悪魔demoファンタジー
月乃兎姫
序章-プロローグ-
おしまい、おしまい……っと、どんな物事にも『始まり』があるように『終わり』や『完結』などと言葉は違えども、最後には必ず終焉というものが存在する。
その中でも「おしまい、おしまい……」っと二回繰り返す言葉には、必ず物語がハッピーエンドを迎えることになるという魔法の力が込められているのかもしれない。
ただ一度きりのおしまいでは完結や終わりという意味と同じであるが、二回繰り返すことでどこか他人事のように何事も良い終わり方をするものだと思っていた。
この物語は『勇者が魔王を倒す』という
いわゆる創作小説というものだ。
勇者が魔王を倒す……それは一見どこにでもある、誰もがプレイしたことのある古めかしい物語。
そして俺はこの空を見上げながら、思ったことがある。
「物語に始まりがあるように……いずれ終わりも訪れる。それは物語だけじゃなくて、現実世界でもそうなのではないのか?」っと。
迫り来る死を目の前にして、俺はそんなことを考えていた。
この空が……“あの魔王”とやらが降って来ることが果たしておしまい、おしまい……などと軽い調子で他人事のように口にできることなのだろうか?
世界は今日この日をもって滅ぶことになるだろう。
人類は……いや、この地球自体もいずれは終焉を迎えることになるのは当たり前であり、この世の摂理なのかもしれない。
けれども、何もそんな日は今日じゃなくてもいいはずだ。
……違うか?
そんな無情にも思える理不尽なことが、俺の目の前に臨むこの空いっぱいに広がっている。
周りに居る人々が「もう終わりだ」「おしまいだ」「死にたくない」「これは夢なんだ」などと口々に絶望の言葉を、まるでうわ言のように呟きながら叫んでいる。
誰も「おしまい、おしまい」などと、陽気に2回その言葉を繰り返している者はいない。
きっと誰もがこの状況において、希望ある言葉なんてものは口に出来ないことだろう。
今この場に勇者が現われて魔王を倒す……これがもしゲームの世界ならば、たったそれだけのことで世界が救われることになることだろう。
だが現実は物語のように作られた世界とは違い、そう都合よくは作られてはいないのだ。
これがもし……この世界が、もしそんな小説やゲームのように都合の良い話へと作り変えることできれば、どれだけ幸せなことだろうか。
きっとこの空を見上げている世界中の誰もがそう思っているに違いない。
残された数時間、数十分……下手をすれば数分ほどしか残されていないこの時間を一体どう過ごせばいいのだろうか?
誰かにそう問いかけようとも、答えるものは誰もいなかった……。
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