331話 リズ、秘策を提言する



 <激闘! うさ釣り祭り₍ᐢ。 ˬ 。ᐢ₎ その14>


 <午前3時30分 ふれあいの森どうぶつ王国 イリノモテ野うさぎ飼育所>


 ㋐「ライトオン!」

 ㋞「ちょっと、眩しいじゃない! どうして、いきなり照明をつけるのよ!?」


 アキは突然照明をつけると、彼女に一番近い位置にいるソフィーが、その眩しさに眠りを邪魔されて、文句を言ってきたのでその理由を語る。


 ㋐「それが、私がもう一匹兎をゲットしたからだよ。と言っても、知らない間に増えていたというのが真相だけどね」


 そう言ったアキの足元には、眠る紫音兎に寄り添う金毛の兎がいた。


 ㋐「これは、アリシア様兎だね。きっと、紫音ちゃん兎を追いかけてきたんだね」

 ㋞「ここの兎は、警戒心ゼロのやりたい放題ね…」


 ㋐「まあ、それだけ平和なんだね。私30ポイント」


 現在のポイントはアフラ162P 紫音299P ソフィー254P アキ60P


 <午前5時30分 ふれあいの森どうぶつ王国 イリノモテ野うさぎ飼育所>


 ㋐「夜が明けてきたね」


 地平線から、陽が登り始め辺りを少しずつ照らしていく。


 ㋞「この馬鹿げた企画も、ようやくおわりね。帰って早く寝たいわ…」


 すると、巣穴の方から眼鏡を掛けたのと栗毛の2匹の兎がやってくる。


 ㋛「あれはアキちゃん兎とエレナさん兎だね」

 ㋞「まずは眼鏡を掛けていることに突っ込みなさいよ!!」


 いつの間にか起きていた紫音の言葉に、ソフィーはもっともではあるが、この茶番では意味のないツッコミをおこなう。


 ㋐「きっと、朝だからみんなを迎いに来たんだね」


 2匹が「キュー、キュー」鳴くと、寝ていた兎たちが目を覚まして、その2匹に集まっていく。


 そして、「お世話になりましたぴょん」とばかりに、こちらに一斉に頭を下げると巣穴に帰っていった。


 ㋛「みんな~ さよなら~」


 紫音はそんな兎たちを、手を振りながら見送る。


 ㋐「それでは、現在のポイントはアフラ162P 紫音299P ソフィー254P アキ60Pで、ウサ追いクィーンは、紫音ちゃんとなりました~」


 そして、アキの結果発表により、紫音は主役の意地を見せて、初代ウサ追いクィーンとなった。


 ㋐㋫㋶「おめでとう~」

 ㋞「はい、おめでとう、おめでとう。もう帰って、寝ていい?」


 ㋛「ソフィーちゃん。もうちょっと、祝ってよ~」


 ㋐「うるさいわね! 私はアンタ達と違って、ほとんど寝てないから、もう眠いのよ! 限界なのよ! あの眩しい朝日さえ腹が立つのよ!」


 ソフィーが、寝不足による超絶不機嫌モードになっているので、お開きとなり今回の企画

 <激闘! うさ釣り祭り₍ᐢ。 ˬ 。ᐢ₎>はこうして、いつものようにグダグダで終了を迎えた。


                           <完>



 ######




「ミリアちゃん、その大きな鞄は何かな? いつもは持ってないよね?」


 紫音は目を引くミリアの<女神の大鞄>を指差す。


「それは… その… 明日の戦いで… 必要なモノです……」

「そうなんだ……」


 紫音は不審に思いながらも、リズならまだしもミリアだから心配ないだろうと思い、それ以上詮索はしなかった。


 翌朝―

 紫音達は朝食を食べ終わった後に、アキのゴーレム製造を再開させる。

 その隣では紫音が<女神の望遠鏡>で、敵に見つからないように砦の様子を窺っていた。


「オーガが一杯いるね。大きな個体も3体見えるよ。あとリーベさんのアイアンゴーレムもいるよ」


「やっぱり、リーベも来ているのね」


 望遠鏡で砦を観察する紫音の報告に、同じく望遠鏡を覗くソフィーが反応する。


「今回も私がやっつけちゃうよー!!」


 アフラが右腕をブンブンしながら、元気に宣言した。


「王はいないわね…」

「外にはいないね。中じゃないかな?」

「このままいつものように、部下が倒されるまで中でいてくれればいいけど…」


 ソフィーはそう呟くと、更に偵察を続ける。


「三義姉妹はいるかしら?」

「あの建物の奥で、朝の体操しているのが、そうじゃないかな?」


 紫音は砦の建物の近くで、体操する四人の人影を発見した。


「朝の体操って… 魔族の癖に健康に気を使うんじゃないわよ…」


 リーベ達を人間と知らないため、呆れた表情を見せながら、一応ツッコミを入れるソフィー。


「あはは……。まあ、いいんじゃないかな」


 逆に人間だと解っている紫音は、苦笑いをしてしまう。


「やっぱり、今回はケルベロスちゃんと、ヘラちゃんがいるッスか……」


 リズが溜息混じりに言うと、ジト目は健在だが意を決した表情で紫音達にこう申し出てくる。


「紫音さん! 今回の戦い… ケルベロスちゃんを自分に、ヘラちゃんをミリアちゃんに任せて欲しいッス!」


「えっ!?」


 突然の提案に驚く紫音。そして、当然危ないので直ぐに反対する。


「そんなの危ないから、ダメだよ!」

「大丈夫ッス! 私達にはあの二人を抑え込める秘策があるッス!」


 しかし、リズも譲らない。そこに、ゴーレムを創るアキがリズに味方する。


「やらせてあげても、いいんじゃないかな? 二人だけで三義姉妹の二人を抑えられるなら、他の皆の負担を大きく減らせる事ができて、それだけ有利になるからね」


 アキの言う通り、今回の敵の戦力は過去最大であり、その敵の中でも上位の戦力であるケルベロスとヘラは、本来ならかなりの戦力を割かねばならない。


 だが、リズとミリアだけで抑えることが出来るなら、その分他の敵に戦力を回すことが出来きて、戦いを少しでも有利に出来るからだ。


 ただし、本当に抑えらえるのかと不安が残るのも事実なので、紫音は反対を続ける事にした。


「でも…… もし失敗したらどうするの? その時はリズちゃんとミリアちゃんが、死んじゃうかもしれないんだよ?」


「大丈夫ッス。絶対に失敗しないッス!」


 折れないリズの後ろで、ミリアも決意を秘めた瞳で頷く。


「でも……」

「お願いしますッス!」


 尚も渋る紫音に、頭を下げるリズ。


「もう……。そんなに頼み込むなら仕方がないね。ただし、無理だと思ったら、すぐに逃げるんだよ?」


「はいッス!」

「はい…!」


 リズとミリアが、決意に満ちた返事をすると再びアキがこう意見してくる。


「とはいえ、心配だから私にだけその秘策を聞かせてくれないかな?」

「それなら私も心配だから聞かせてよ!」


 アキの提案に紫音も乗っかってくるが、アキ明は彼女にこう言って聞かせた。


「紫音ちゃんは、ダメだよ。顔や態度、会話から秘策がバレるかも知れないからね。それに、秘策というのは知っている人数が少ないほうが、敵に漏れなくていいんだよ」


「私、信用されてない!」

「されてると思ったのか、この駄目ポニー」


「そうね。ダメ先輩とアフラにだけは教えないほうがいいわね」

「そんな、酷い!!」


 アキとソフィーの辛辣な言葉に、傷つく駄目ポニー。


「はにゃ?」


 そして、呑気なアフラは、何の事か分からず首を傾げる。


「なるほど…。確かに乗ってくる可能性は、高いかも知れないね。試してみる価値はあるかもしれないね。私からクリスさんとユーウェインさんに提案してみるよ」


 リズから秘策を聞いたアキは、その策に可能性を見出して、リズ達の秘策を後押しすることにした。


 そして、アイアンゴーレムの準備ができた頃、ユーウェイン達本隊が次第に到着し始め、デビルロード砦での死闘が徐々に近づき始める。


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