【31】ビールと伊勢海老と支払いと。
場所を移動して、佐世保市中心部にある庶民の料亭【ささいずみ】へと到着。
幼少期に両親に連れてこられた頃とは違い、改装されキレイになった店内に驚いた。
予約の名前を告げ、席に案内される。平日でも大盛況な店らしいのだが帰省シーズンということもあり昼の店同様、満席状態だ。
『稜さんとりあえず、ビールと鯵の刺身と漬物でいいかな?さっきごま団子食べたし、そんなにお腹空いてないよね?』
「うん!ビールがあれば何でもよし!もしかして、刺身って生け簀のやつ食べれるの?」
『小さい時にきたことあるけど、鯵が丸ごと活造りで出てきてさ、魚ピクピクしてたから驚いて食べれなかったよ!ちなみに食べた後の骨も、味噌汁とか骨唐揚げにしてくれたはず!烏賊も美味しいんだけど、明日呼子まで食べに行く予定だから我慢してね~。』
「なるほどね~!はるさんはしっかり者だということはよくわかりました!!明日の食事内容まで考えてくれてるなんて…本当行動力の塊だね。」
『誰かみたいに、行き当たりばったりで生きていませんので~?せっかくの旅行だし途中の寄り道はいいけど、目印はつけたほうが動きやすいよね?さて、ビール頂きますか~!ここは、酒屋さんの値段でお酒飲めるらしいから私のことは気にしないで?』
「ん?それは安いからって飲み過ぎるなよと釘をさしていますか?任せなさい♪」
何を任せればいいのだろうか?
いくら支払おうと、そこはどうでもいいのだが飲み過ぎた彼は正直面倒だ。
場所を問わずにどこでもキスしようとする
何とも悪い癖を持っている…。
よし、少し目を覚ましてやろう。
『すみませーん!伊勢海老の活造りとさざえつぼ焼き、黒毛和牛レモンステーキも追加でお願いしまーす!』
飲んでいたグラスをテーブルに置き、私の顔を驚いた様子で見つめ始めた彼。
「はるさん?ここは、はるさんの支払いでしたよね?そんな高級そうなものばかり…大丈夫でしょうか?」
『ん?せっかく旅行に来て地場産の食材を美味しく食べられる店にいるのに、食さないのって勿体ないよね?ビールなんてどこでも飲めるじゃん?お金の心配とかしてないよ?私、持ってるし!』
「出ました!はるさんいつもの
"私、お金持ちだし"アピール!!」
軽く貶されたかと思うと、空になったグラスを見つめながら何かを考えている様子の彼。少々高い買い物だが、都内で食すと思うと半額以下の値段である。彼の病気を抑えられるのならば安いものだ。
「はるさん…全くもってその通りでございます!ビールなんてコンビニでも買えるし、家だろうと、どこでも飲めるけど新鮮な食材はここだけだもんね!よし、ビールは五杯までにするね!!」
こいつそれでも五杯飲むのか…。
先程の話がなかったら何杯飲むつもりだったのかと思うと笑えてくる。
食事とお酒を楽しみ、満腹を感じ出した頃突然彼がまたこちらを見つめてきた。次はなんだろう?またこんなところで求婚でもされるのか?
「はるさん…俺やっぱり出しましょうか??こんないい店連れてきてくれたのに酒ばかり飲んで申し訳なくなって参りました!!」
勝負で勝っているにも関わらず、また訳のわからないことを言い出してきた彼。何が申し訳ないのかもよくわからないし本当に面白い人間だ。正直、この申し出は予想外だったが払ってくれると言うのであれば断る理由もない。
『稜さん?勝ったのに本当にいいの?』
「えー?だってはるさん今日も可愛いし!」
いい感じに酔っているようだ。
黙ってお言葉に甘えるとしましょうか。
『稜さん、だーいすき♪ありがとう!』
「宿でサービスしてよね♪」
『ばーか。』
こうして異国文化が行き交う長崎最後の
夜はいつも通りの感じで更けていった。
(佐世保には米軍基地があり、豪華客船などの寄港地でもあるので、大型船の寄港時などには沢山の外国の人々が訪れます。)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます