328話 アキ明、作戦会議にて論ずる その2



「というわけで、デビルロード砦の修復が終われば、攻略時に砦の兵力と魔王城からの援軍とを相手にせねばならず、攻略は困難になると考えられます。そうなった場合、長期戦は必至であり、そうなるとこちらの士気が持つかが懸念となります」


「確かに200年前と違って、今のこちらの戦力の半分は冒険者。彼らの士気を維持するのは難しいかも知れませんね」


 冒険者は自由を重んじる者が多く、金を求めている者も多い。だが、国から出せる賃金は少なくそのため兵士と同じように十分ではない賃金で、長期戦に参加する者は少ないであろう。


「なので、短期決戦を狙って修復を終える前に攻略をするべきだと思います。まあ、全ては私の推測なので、判断はお任せします」


 彼女は雄弁に自分の推察を語った後に、最後に自信なさげにそう付け加えた。

 それは仕方がなかった。アキは軍師でも戦術家でもなく只のオタクであり、その知識はゲームやアニメ、漫画などを通して得たものでしかないのだ。


 因みに今回の考察は、<イケメンだらけの戦国大戦(18禁BL)>で出てきた<支城>の知識から組み立てたものである。


「アキ、最後に判断は任せるって保険を掛けるのは… 流石にそれは少し無責任過ぎない?」


 エスリンはそう指摘した。その彼女の指摘通りアキの最後の言葉は、大事な会議で発言しておいて、最後は判断をした者に責任を押し付けるように聞こえたからだ。


「うっ…… 確かに言われてみればそうですね。すみません……」


 アキが謝罪するとユーウェインが言葉を続ける。


「いや、それは違うぞ、エスリン。アキ君に意見を求めたのはこちらであって、例え彼女の意見を採用して失敗したとして、君が責任を感じる必要はない。そもそも意見を聞いて判断するのは、俺達大人の役目であるし、その結果失敗した責任を取るのは俺の役目だ」


 ユーウェインは、アキやエスリン会議に出席する者を見渡しながらそう宣言した。


「そもそも、俺達大人が不甲斐ないばかりに、彼女達のような若い冒険者まで戦わせているんだ。そこに責任まで背負わせるのは、俺達大人があまりにも甲斐性が無さ過ぎるだろう。 だから、アキ君の意見を採用するにしても、責任は全て俺達が― いや、俺が負うべきなんだ」


 ユーウェインの言葉に、他の者達も賛同するように深く頷き肯定する。


「そのとおりですね…。ごめんなさい… アキ… 」


 エスリンはアキに謝罪すると自ら☓マスクをつけて反省の意志を示す。


「責任を取るというのは同意見ですが、隊長だけが取るというのは、それこそ俺達が情けなさ過ぎるというものです」


 タイロンが他の四騎将を見ながら言うと、「そうです!」と口々に続く。

 そこに沈黙を続けていたルークがこう口を開いた。


「いや、責任を取るのは君主としての私の役目だ。お前達が気にすることではない」


 その声音には、強い意志が込められているように感じられる。


「いえ、陛下が責任を負えば、陛下の改革を反対する者達に隙を与えることになります。責任は私1人が取ります。私の変わりには騎士団長もいますし、スギハラもいますからね。まあ、失敗するつもりは無いので、この話はここまでにしましょう」


 ユーウェインは話を元に戻すために再び会議を始めた。

 そして彼は結論を口にする。


「私もアキ君の意見と同じで、修復が済む前に攻めるべきだと考えている。理由も同じで、更に付け加えるなら、我らには長期戦への物資も薬品の備えも心許ないからだ」


「では、今すぐにでも攻め込むと言う事ですか?」


 エドガーの発言にユーウェインは首を横に振った。


「そうだな。直ぐにでも攻め込みたいところだが、準備不足の状態で攻め込んでも返り討ちになる可能性が高い。そこで準備をある程度整えてから攻め込むことにする。具体的には3~5日後に攻め込む予定だ」


 こうして、デビルロード砦攻略が決定して、各クランに参加要請が伝達され出陣の準備が行われる。




 #######


 今回も本編のオチが弱いので、茶番は後半となりました。


 前回までのあらすじ



 <激闘! うさ釣り祭り₍ᐢ。 ˬ 。ᐢ₎ その11>


 前回のあらすじ


 深夜のイリノモテ野うさぎ飼育所で、ウサギが警戒するために照明を消した真っ暗な中でウサギ釣りをする3人。


 紫音の竿に引っ掛かってきたリズウサギは、ミリアウサギを連れてきていて、モフモフ×2であった。


 餌を食べるリズウサギの後ろで、怯えるミリアウサギ。


 ㋛「お姉さん、酷いことしないから、この餌食べて」


 紫音は餌をのせた掌をミリアウサギに近づける。

 暫くミリアウサギはその手を警戒していたが、匂いを嗅いだり紫音を見つめたりして安全だと解ったのか「キュウ」と鳴いて餌を食べ始める。


 ㋛「ミリアちゃんウサギさんが、懐いてくれたよ~」


 紫音は餌を食べ終わったミリアウサギを抱きあげるともふもふすると、ミリアウサギは「キュウ~」と嬉しそうに鳴いて、すっかり紫音に懐いている。


 ㋐「紫音ちゃんに、60ポイント!」


 現在のポイントはアフラ162P 紫音269P ソフィー254P


 紫音がリズウサギとミリアウサギに餌を与えていると、暗闇からもう一匹のウサギが現れる。それは赤毛にツリ目のウサギで「キューキュー」と鳴いて、仲間に何か言っているようだ。


 ㋛「ソフィーちゃんウサギだ~。きっと皆が巣穴に帰ってこないから、心配になって迎えに来たんだよ。本人と同じで優しいね~」


 ㋞「うっ うるさいわね…」


 ソフィーは照れながら、そう突っ込む。


 ㋛「ソフィーちゃんウサギ~。餌だよ~ こっちにおいで~」


 紫音は掌に餌を乗せて、ソフィーウサギを呼び込む。


 ㋞「来るわけないじゃない! その子は仲間を迎えに来たのよ? これでその餌に釣られたら、何しに来たかわからないもの」


 しかし、ソフィーの台詞とは裏腹に、ソフィーウサギは「キュ?」と当初警戒していたが、少しずつ紫音に近づいていく。


 ㋞「ちょっと、ソフィーウサギ! アナタ自分が何しに来たか忘れちゃったの?! 餌に釣られているんじゃないわよ!」


 だが、彼女の突っ込みも虚しくソフィーウサギは、紫音の餌を食べると「キュ~」と鳴いて、彼女に懐いてしまう。


 ㋛「ウサギのソフィーちゃんは、素直で可愛いよ~」


 紫音はツンデレウサギを抱きかかえるとモフモフする。


 ㋞「ちょっと、ソフィーウサギ! アナタ何しに来たのよ! しかも、先輩なんかに懐いて!」


 そのツッコミを受けたソフィーウサギは、ソフィーを一瞥すると「プイッ」っとばかりに頭を背けると、その頭を紫音にスリスリさせる。


 ㋞「腹立つわ、あのウサギ~。自分に似ている分、余計に腹立つわ~」


 そして、その態度にソフィーは複雑な気持ちになってしまう。


 ㋐「紫音ちゃんに、30ポイント!」


 現在のポイントはアフラ162P 紫音299P ソフィー254P


 ㋛「ウサギとはいえソフィーちゃんがデレてくれて、お姉さん嬉しいよ~」

 ㋞兎「きゅ~」


 紫音は三匹の年下ちゃん兎に囲まれて、すっかり満足していた。

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