【46】太郎となっちゃんとダメ出しと(後)

『太郎から簡単に話は聞いたんだけどさ、

はるちゃんと旅行に行ってまた何度もプロポーズしたんでしょ?』


「……、はい、しました。しかし何度

求婚しても全て同じ答えであります…。」


太郎の方をちらりと見てみると

"俺は何も聞いてないから気にしないで?"

といわんばかりの表情をし、美味しそうに

料理を食べながらニヤついている。


『稜君?プロポーズってさ、相手に嫌われているのでなければ、きちんと気持ちが伝わること…誠意をみせるね?それが1番だと思うんだけどさ?それ以外にも、大事なものってあるんだよね。何かわかる?』


「え??気持ち以外にも大事なもの?」

俺が思うプロポーズというものは

結婚したい意思を相手に告げることだと

今まで思っていたが…違うのか?!


『…稜君てさ?顔も性格も悪くないのに恋愛に関して、本当勢い!って感じだよね~

思いつかなさそうだからはっきり言うけど

…プロポーズの時、指輪って準備してた?』


「…指輪?え?やっぱり必要なの?」


顔を見合せ、呆れた表情を浮かべながら

笑っている太郎となっちゃん。


『やっぱりね~、そうだと思った!別にね

はるちゃんが宝石欲しがってるとかそういう話じゃないから勘違いしないでね?

この太郎でさえね、私にプロポーズする時

はきちんとした婚約指輪を用意してくれてたんだよ?言葉は笑えたんだけどさ、

"この人は指輪まで用意して真剣に私の

こと考えてくれているんだな"

って思えて凄く嬉しかったんだよね!

はるちゃんの性格はある程度わかるけどさ

やっぱり貰ったら嬉しいと思うよ?』


「…なるほどね~。太郎の話聞かされて

妙に納得したわ。そっか~!何か…凄く勉強になりました!二人共ありがとう!あ…

でも俺、春香の指のサイズ知らないや…。

いきなり本人に聞くのはおかしいよね?」


『うん、それはイヤだね。またはるちゃんに会った時にさりげなく手を繋いで触ってみて?ある程度のサイズはわかると思うよ!

試しに私の指触ってみて?特段ふくよかな

女性とかじゃなかったら、大体こんなものだと思うし。歳はだいぶ違うけどね?』


なっちゃんの指を触ってみた。

少し感触は違うが細さ的には、はるさんと

同じような感じがする。…歳について

突っ込むのは控えておこう。


「まぁ、来月からはいくらでもチャンスあるし、春香寝てる時にでも、こっそり計ることにするよ!なっちゃん、また何かあったら

相談させてね~。」


『『……ん?どういうこと???』』


二人が急に声を揃えて食いついてきた。

あ、同棲すること言ってなかったな…。


「あ、言ってなかったな(笑)春香、今月で

出張終わりになったらしくて、来月から

こちらに戻って参ります♪しかも…

同棲することになりました(笑)」


『『え、ぇぇぇぇー!!!?』』


またもや揃う二人の声。

本当に仲がいいな。


「春香戻ってきて、片付け落ち着いたらさ

うちに招待するから四人で飲もうよな~!」


『稜君!同棲っていうことは、はるちゃんも結婚を意識してくれてるってことじゃん!

も~心配して損しましたよ~。ねぇ太郎?』


その時、がむしゃらに飲み食いをしていた

太郎がようやく口を開いた。


『稜?今宵はなっちゃんから有難いアドバイスを沢山授かったよな?なっちゃんの手まで触りやがって……。』


いきなり喋り出したと思ったら…

まぁ奢れってことなんだろうけど、

こいつもしかしてヤキモチを妬いている?


「ん~、そうだな…。なっちゃんの手に、

お触りしちゃったしな~?よし、ここは

俺様の奢りだ!」


『なっちゃん?聞いた?稜の奢りだから、

じゃんじゃん飲んで食べようね~!明日休みでしょ?僕も休んじゃおっかな~?』


本当に簡単なやつだな。

ここがこいつのいいところでもあるけれど。

やはり友達というのはいいものだ。


店を出ての別れ際。

『稜君、来月から頑張ってよね~?!はるちゃんの引越の手伝いとかあったら手伝いに

行くしさ!太郎がね!応援してるから早く

良いニュース聞かせてよね♪今日は本当に

ご馳走様でした!』


『稜!ゴチになりました~またな!』


本当、なっちゃんイイ人だな。

太郎は八割食べて飲んでるだけだったが…。


「なっちゃん、太郎、ありがとう!また詳しく決まったら連絡するわ~。おやすみ!」


二人と別れ、一人になった帰り道。

自分の考えが甘かった事に気づけただけでも

今夜は有意義な酒の席だったな。

春香が普段から全くアクセサリーを着けていないため今まで気にしたこともなかったが

やはり必要なのか…指輪。


話してばかりで飲み足りなかったので

コンビニへと立ち寄ることにした。

そこで目に飛び込んできたある雑誌…。

有名結婚情報誌と缶ビール二本を買って

帰宅する。


俺のこの行動が後に、はるさんとの

初めての修羅場をもたらすことになるとは

この時の俺は思ってもいなかった…。

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