住人
柏木 蒼
第1話 始まり
この街に引っ越してきたのは数日前の事だ。親の仕事の都合で、私の家族は引越しが多い。
毎回一軒家を借りる事はせずに、マンションや団地住まいを転々としていた。
今回は転勤とはいえ、2年の予定だと決まっているため、小さめのマンションを借りる事になったのだ。
夏休みになる少し前だったから、まだ学校には1回しか行ってない。
最近は物騒な世の中になったせいか、家でゲームをする子供が増えたせいか、マンションの公園には子供の姿はまばらだった。
友達と遊びに行きたくても夏休みに入ってしまい、学校で交友関係を確立する事が出来なくて暇だ。
母親は早速、新しいパート先を見つけたから、家の中は自分一人だけで静かだ。
時折聞こえてくるのは、外で鳴いているセミの鳴き声や車のエンジン音。それにマンションに住む人の声、上の階で生活している人の足音だ。
「暑い・・・ありえない」
まだ開けてもいない段ボール箱に囲まれながら、クーラーも設置せずに平気でいる両親への不満を心の中で呟く。
絶対におかしいと、冷たい床に寝転んで体を押し付けた。
床に耳を当てると、ドタドタと子供だろうか、走る音が聞こえる。
目を瞑ってその音を聞いていると、楽しそうに笑いながら子供が数人走り回る音が響く。
子供のする事だけれど、近所から苦情が来ないのかなと、どうでも良い事を考える。
(楽しそうな声だな)
どたどた、ぱたぱた、そんな擬音語がつきそうな足音で走り回る子供の足音に、外は暑いから家の中で鬼ごっこでもしているのだろうとそう思った。
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