異世界転移 42話目




串焼き屋に行くと丁度焼き上がっていた、その串焼きをにらむように見つめるチェルシーに負けて俺はとりあえず焼けてる分を全部頼むと、店主が100本は有りますが? っと言ってくるが俺は全部買うと言い焼けた先から受け取って自分の魔法袋に入れていく。




支払いもしてミラーナとクリスの方を見ると、何かのジュースを持って飲んでいた。

その後ろに果物屋の店主がニコニコ顔で待っていたのでその分の支払いと、俺とチェルシーの分を頼む。


「ねぇケン、冒険者ギルドでも貴族地区の土地は買えるの?」


「知らん、だが冒険者ギルドは顔が広いからな、なんとかなるだろう。」


「ご主人様、何故か商業ギルドが騒がしいんですが……。」


「昼飯時だからじゃないか?

そんなことよりマックスはどうした。」


「父なら冒険者ギルドに先ぶれとして行くと言って向かいました。」


「そうか、それよりチェルシー、それは俺の腕だからかじるな、ほれ串焼きはこっちだ。」


「ぐるるる……わんわん!」


そんなこんなで果物屋がジュースを持ってきてくれたので、受け取ると支払いをして歩き出す。


すると串焼き屋と果物屋が話しかけてきた。


「貴族様、もし良ければ宣伝して良いでしょうか?」


「うちもケン様が飲んだジュースと宣伝させてもらっても……。」


そう串焼き屋の親父と果物屋の女将が言ってくる、俺は不思議に思って2人に聞いてみる。


「……俺、名乗ったか?」


「いえ、名乗っていませんが王都に来た時のパレードで御尊顔を見させていただきました!」


「私もです!なので偉大な英雄様に飲んでいただいたと言ってもよろしいでしょうか。」


俺はそう言われて串焼きの1本を口にして、ジュースを一口飲む。


「美味いな……良いんじゃね。

俺の名前がこんだけ美味い物の宣伝になるか分からんが、別に良いぞ。」


俺がそう言うと、串焼き屋と果物屋は「ありがとうございます!」っと言って店に戻って行った。


こうして冒険者ギルドに向かう俺達、チェルシーに串焼きの肉ばかり食うなと注意しながらバカバカ串焼きの肉を食ってたら、チェルシーに噛まれたりしているうちに到着した。




「おお、ここもでかいな!」


「でけーでけー!」


「商業ギルドも凄かったですけど、ここも凄いですね。」


「ほらケン、マックスも待ってるわよ。 はいりましょう!」


ミラーナにうながされて冒険者ギルド内に入る、するといきなり2人の人間が俺達に向かって走ってきた。


「フェルデンロット男爵様、申し訳ありませんでした!

貴族地区の最高の場所を紹介する準備が出来ておりますので、どうぞいらしてください!」


「いえ、土地の斡旋なら商業ギルドにお任せください!

商業ギルドのギルド長が案内させていただきますので、最高の場所を案内できます!」


「おおお!? なんだなんだ!」


ケン達に向かって来たのは貴族地区の土地斡旋業者の屋敷に居た番頭と、商業ギルドの受付嬢だった。


そんな2人と俺の間に1人の女性が割って入る。


「見苦しいですよ。 あなた方はすでに敗北したのです、さっさと尻尾を丸めて帰ってください。


あ、フェルデンロット男爵様、いえ、天槍のケン様とお呼びした方がよろしいですか?


私は王都の冒険者ギルドで、受付嬢達のまとめ役をさせていただいているペトラと申します、以後お見知りおきを……。」


「お、おう?」


俺達に向かい直して立派なカーテシーを極めるペトラ女史。


それを見て俺だけでなくミラーナまで、素晴らしいカーテシーだと驚いている。




「それではこちらに席を用意しておりますので、どうぞ。」


ペトラ女史がそう言って案内しようとすると番頭と受付嬢が何かを言おうとしたが、ペトラ女史ににらまれて何も言えなくなってしまっていた。


するとそんな3人にクリスが声をかける。


「あの、良い場所を安く欲しいですし、他の方の話を聞いた方が良いと思うんですが……。」


「お、おお。 そんだな、それが良いな!


ってことで2人も良い所が有るなら紹介してくれや?」


「はい!」


「お任せください!」


「っち!」


おお、番頭と受付嬢は嬉しそうに返事をしたがペトラ女史はすごい舌打ちをしたぞ!




なんにしろ俺達はペトラ女史に案内をされて、ひときわ豪華な部屋に案内される、そこには2人の男女が待っていた。


「お! 来たなケン!」


「あなたが天槍のケンですか? あまり強そうに見えませんね。


ああ、失礼しました、私がレーベン王国の冒険者ギルドを統括させていただいている、グランドマスターのヘルダともうします。」


男の方は絶叫のコリンズ、ロットリッヒのギルドマスターで、若い女性はヘルダと名乗る冒険者ギルドのグランドマスターだった。


「へー、王都には結構来てたけど、冒険者ギルドのグランドマスターってこんなに若い女性なんだ、知らなかったわ。」


そう言って物珍しそうに見るミラーナだったが―――


「あ、あれ?」


突然ふらつくと倒れそうになったので俺が支えてやる、片手で。


もう片方の手? 槍をヘルダに突きつけてるに決まってるじゃないか!


「ババア、残りの寿命が要らないようだな?」


「止めんか! ヘルダ様も止めて下さい!」


「ふん、ただの小僧じゃないようだね。 って本気で刺そうとするんじゃないよ!?」


何かの障壁が有るようで、穂先は顔の30センチ位手前で止まる。


なのでえぐる様にひねったら5センチほど進んだので、さらにひねってやろうとしてコリンズに止められヘルダに逃げられる。




「っち、あんたが魔女ヘルダか、その魔術と魔法の腕前は聞いてたが、本当に大したもんだな!」


「小僧こそ私の障壁を破るとは、大したもんだね。

さて、なんにしろ話をしようじゃないか、土地か屋敷が欲しいんだって?」


そう言ってヘルダは椅子に勢いよく腰かける、よく分かってないクリスとミラーナ達に説明をしてやる。


「このババアは魔女のヘルダってんだ、聞いたこと有るだろ?

見た目は若いが正体は何百年生きてるか分からんババアだ、んで今さっきはミラーナを魔眼で昏倒させようとしてた、だから槍で軽く刺そうしただけだ。」


ケンの説明を聞いてミラーナやクリスだけでなく、コリンズも驚いている。


「お前、よく見抜いたな? 初見で見抜いたのはワシとフェリクス位じゃぞ。」


「こいつ偽装やらなんやらしているが、滲み出る魔力とその波動が恐ろしく強いんだよ、直接見なくても気配でわかるわ!」


ケンはそう言いながら目を細めてヘルダを見る、ヘルダは嫌そうに手を振ってケンに言う。




「あんた、土地の紹介を受けに来たんだろ? 小僧、視ようとするんじゃないよ!」


「っち! お前は視といて俺には視るなってか。 ……まあ良い、土地の紹介をしてくれや。」


そしてケンとミラーナはヘルダとペトラにうながされて席に着く、チェルシーとクリスは少し離れた所に有る椅子に座り、ケンの背後にはマックスが立った。


「んじゃ、始めるけど、立地なんかの要望は有るのかい?」


「無い方がおかしいだろ……ってか、アホは良いのかよ。」


「ジジイならたまたま居ただけだよ、と言うかこのジジイに土地の紹介や斡旋の作業が出来ると思ってるのかい?」


「そりゃまあそう……胸を張るな胸を!」


俺がコリンズを見ながらアホと言うとヘルダには誰の事か分かったようで、このジジイに書類仕事が出来るわけないだろと言った。


そしてコリンズは何故かバカにされて胸を張っていたが……。


「まぁ、あんたに紹介するのはこの3つになるさね。」


そんなことをしている間に、ペトラが地図をテーブルに広げてヘルダが貴族地区の3ヶ所を指差す。


男爵の俺には少し広すぎる気がしてヘルダとペトラを見ると、ペトラが最初から分かっていたようで解説してくれる。




「フェルデンロット男爵様はフェルデンロットの町を解放すれば、子爵に陞爵されることが決まっています。


さらに時期を見て伯爵になられるでしょう、その時々に引っ越すよりもある程度の土地を押さえておいて、陞爵後に屋敷を増築するなりした方が良いと思います、そのためにこの3ヶ所を選ばさせてもらいました。」


そう言われて再度地図の3ヶ所を指差すペトラ、なるほどなぁ? っと思いながらそれぞれの長所などを聞いていく。


「最初のこの場所は広さは申し分ないのですが、王宮や冒険者ギルドに商業地区からも遠く、不便なんです。」


「そんなもん空を駆けて「ダメに決まってるでしょ!」と言うことで次を頼む。」


ミラーナの反対で最初の候補は外れる。


「次にここなんですが、広さもほどよく王宮や冒険者ギルドに、商業地区等からも余り離れていません。

1番のお勧めと言えますね。」


「へー……おお、こりゃ良い場所だな。

ここからなら王宮や冒険者ギルドに、市場にも散歩がてら行けるわ!」


「だから貴族が普通に出歩くなって言ってるのに……あら? ペトラさん、この地図はかなり細かく道や家々の区域が載ってますが、お勧めの土地の隣は区分けされてないんですね?」


ミラーナの言う通り、お勧めの土地の左隣はかなり大きく塗り潰されていた。


「ああ、そこはアイヒベルク侯爵家の「よし! スラムでも城外でもドンとこい!」ミラーナ様!?」


「あー、ミラーナはアイヒベルクのところの3男にな?」


「ああ……。」


「あのクソ餓鬼かい?」


俺の一言で何かを察したらしく、ヘルダもペトラもそのお勧めだったろう土地の書類等をゴミ箱に突っ込んだ。




「最後にこの土地なんですが、ちょっと問題が有りまして……。」


「あ、あのペトラ女史、ここってあの場所じゃあ?」


「こ、ここは無いでしょう。」


最後にペトラが指差した場所を見て、商業ギルドの受付嬢と貴族地区の土地の斡旋業者の番頭が驚いた声を出す。


その土地は先ほどのアイヒベルク侯爵家の敷地より広く3倍近く有った、しかも一部が王宮とも直接につながっているようで王宮を示している部分と一体化しているのだ。


それに隣でミラーナは怒りながら真っ青になるという器用なことをしているので、気になってどんな土地か聞くと。


「ここは元々大公家の土地でして……由緒正しい場所だったんです。」


「その大公家と言うのは、レーベン王国を起こした初代国王の弟が起こした家で、王家とほぼ一体化していたのですが……。」


「邪神戦争が始まって直ぐに、当時の当主が騙されたのか唆されたのか、自分達こそが王家に相応しいと反乱を起こしてね。」


「当時の当主は忠誠心に厚く、優秀だと言われてたんだけどね?


すぐに反乱計画はバレて、しかも味方についてくれる貴族や軍人もほとんど居なくて、あっという間に鎮圧されたんだけど……。」


受付嬢、番頭、ペトラ、ミラーナと口々にそう説明して顔を見合わせる。


そして最後の情報を言ったのはヘルダだった。




「大公家の当主と一族に、家臣なんかの残った奴等がここに立てこもったんさね。


それが邪神にゾンビやらスケルトンに吸血鬼なんかのアンデットにされて、それからこの敷地の中心の館に入って出てこれた者がいないんだよね、これが!」


「そんな土地を売り付けようとするな!」


俺の至極全うな叫びがギルマスの執務室に響くのだった。






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