高校付喪神

@neko253

第壱話 短く鋭い

付喪神とは長く使われた物に魂がやどったものである

この物語の主人公は2人

いや、1人と1神




(もうこんな世界いやだな、いじめられるのもいやだな、ここから落ちたら楽になれるのかな。)

少女は今、通っている高校の屋上にいた。

その名「甘坂 華」高校一年

中学の頃からいじめられ、そのまま高校にあがったのである。

(何が駄目だったんだろう。私は普通に過ごしたかっただけなのに…って後悔するのもいやだな)

屋上から下を覗き込む。春の少し冷たい風が華を通って行った。

(ここから落ちたら他人の迷惑になるかな、せめて他人の役にたってから…いや、私が臆病なだけか)

足が震えているのがわかり、自嘲気味に笑う

(…他の方法も考えよう)

そう思い後ろを見ると、屋上にある物置の裏で何かがあるのを見た。

(なんだろう…誰かの落とし物かな)

そう思い近づいてみると

(布?いや中に何か入って…)

布に巻かれた物を取り出すとテニスラケットより少し短く細い物がでてきた。

(棒…ではないよね、これは鞘みたいだから…刀かな!?)

鞘から抜いてみると錆びている刃が出てきた

(なんで学校にこんなのが…。刀…これだったら他人の迷惑には…)

刃を試しに胸につけてみる

(これを強く押せば…!)

(…なんだあ?俺を使って何しようとしてるう?)

突然低い声が聞こえた

扉を見ても閉じて外から鍵をかけたままだし

周りにも人がいない

「誰!?」

見られた!まずい、先生とかに言われたらいろんな人に迷惑がかかる。そしてあの人達にも知られ…!

ゾッとした

自分をいじめている人達にこんな事がバレたら、おそらく更にエスカレートするだろう

なんとしても止めないと

するとまた

(誰って、今お前が握ってんじゃねえか)

「!? 握ってるってこれ?」

今握っているものは刀しかない、しかし刀が話すことなどありえないのだ。

「刀が話せるわけないでしょ」

混乱はしているが落ち着いて言った

(じゃあ俺が神様だって言ったら?)

「神様はこんなに錆びてない」

(神様を見た事ないくせに言ってんじゃねえよ。)

確かにそうだ

(最近の人間はどいつもこいつも見たことないくせにいるって信じてやがる。まあ実際いるからいいけどよ。)

さらっと神様がいると言った

「本当に神様なの?」

(ああ、本当だとも)

「それじゃあ私のことを…」

助けてと言おうとした。

「華ちゃーん、ここですかー?」

自分の心臓の鼓動がでかくなったのがすぐにわかった

「いたいた!さっさと教室に帰ってお掃除しないとー」

「!本当にい

「嫌だとか言わないよね」

これからやらされるのは掃除じゃない、私の鞄を使った床拭きだ。それを嫌だと言おうとしても、いじめられている相手には言えない。もっとひどいことになるからだ。

「…わかりました」

「うんうん、さき教室もどるから早く来いよ」

そう言って屋上から出て行った

「……」

(なんだよお前、いじめられてんのか)

「見てたでしょ、説明しないといけない?」

(親やらなんやらに言えばいいだろ)

「お母さんしかいないの。優しいから転校とか言ってくれると思うけどあまりお金もないんだ」

(そうかあ…だから俺を使ってか)

「うん、けどそれでもお母さんの迷惑になっちゃうし…うん……ほんとに、本当にどうしよう…」

ボロボロ泣いてしまった

なぜだろう、私は刀相手に安心している。

それはこの刀は私のことを知らないからだ。

そういう結論になった。

(…事情はわかった。ただ俺は何もやらん)

ガクンときてしまった。

私は刀相手に何を求めていたのだろう

「そうだよね、何も知らない相手だもんね」

泣きながら話すと

(泣くなよお、話は終わってねえよ)

「なに?」

(神様ってのはよぉ、ほら、あれ)

「あれ?」

(み つ ぎ も のがないと働きたく無いんだよな)

そんなことを言われても

(何ももってないだろ?俺がもらうのは支配権)

「支配権って何?」

(簡単に言えば乗っ取らせろってことよ、ずっとでは無いけどな。)

それで助けてもらえるのなら…

「いいよ、支配しても」

(交渉成立だな、それじゃあそうだな…髪の毛で我慢してやるから切れ。)

言われた通りに髪を切った。すると切れた髪の毛が刀に吸い込まれていった。

刀は光り、錆はとれ綺麗な刃となった。

(それじゃあ次はイメージしろ)

「何を?」

(俺の姿をよ!誰でもいいから。それが俺の姿になる。そしたら刀にさわれ)

誰をイメージすればいいの?私には友達もいないし、好きなアイドルとかもいない。1番イメージしやすいのは…

イメージをしながら刀に触った

刀はバランスボールくらいの光の玉となり、人の形になった

「これが俺の姿!」

私の目の前にいるのは男用の袴を着ている

『わたし』

持っていた手鏡を刀?にみせると

「お前これ、お前じゃねえか!」

「誰でもいいって言ったでしょ。私には友達も好きな人もいないの。」

「だけど自分って…はあ。まあいいそれじゃあ改めて紹介といこうか!」

「私の名前は甘坂 華」

「俺は『短刀の付喪神』名前は無いから適当につけろ」

「それじゃあ…」

チラッとみると私の髪型とは違う、後ろに縛っている。そして色はだいぶ違う、黒と赤が混じっている

「赤で」

「…お前って本当にセンスがないのな」

「…」

「まあいい、これからよろしくな」

数年ぶりに人の手を握った





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