稜side
【45】太郎となっちゃんとダメ出しと(前)
春さんとの楽しかったお盆休みを利用しての
九州旅行も終わり、まだまだ猛暑日が続く
ある日の夕方。またヤツからの電話だ…。
(ヤツ=太郎)
「…もしもし?急にどうしたの?まだ金曜日の夜ではないですけど?」
『稜久しぶり~!実はさ…な、なっちゃんが
今日、稜に会いたい!とか、朝から言うわけよ!この前、話の弾みで言っちゃったんだよね。稜がまた、はるちゃんと旅行に行ったらしいよ?って話をね~』
「まぁ、お前からの電話は九割方飲みの誘いだし別に暇だからいいんだけどさ?なっちゃんもくるのか…俺、お説教ですよね…?」
『明日夏子休みらしくてさ?稜のその後に
興味津々でうるさいんだよ…すまないけど
付き合ってくれるか?』
「夫婦揃って人の恋路を気にするなんて
悪趣味だわね~断ってもしつこそうだし、
またいつもの店に三十分後な!」
とうとう黒幕、なっちゃんが現れる。
別に彼女に苦手意識を持っているわけでも
ないし、会ったら緊張するとかそういうわけでもないのだが…彼女は脊椎で話すタイプ。
思ったことを一考する間もなく、口にして
度々ドキッとさせられてきた。よし、覚悟を決めよう。やましいことは何もない!
約束の時間五分前に着いた俺はいつもの様に、先にビールを注文をする。一口目に
ありついた時に、聞き覚えのある声が入口のほうから聞こえてきた。夏子様達の到着だ。
『いや~、稜お待たせ~。あ、店員さーん、とりあえず生二つ追加でお願いしまーす。』
「太郎、お疲れ~。なっちゃんは久しぶりだね!相変わらず美しくあられますな。」
『何?稜くんその喋り方?気になるんですけど!私に説教されると思って持ち上げてるんでしょ~?』
「あ、バレました?!まぁとりあえず久しぶりの再開を祝して乾杯しましょうよ!」
俺となっちゃんの会話には我関せずで
料理メニューに釘付けの太郎。
三人で飲むのはかなり久しぶりだが、はるさんといる時とは違う、居心地の良さを感じさせてくれる。
会社の愚痴や世間話を一通り済ませ、三人とも二杯目を飲み干し、お腹も満たされてきたタイミングでついに夏子の尋問が始まった。
『…さて稜君?一つ質問していいかな?』
け、刑事だ…。きっとなっちゃんが本物の刑事だったら"美しすぎる刑事"とかいって世間から持て囃されたことだろう。
「…夏子さん、何でしょうか?」
太郎はチラッと俺の顔を一瞥すると
素知らぬ顔をして目の前に残された
遠慮のかたまり達を黙々と片付け始める。
クソー!!覚えとけよ太郎!!
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