佐賀県
【32】宮殿と求婚とシャンプーと?①
昨晩は、ささいずみから徒歩10分ほどの
少し古びたファッションホテルに泊まり
朝を迎えたようだ。慣れない土地を沢山運転した為なのかビール三杯目以降の記憶が
あまりないのが気になる。
「はるさん?昨日俺、居酒屋出てからどんな感じでした?はるさんが伊勢海老とかサザエとか高そうなものを沢山頼んでたのは覚えているんだけどさ、その先の記憶が恥ずかしながらあまりないのです……。」
ホテルの無料朝食を美味しそうに
食べている彼女に訪ねてみた。
『え?稜さん、本当に覚えてないの?話してもいいけどさ、多分落ち込むよ?(笑)』
何を…何をしたんだ俺!!
思い出せ…思い出すんだ!!
と一人で心の中の自分に問いかけてみるも
答えが返ってくる気配はない…。
「はるさん、気になるので教えて下さい。
お願いいたします……。」
食事を流し込むとお茶を飲み
俺の前に座り直すはるさん。
『まずね、支払は稜さんがしてくれました!私が今日も可愛いから払うとかよくわからないこと言ってたよ?後はね、店を出た後に飲み屋街みたいなところを通ってここへとたどり着いたんだけどその道中、道端のベンチに座っていた迷彩柄のつなぎ着た外国の人に、中学生レベルの英語で話しかけて引かれてたよ?多分米軍基地の人(笑)後はね…?』
「は、はるさん待って!!その続きは
まだ無理だ!心がついていかない!!」
『えー?まだまだあるのに~?じゃあ続きは車の中でのお楽しみだね~♪』
楽しそうに身支度を始めた彼女。
"酒は飲んでものまれるな!!"
本当に考えた人、天才だな。
※
『稜さん、とりあえずカーナビを
【有田ポーセリンパーク】ってとこにセットしてくれますか?多分一時間もかからない
場所にあるみたいだから!』
「はい!姫!仰せのままに!!」
『その返事何?しかも姫とか…ないわー。』
彼女の冷たい返事は無視し、ホテルを出た
車は佐賀県へと向かって走り出す。
(あ…レッツラゴー忘れてた。)
40分ほど車を走らせたところで遠くの丘の上に、田舎には似つかわしくない西洋建築の宮殿のような建物が見えてきた。
「え、はるさんあれ何?」
『あ、見えてきたねー。あれが目的地の
【有田ポーセリンパーク】みたいだよ?』
「へっ?俺てっきり有田焼とか柿右衛門とか見れるって聞いてたから、渋い日本家屋が建ってるのかと思ってましたわ~。何か面白そうなところだね!」
『私も行ったことないけど、ヨーロッパ風の広い庭とかもあるみたいだよ?あと、稜さんの好きなカレーが有名らしい!お昼は呼子で烏賊食べるし、レトルトあったら買って帰ろうね?』
ハウステンボスといい、ここといい
九州の人はヨーロッパに憧れているのか?
いや、鎖国で開かれた港だったし、この地域は西洋文化に長けているのか。
誰に問うわけでもない疑問を頭の中で
完結させて目的地の駐車場へと到着。
彼女より先に車を降りると、急いで助手席側に向かい、ドアを開けて手を差し出した。
『え、さっきから何?稜さん、お姫様ゴッコでもしたいんですか?(笑)』
「こんな建物見せられたら、やらないわけにはいかないよね?はい姫、お手をどうぞ?」
『本当、バカだよね~。』
俺の手をパチンと叩くと一人で入口へと
歩いて行く彼女。本当、冷たいよね~。
そんなところも堪らなく好きだけど。
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