異世界転移 43話目




「おっし! やったるか!」


「やったるかー!」


「と、とりあえず後ろに着いていきます!」


「1日で終わるのかしら?」




「「待て待て待て! ちょっと待てって!」」




俺は本気の時に身につける銀龍の装備を身に付け、何時もの槍を握りしめながら言う。


そして左右にはその声に答えながら真新しい装備を身につけたチェルシー、クリス、ミラーナが居た。


チェルシーは薄い革製ブレストプレートの鎧を身に付けいて、両手に1本づつ短目のショートソードを持って振り回している。


クリスは同じ革製だが少し厚めの物を着ていて自分の体に合った長さのスタッフ、杖を手にしていて。


ミラーナはミスリル製のブレストプレートに籠手と脛当に兜を被り、右手にグラディウス、左手にカイトシールドを歩兵用に小型化したヒーターシールドを持っていた。


「ねぇねぇ、ミラーナ様の鎧はミスリルだって解るんだけど、クリスとチェルシーちゃんが身に付けてるのは何?」


「こいつはテクタイトから貰った皮から作った物だ、俺のとお揃いになるように同じ色にしたんだよ。」


「へー……そ、それって黒竜王様の皮製なの!?」


「またとんでもない物を……。」


「「いやいやいや、本当に待ってくれよ!」」


「何よ、うるさいわね。」


俺とミラーナ達の装備について話していたパトリシア、フェリシー、ジャンナに割り込んできたのはフェリクスとアルヴァーだった。




「ここは例の大公家の跡地だろ?」


「いきなりこんなところに連れてこられて、何が何だか分からねえんだよ!?」


わめくフェリクスとアルヴァーの前に俺とパトリシアにフェリシーが立ち、説明を始める。


「昨日の事なんだが、冒険者ギルドに行ってきてな、そこでここの土地を紹介されたんだよ、リッチのババアに!」


「誰がリッチだい!?」


「半分リッチのババアに!」


「それなら合ってますね。」


文句と同意の言葉を言いながら現れたのは、ヘルダとペトラだった。


「ったくもう、本当にどうしようもない小僧さね。


それよりもフェリクスにアルヴァーだったね、今回はあんたらにも利益になる話だから参加しな。」


「ヘルダ様お久しぶりです、それで私達の利益ですか?」


「ああフェリクス、あんただって子爵に陞爵されたんだろ。

シュタインベルクがある程度は落ち着いたら伯爵、そして次は侯爵様さね。 そうなったら屋敷はどうするつもりだい?」


「それは……。」


「あんたもケンと一緒にある程度の土地を押さえときな、ってかパトリシア様が正妻なんだから王宮に面した所にあんた等が落ち着くべきさね。」


そう言うとヘルダはパトリシアを見る。


パトリシアは王族だと言ったが詳しく言うと現王の弟、戦死した第2王子の娘だ。

その第2王子は兄の現王が王太子の時に従って各地を転戦していたが、ある戦いで戦死してしまった。


その時に兄の現王に産まれたばかりのパトリシアを頼むと遺言を残したのだ、そして現王が引き取って娘として育てきた。


こうしてパトリシアは王族として、王女と分け隔てなく育てられたので周りも王女として見ているのだとか。


なんにしろパトリシアには数々の婚約の打診があったが、自分の父の仇を討つために断り続け自分を鍛えていた。


そこに現れたのが、当時は騎士爵だったフェリクスだ。


元々曾祖父は子爵だったが、領地の町を魔人に攻め落とされたのを恥じて、下野しようとしたのを当時の国王に留められて永代の騎士爵になり、国のため民のため、そして故郷を取り返すために一族総出で戦っていたそうだ。


そんな中で現れたのが凄まじい剣術に風と光の魔法を使い、実直に戦い続けるフェリクスだった、そしてそんな彼に惚れてフェリクスのハーレム、違った、パーティーに入ったパトリシア、2人はお互いに惹かれ合い魔王を討伐できたら結婚しようと誓いあい、魔王の討伐後に正式に結婚して正妻になったのがパトリシアだった。


レーベン王国が誇る勇者のフェリクス、国王一家が可愛がるパトリシア、こんな2人が結婚をしてフェリクスは故郷を取り返した。


そんな2人なので貴族も国民もフェリクスが、シュタインベルク子爵家が近い将来に侯爵、さらには公爵にもなるのでは? っと考えている。


だからこそ一等地に家格に合う屋敷を建てる必要があるのだと、ヘルダは暗に言っているのだ。




「それに俺とお隣になれるんだ、良い話だろ?」


「そこが1番問題なんだろうが!」


「ケンがお隣になる……うん、嫌だわね。」


フェリクスとパトリシアは俺の隣に住めるというのに、何故か嫌がっている。




照れてるのか?




「バカ言ってないでさっさとボスを討伐してきな!


なんとか帰ってこれた奴等の話を総合すると、中心に有る大公家の住んでいた屋敷にボスが居て、そいつがアンデッド共を召喚しているらしいんだよ。


多分、ボスは大公本人に間違いないだろうね、大公が邪神にそそのかされてアンデッドになってから100年近く経つ、それなりに力を持ってるはずだから気をつけな!」


ヘルダはそう言うと、シッシッと犬を追い払うような仕草をする。


そんなヘルダにケンが質問をする。


「なんだババア、お前は行かないのか?」


「私が行くわきゃないだろうが!」


「そうか……やっぱり仲間と戦うのは嫌なのか……。」


「あんたは本当に失礼さね!?


……ふぅ、これでも私はレーベン王国の冒険者ギルドのグランドマスターなんだよ? その私が長時間、ギルドから離れるわけにはいかないんだよ。


だけどね、ここはレーベン王国の恥部でもあると同時に王都に住む市民には邪神戦争を思い出させる恐怖の象徴でもあるんだ……だからこそ悪いけどフェリクスにケン、それにアルヴァーも頼んだよ!」


ヘルダにそう言われてフェリクスとアルヴァーはそれぞれ―――


「お任せ下さい!」


「勇者様達も居るんだ、無様な姿は見せられねぇぜ!」


そう言って敬礼をする。


「ッチ! しゃーねぇなぁ……取り合えず雑魚共をぶっ殺しながらその屋敷とやらを調べてみるか!」


フェリクスとアルヴァーが受けたので俺も仕方なく返事をすると、大公家の敷地に……入らなかった。




「? なんだよケン、早く行こうぜ?」


「お前、そんな所で突っ立てるなよ、入れねぇだろ。」


そう言って俺を避けて敷地に入ろうとするフェリクスとアルヴァーを俺は無言で止めて、槍を振りかぶると地面に叩きつけた!


[ドゴォン!]


「な!? ケ、ケンいきなりどうした!」


フェリクスが驚いて聞いてきたので、晴れてきた土煙の向こうを顎で示す。




「ん? うお!? い、いきなりこれか!」


「こりゃ、思ってたより厄介そうだぜ……。」


俺が示した先には大きな穴が開いており、中には大量のゾンビとスケルトンがひしめいていたのだった!



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