【稜&春香】おうち時間と運命と。
カクヨム誕生祭2021
お題「おうち時間」
48回目のプロポーズ番外編となります。
読んだこと無い方も楽しめるはず?
短編にもう一話お付き合いください!
会社が増設工事の為、一週間の在宅勤務を命じられた春香と稜。いつもは別々の部署で離れて仕事をしている二人だが、やはり家に一緒にいると仕事が捗らない!春香は夏子さんに助けを求めてみるが…?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ついにこの日がきてしまった…。
前々から決まってはいたことだがやはり
気が進まない…そう、今週は会社の増設工事の為、私と稜さんは在宅勤務を命じられているのだ!!
「はるさん、おはようございます!いよいよ俺達も在宅勤務デビューですな!どうします?せっかくだし二人で並んでやる?お昼ご飯はどうしよっか~??あー、仕事しながら1日中はるさんと一緒に過ごせるなんて…在宅勤務って最高じゃん!!」
持ち帰った会社のノートパソコンにログインして始業の連絡をしたはいいものの、彼は私の周りをチョロチョロと動き回り一向に仕事を始める気配がない…。
しかも、延々と一人で話し続けている!
こんな環境で仕事なんて出来る訳がない!!
『稜さん?いつまで、そうやって私の
周りを徘徊するつもりなのかしら?』
真顔で威嚇してみると、謝りながら
部屋から退出していった彼だったが
十分も経たぬうちに戻ってきては
お昼ごはんどうする?肩凝ってない?
と、邪魔をしにくる始末…。
何か手を考えないと、後四日も
在宅勤務なんて無理だ!!
私は、いつも自分のアトリエで仕事をしていると言っていた頼れる姉さん、夏子さんに相談してみることにした。
※※※※※
翌日───
「はるさん、おはよーございます!!今日も清々しい朝の始まりですよ~?ってあれ?」
起きたらはるさんが隣に寝ていなかった為
リビングにでもいるのかな?と思い大声で
挨拶をしてみるも、返事がない。
トイレやお風呂を探してみるも
部屋の中に人の気配を感じない…
急いで電話をかける為スマホを取りにいこうと食卓を走り抜けたその時、風圧によって
一枚の紙切れが俺の足元にヒラヒラと着陸した。
"稜さん、おはようございます。二人でいると仕事にならないので、夏子さんのアトリエで夕方まで仕事させてもらうことにしました。夜ご飯までには帰るから、稜さんも仕事をちゃんと終わらせること!"
え!!そんな!!
俺は置いて行かれたのか!!
昨日はるさん機嫌悪かったしな…
とりあえず、太郎に電話だ!!
♪♪♪~
あれ?おかしいな…
俺からの電話に出ないことは
滅多にないのに…
電話を切って数分後、太郎から
メッセージが届いた。
"稜どうした~?僕今、
新幹線の中なんだよね~。"
え!新幹線とは!?
もう、何がなんだかわからないが、
一つだけわかったことがある…!
俺は今日一日、一人で過ごさなければ
ならないようだ…。
そして俺は一通りの仕事を午前中に
片付けた後、行きつけのイタリア料理店で
昼食を取るべく、愛車へと乗り込んだ。
※※※※※
『はるちゃん、おはよー!こっちだよ~』
夏子さんに指定された駅に到着すると女の子二人を引き連れた夏子さんにタイミングよく出くわした。
「夏子さん、おはようございます!突然のお願いなのにすみません、今日はよろしくお願いします!」
話を聞いていると後ろにいた女の子達は、
どうやら夏子さんの仕事のお手伝いをしている人達のようだ。ウェブデザインの仕事をしていると聞いたことはあるが、まさか人を雇っているとは…。憧れます、姉さん!!
駅前から程近い、マンションの一室に案内され、応接室らしき部屋を仕事場として貸してくれた夏子さん。
なんだ、この天国のような場所は!
会社のデスクよりも仕事がしやすそうだ。
早速作業に取り掛かり、昨日邪魔されてできなかった分まで片付けたところで時計を見るとちょうどランチタイムに差し掛かるところだった。
『はるちゃん、一息つけそう?この子達が
イタリアンのデリバリー頼みたいって言ってるんだけど、一緒にどう?』
本当、できる女性代表のような人だ…
憧れの人を尋ねられる街角インタビューを
受けたとしたら間違いなく私は、
"夏子さん!!"と答えると思う。
「わっ!ありがたいです!
一緒にお願いしま~す!」
見せられたランチメニューの中から食べたいものを選び、夏子さんが慣れた手つきで注文してくれた。外に行かずとも家庭では作れない美味しい料理が今いる場所で食べられるなんて、本当便利な世の中になったものだ。
そして待ち時間の間、女子四人で他愛もない話を繰り広げているとお待ちかねのインターホンがなった。
すると突然支払いの為に玄関へと向かった
夏子さんが、大きな叫び声をあげる。
※※※※※
「『えぇぇぇぇぇぇぇーーーー!!!』」
玄関に響き渡る男女の声。
叫び声に驚いたのだろう、奥から女の子が
三人程駆け寄ってきた。
もちろん、我が愛するはるさんも。
『夏子さん?どうしたんですか!!?
って…えぇぇぇぇぇぇぇーーー!!?何で
あなたがここにいるのよ、稜さん!!』
「いやいや、なんたる偶然!やはり我々は赤い糸で結ばれているようだね、はるさん!黙って出て行ったのに半日もしないで再会できてしまうとは!!あ、なっちゃんとりあえずご注文の品を渡すね!お品代店に渡してきたら戻ってくるから事情はまた後で!!ご利用頂きありがとうございました~♪」
店に、なっちゃんから頂いたランチ料金を
持ち帰り、近所の洋菓子店で五人分のケーキを買う。
はるさん達喜んでくれるかな~?
ニヤニヤとしながら、愛車へと乗り込み偶然突き止めた、はるさんの避難場所である
なっちゃんの事務所へとトンボ帰りする俺。
事の経緯はこうだ。
昼食を食べようと知人が経営するイタリア料理店に到着した俺は、店に入った瞬間に店主に泣きつかれてしまった。どうやらバイトの欠勤により配達が出来ないのにお得意様からの注文を受けてしまい困っているという。
普段ならそんな面倒なことは引き受けないのだが、今日は暇だ!はるさんもいないし!
ということで、引き受けてみると何とビックリ!配達先になっちゃんの名前が書いてあるではないか!
もう、これは運命としか言いようがない!
しかも、女子の花園でケーキを満喫とは!
太郎にはフラれたが今日も
楽しい一日だったな~♪
※※※※※※※※※※※※※※※
俺が現れたことですっかりヤル気を失った
はるさんを連れて我が家へと帰る途中…
『稜さん?貴方は在宅勤務を今日も全く
していないんじゃないの?』
「…ん?在宅勤務…?あぁーーー!!
二人で帰って、はるさん眺めながら
めちゃくちゃ勤務致します!」
深いため息をつくはるさん。
「もう絶対にお邪魔は、致しませんので
明日は一緒にいてくれますか?」
『ばーか。』
その後心を入れ換えた俺は、喋りではるさんの仕事の邪魔をせずとも、近くでその麗しのお姿を静かに盗み見るだけで充分ということに気づき、特に大きく怒られることもなく、無事に残りの在宅勤務期間を終えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます