【長崎県】

【23】異国文化と飛行機と①

時刻は朝7時。いつもは布団の中でゴロゴロと微睡んでいる時間に家を出た私は空港バスに乗り込むと、伊丹空港へと向かう。

本日からの旅の行き先は坂と雨の街、海産物も美味しいらしい異国情緒溢れる長崎県だ。彼とは現地の長崎空港で待ち合わせをしてレンタカーを借りて回る予定。搭乗予定の一時間前に空港についた私は土産物売り場で、彼への手土産として、関西限定の酒のつまみと機内で食べる為の朝食を買った。


幼少期に九州に住んでいた私はよく家族で長崎を訪れた記憶があるのだが大人になってから行くのは初めてだ。

今は無き、【オランダ村】や経営者が変わり盛り上がっているらしい【ハウステンボス】などのテーマパークに行った記憶はあるのだが、【大浦天主堂】や【グラバー園】と言った大人がひっそり?と楽しむような場所に行った記憶はない。


言い出しっぺの私は飛行機に乗り込むと買ってきた観光ガイドを開き1人計画をたてる。東北出身の彼は、九州の土地に足を踏み入れたことがないらしい。幼少期の記憶を頼りにどこまで回れるのか不安だが、久しぶりの彼との旅行が楽しみでしかたない。

大人になった今でも、こんなに大きく重たいものが空を飛ぶこと自体が凄いことだと思っているし、飛行機に乗る時にはいつも


『私から連絡がこなくなったら

死んだと思ってね。今までありがとう。』


などと、メッセージを送り彼を困惑させている。飛行機が落ちる確率など、地上で交通事故にあうよりも遥かに低いとわかっているのに何故か飛び立つ前は不安に駆られるのだ。


機内の安全確認が終わり、管制塔からの離陸許可が出たのか、急にエンジンの回転数があがり音が大きくなってきた。何度乗っても、このエンジン音を聞くと顔には出さないが内心ドキドキが止まらない。窓から滑走路の方を見てみると牽引車が役目を終え、整備士の人達が手を振っている。前にしか進めない大型の乗り物がまっすぐな滑走路に到着する。最終のベルト着用再確認の案内が流れ巨大な鉄の塊は、機体を離陸させるべくスピードをあげて私たちを座席へと押しつけた。


ふわっとした感触を感じ、重力の気持ち悪さに持っていた観光ガイドを閉じると旋回が終わるまで目を閉じる。彼も私よりも早い時間に飛行機に乗っているはずだが、絶叫系の乗り物が苦手な彼は果たして耐えているのだろうか?長崎空港への到着は私が30分ほど早く着く予定だが羽田から出発の彼はもう、空の旅を満喫?しているはずだ。高度を上げ、宇宙に近くなるにつれて濃くなる蒼色の空に滅多に見ることのない白い雲の上側。天空の城でも見えないかなーと思いながらただ窓から見える景色だけに思いを馳せ下界を見下ろすのは本当に最高だ。

こんな素晴らしい景色が見れるのに何故か最後まで新幹線にこだわっていた彼。早く彼に会って、空の旅の感想を聞くのが楽しみで仕方がない。一体私に、どんな言葉をくれるのだろう。


海上空港である長崎空港へ向けて、最終の着陸体勢に入った機体はまるで海へと突入するような角度で滑走路へと向かっていく。いよいよ到着だ。さて、彼との久しぶりの再会、どのようにして迎えようか。

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