルダはケンを蹴って退かすと、フェリクスを呼ぶ。




「俺の番か、風の勇者として恥ずかしいスキルは見せられないな。」


そう言ってフェリクスが手を置くとペトラが頬をひくつかせて、結果を報告する。


「フェリクス様、土魔法が10でが木刀10ですね!」


「木刀なんてスキルは無いよ! 退きな!」


フェリクスは殴られて席から退かされる。




「おめえらちゃんとしろ! さて、俺もいい年だし衰えてなければ良いんだが……」


最後にアルヴァーがそう言って石版に手を置く、するとペトラが絶叫するように叫んだ。


「調理10に礼儀作法が10!」


「やった! とうとう10になった!」


「いい加減にしな!」


アルヴァーはヘルダの魔法で吹き飛ばされる。

その光景をミラーナ達は呆然として見守るのだった。




「い、いったい何が……」


「ミラーナ嬢ちゃん、このガキどもは何らかの手段で偽装したんだよ、やけに素直に鑑定を受けるから、変だとは思ったんだけどね?」


「ケンが火系の魔法を使ったという記録は有りません、ですからスキルも無いはず……」


「主人様、ここをもっと焼いてほしいです!」


ペトラがそう説明する横でチェルシーが持ってきた肉を、魔法で指先から出した炎で焼くケン。


そしてケンの視線はペトラを向いていてスゲーどや顔だ。


「……ありがとうございました!」


「ふん!」


「はっはっぶげら!?」


肉が焼き上がり、チェルシーが離れると同時に高笑いを始めたケンにペトラが近くに有った椅子を投げつける。


椅子は見事にケンの頭にヒットしてケンは倒れた。


「ペトラさんって、投擲スキル8でしたよね?」


「この間に上がって9です。」


ケンが避ける暇も与えずに頭にヒットした椅子を見ながらフェリクスがそう聞くと、ペトラは真顔でそう答える。




「そんなことはどうでも良いよ!


あのアホは器用になんでもこなすからね? 魔法も使えるだろうさね!


それよりもあんたらだよ! 一体どんな手で鑑定の石版を誤魔化したんだい!」


「あ、あの、どういう事なんですか?」


吠えるヘルダにちょっと引きながらミラーナが質問をする。


「こいつは鑑定の石版ってね? 手を置いた者のスキルを調べられる魔道具なんだよ、性能にバラつきがあるけど、ここ王都のは偽装が最低でも7はないと誤魔化せないし、持ってもいないスキルを表示させるなんて偽装を9はないと無理なやつなんだよ?」


その話を聞いたミラーナは思わず洩らしてしまう。


「あ、この間のダンジョンでした訓練ってこういうことなんだ……この魔道具もこういう時に使うのか……あ!」


「……聞かせてもらおうかね?」


ミラーナはヘルダに捕まり、すべてを喋らされたのだった。




「この間のダンジョン攻略中に、偽装の訓練をしてたのかい……あんた等、まともに攻略してると思ったらそんなことをしてたのさね?」


「「「すんませーん!」」」


ヘルダににらまれて、ケンとフェリクスにアルヴァーは揃って頭を下げる。


「ったくもう……それでこれがスキルの偽装をして、鑑定の石版を誤魔化したっていう魔道具かい?」


「そうです、この間のダンジョンで拾ったんですけど、ケン達が面白がって量産したんですよ。」


「またはた迷惑な物を作ったね!?」


「「「本当にすんませーん!」」」


怒り狂うヘルダにケン達は土下座をする。




「これって問題なんですか?」


「クリスさん、こういう鑑定を誤魔化そうとするのは盗賊やスバイに邪神の信徒なんかなんです。


普通はこうして手を置くと、正しいスキルが表示されるんです。


それを元に危険人物かどうかを知れるのですが……」


そう言いながらペトラは石版に手を置く。


「へー、家事が8、整理整頓に掃除が7、あ! 礼儀作法と料理が9だわ! 凄い!」


ミラーナがそう言ってペトラに尊敬の視線を向ける、だがその横でクリスが思わず洩らしてしまう。


「あ、あれ? 私が視たのと違う? なんで?」


「ふん、ミラーナ嬢ちゃんは騙されちゃダメだよ。


ペトラは偽装10を持ってるからね? その石版も誤魔化せるのさね、ペトラもクリス嬢ちゃんが看破を持ってるのを忘れるんじゃないよ? とっくにスキルを見られてるさね!」


「っち! そうでしたね!?」


「あ、あのペトラさん、暗殺術10って……」


「クリスさん! それ以上は「チェルシーちゃんとお揃いですね!」……ちょっとそこら辺の詳しい話を向こうでしませんか?」


ペトラはクリスとワイバーンの肉にかじりついているチェルシーを連れて奥の部屋に去っていく。




「ペトラ嬢は暗殺術10を持ってるのかよ……」


「うちのパーティーの斥候や盗賊だったのだってやっと7だぞ?」


「いやそれよりもチェルシーも10ってどういうことさね!?」


アルヴァーが呆れながら、フェリクスは驚きながらそう話しているとヘルダはケンに詰め寄るが。


「気のせい気のせい! ヘルダ様もほらこれ、な? 気のせいだろ?」


「いやケン……鑑定の石版の強化方法? ……気のせいだったようさね!」


何らかの高度な取引で無かった事になる。




「……ふぅ! 良い取引が出来ました! なんですかヘルダ様? ……石版の強化ですか? 私は鑑定のスキルの取得方法と強化方法です、両方有ればさらに冒険者ギルドは飛躍しますよ!」


「ああ、流石は天槍のケンに堅守のアルヴァー、そして我等が偉大な風の勇者フェリクスだよ! こんなに良い取引が出来るとはね!」


ペトラとヘルダは鑑定の石版の強化が出きるのと、職員に鑑定のスキル持たせる詳しい方法を知れて大喜びだ、そんな2人の横でケン達3人はどや顔でポーズを決めている。


「まぁ何にしろ、裏取引が成立した以上は小言は言わないよ?


でもその石版を誤魔化す魔道具は試さしてもらうからね?」


ヘルダはそう言うとケン達が差し出した魔道具を確認する。


「ふーん? 指輪に首飾り、腕輪なんかも有るんだね? まあ指輪を試さしてもうさね?」


ヘルダはそう言うと、1番多くある指輪型の物を手に取り指にはめてから石版に手を置く。




そして石版に表示されたものは!




家事3 料理4 礼儀作法4








そして!








ヘルダ 16歳。








「「「ふざけるなー!?」」」




この日、レーベン王国の王都にあるレーベン王国、冒険者センターギルドでは、ヘルダの高笑いとそれを罵る大多数の声が響いたそうな。



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