314話 討伐後の夜
前回までのあらすじ
リズの料理の件で、クリスに失望され半泣きになるソフィー。
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(ソフィーちゃん。運が悪かったね…)
アキが半泣きでクリスの後を追うソフィーの姿を見ながら、他人事みたいにそう思っているとリディアに声を掛けられる。
「アキさん、向こうで少しお話しましょうか?」
「あっ… はい……」
そう話しかけてきたリディアは笑顔であるが、明らかに不機嫌なオーラを放っており、アキはすぐにその事を察知して大人しく従う。
少し離れた場所でリディアは、可愛い妹を笑い者にしようとしたアキに説教を開始する。
その更に先では、ソフィーがクリスの説教を受けている。
その頃、リズは紫音とエレナに教えを受けながら、スープ作りを開始しており、ミリアも料理を教えて欲しいと参加してきて、四人でほのぼのとスープ作りを行い、平和な時間が進む。
だが、その頃―
夜の暗闇に紛れて数匹のグリフォンが、リザード本拠点に降り立つ。
「さあ、表の人間達に気づかれない内に、『魔物精製魔法陣』の『魔力吸収宝玉』を回収するわよ」
夜を待っていた魔王とリーベ、エマが静かにそして迅速に作業を開始する。
話の舞台は再び人間側に戻り、ユーウェインとスギハラがキャンプファイアーを囲みながら、今後の予定を話し合う。
「どうする? このまま勝利の勢いに乗って、オーガ本拠点を叩くか?」
「勢いは大事だが、今の我らにはその余力はない。今回の攻略で薬品の備蓄が心許なくなっているからな。エレナ君の父が頑張って製造してくれてはいるが、初回分は何者かに強奪されてしまったからな」
ユーウェインは、ルークが薬品を取り戻して要塞に輸送している情報を得ていないが、ルークの運ぶ量ではどちらにしても心許なく、一度防衛戦を挟んで有利な場所で相手の戦力を削るのが正解であろう。
「それに、今攻めてもこちらが不利だ。私は向こうから、侵攻してくるのを待とうと思う。そして、数を減らしてから、本拠点に攻めようと考えている」
薬品補充と参加者の休息時間を得る事ができ、それに要塞侵攻軍に三義姉妹とリーベが加わっていても、オーガの本拠点で戦うよりは有利に戦えるため、やはり一度防衛戦を挟んだほうが得策であるかもしれない。
「まあ、ここで焦って無理に攻めて台無しになっては、元も子もないからな」
スギハラの言う通り、一度の敗戦で今迄の勝利が全て水泡に帰す事は十分にありえる。
ここは、無理せず慎重に事を進めるべきというのが、二人の共通の意見であった。
リズのスープを食べ終わりキャンプファイアーを囲んで暫く話をした後、時間だからとクリスとリディアが自分のテントに戻っていく。
「シオン様! わたくしとテントをご一緒に!」
「いいけど、ミリアちゃんも一緒だよ?」
ミリアは紫音の後ろから、不安そうな表情でアリシアを見ている。
「ミリアちゃんが一緒でも構いませんよ」
アリシアは、今回の戦いでミリアと一緒にいる時間が長かったので、彼女と仲良くなっており可愛い妹のように感じるまで、アリシアの中では好感度が上がっていた。
こうして、紫音とミリアとアリシア、リズとアフラ、アキとエレナと別れてテントで眠ることになる。
レイチェルは久しぶりにリディアと一緒に過ごすことにして、ソフィーはクリスと一緒のテントで眠ることが出来た。
(いや… ミリアちゃんは嫌いではないのですが…)
テント内は紫音、ミリア、アリシアの順で寝袋に入って寝転んでいる。
アリシアは年上の威厳を保つために、ミリアに場所を変わってくれとも言えず、折角紫音と一緒のテントにいるのに、側で眠ることが出来ず悶々としていた。
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「茶番の料理企画もソフィーちゃんが普通の料理を作って、面白くもないオチになったのに、紫音ちゃんが空気読まずにあんな発言をしたから、本編までオチのない話になってしまったじゃない!」
「私のせいなの!?」
「それはそうだよ! 紫音ちゃんがあんな発現しなかったら、リズちゃんが激辛のエビチリを作って、登場キャラにどんどんお見舞いして食べる人全員が噎せ返る爆笑エピソードになるはずだったんだよ!」
「どうして、そんな誰も幸せにならない事をするの!?」
「そうしないと、読者さんが満足しないんだよ!」
「そんな事ないと思うよ?!」
「そして、私達の文句にリズちゃんは、『あんな焚き火で作ったら、誰だってこうなるッス! あんな弱い火力で作ったら、炒めるではなくグツグツ煮ることになるッス! エビ煮になるッス!』と、ひとくだりあって、更に面白い展開が生まれるはずだったんだよ!」
「紫音ちゃん。責任をとって、叫びながらあの茂みから荒々しく出てきて、料理を作ってよ!」
「どうして、そんな事をしなければならないの!?」
「いいから早くやれよ、ヒンヌー」
アキの圧力に屈した紫音は、トボトボと茂みの中に入って行く。
「やっ やあぁーーーー」
紫音は手にパスタを持って、茂みより叫びながら走ってくるとグツグツと沸き立つ鍋に放り込む。
「やっ やあぁ~~~~」
そして、照れながら叫びつつパスタを手際よく調理していく。
「ナポリタン完成だよ!」
アキは紫音が作ったナポリタンを、全て平らげると怒りだす。
「おい、ヒンヌー! 何を普通に美味いモノ作っているんだよ! こっちは美味しいモノが食べたいわけじゃないんだよ!」
「もう、何がなんだかわからないよ」
紫音はアキの理不尽な怒りに困惑していると、彼女はさらに理不尽な事を話し出す。
「次から料理企画はなしだね。これは子猫ちゃん(読者さん)達を満足させるために、次回は紫音ちゃんが牛に追われるしかないね」
「どうして、私がそんな目に!?」
紫音が涙目でそう言葉を発すると、アキは人選を考えなおす。
「いや、紫音ちゃんが牛に追われる姿は、悲壮感が強すぎるから笑えないか…。よし、ソフィーちゃんに牛と対峙してもらおう。次回、<ソフィーちゃんが、荒々しく牛に追われる!>乞うご期待!」
「どうして、私が牛に追われないといけないのよ!?」
紫音のナポリタンを美味しく食べていて、油断していたソフィーはツッコミが遅れてしまう。
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