【番外編】日記と少年と友情と(終)

KAC202211 お題「日記」


既に公開済の

「キャンプとビビりとヒーローと(前)」

「真夜中とタクシーと追跡と(中)」


の続編です。

次回から本編の更新始めます!



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『たっだいっまーー!はー今日も疲れた!あれ?はるさん、何読んでいるの?』


「あ、稜さんお疲れ様です。ハルト君のお母さんから手紙が届いたのよ。ハルト君がつけてた日記同封してくれてたんだけど見て?めちゃくちゃ可愛いよね。この歳になってここまで歳の離れたお友達ができるなんて思ってませんでした。」


『どれどれ、見せて?』


7月28日

きょうはかぞくでキャンプにいきました。

ひさしぶりのお外ですこし、きんちょうしたけど、山のくうきはきもちよくてさいこうでした。となりのばしょにいた、かわいいおねえちゃんがヒグラシをもってきてくれたのにはすごくおどろきました。いっしょにいたおにいちゃんは、セミがこわいみたいでへんなうごきをしていておもしろかったです。


8月6日

きょうはこのまえのおねえちゃんとビビりのおにいちゃんが、やくそくしていたクワガタとカブトムシを持ってきてくれました。たのんでいたミヤマクワガタではなかったけど、ぼくとのやくそくをおぼえていてくれたことがすごくうれしかったです。おねえちゃんとぼくがクワガタを手に持ってあそんでいるのをおにいちゃんは、はなれて見ているだけでした。ぼくは、なさけないなぁと思いました。しかもビビりのおにいちゃんは、コクワガタでもさわれなかったのにはおどろきました。ぼくはビビりとは言われたくないので、明日のしゅじゅつをがんばってのりきります。そしてまた、おねえちゃんやおにいちゃんと虫とりに行きたいです。


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先日は、お忙しい中わざわざお見舞いに来て頂き本当にありがとうございました。はるかさんと西園寺さんが、息子のお見舞いにきてくれたことで、手術前で緊張していたあの子でしたが、グズりもせず手術に向かってくれました。小さい頃から入退院を繰り返していた為、友達と呼べる同年代の子もほとんどいないハルトが、お二人の事を僕のお友達!と言って同室の子に自慢げに話しているのを見てとても嬉しく思います。知り合ったばかりだというのに、重ね重ねのお願いばかりで申し訳ありませんが、ささやかではありますが息子の退院祝いをしたいと思います。ご都合が合えば是非ともお二人にサプライズゲストとして登場頂きたく思い連絡させてもらった次第です。ご多忙とは存じますがご検討頂けると幸いです。ちなみにこれは、ハルトが書いていた日記です。西園寺さんに対しては少し辛口なところもありますが、お二人への好意が伝わるかと思い添付させて頂きました。


『は、はるさん?俺ってそんなにも情けなかったですか…?頻繁にディスられているような気がするんだけど!』


「ん?情けないとまでは思わないけど、あー怖いんだな?とは思いましたね?得意不得意あるだろうし、別に気にしなくていいんじゃないの?」


私の言葉に納得はしたものの、年下のハルト君にビビりだと思われるのは嫌なようで、その日から稜さんは毎日動画サイトで虫の情報をかき集め、触れないけど知識だけは一流?な虫おじさんへと成長した。



そして、ハルト君の退院祝いの日。

「稜さん、準備できましたー?

そろそろハルト君の所に向かうわよ?」


『いつでも行けるよー!それでは~

ハルト君の元へレッツラゴー♪』


「あ、お土産何がいいかしら。もうセミもほとんどいなくなっちゃったしねー。んー、スズムシとかそこら辺にいないかな?」


『いやいやいや、待って!待ってはるさん!退院祝いにスズムシはないわよ!!美味しいお菓子とかにしましょうよー?』


「もぉー冗談よ?ふふっ稜さん、またハルト君にビビりのお兄ちゃんって言われちゃうわよ?」


『ふふふ、はるさん?俺が今日までどれだけ昆虫動画を見てきたと思っているんですか?動画のお陰で耐性は前よりもついたし、もうビビりとは言わせませぬ!!』


ピンポーン♪♪♪♪


”え?なんでなんで?はるかお姉ちゃんとビビりのお兄ちゃん!来てくれたの??”


突然現れた私たちを見て、大はしゃぎを始めたハルトくん。

キャンプ場で”虫”をきっかけに出逢った、

小さな友人との交流は今も続いている。

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