305話 リザードの王、倒せるのか…




 前回までのあらすじ


 商工ギルドの圧力や妨害を受けながらも、爽やかな笑顔が似合う謎の好青年ルーカスの護衛もあって、薬品を作り続けるエレナの父親ゴードンと工房の従業員たち。


 だが、商工ギルド支部長ハーヴェイが、賄賂で味方につけた領主バトラーと禁制品を使った悪巧みを企む。


 そして、ルーカスが薬草採りの護衛で従業員と山に向かった所で、遂に領主達の魔の手がゴードン達を襲う!


 無実の罪で捕らわれるゴードン達!

 しかし、そこに颯爽と助けに現れたルーカス


 なんと彼の正体は、現国王ルークであった。

 そして、お約束の後に徳○新○助ばりの殺陣で見事悪党達を一網打尽にする。


 こうして、村には平和が戻ったのであった。




 ㋞「ちょっと! 珍しく前回までのあらすじを真面目にしているじゃない! どうしたのよ!?」


 真面目な前回までのあらすじに、思わずツッコミを入れてしまうソフィー


 ㋷「ツンデレお姉さんのツッコミのせいで、真面目ではなくなったッス」


 ㋐「しょうがいないよ。ソフィーちゃんは、ここ3話ほどツッコミできなくて、欲求不満だったからね。大の○ッ○○大好きっ娘だからね」


 ㋛「○ッ○○大好きっ娘って、なんか卑猥に見えるね///」

 ㋐「水玉コラみたいなものだね。プレグナンツの法則って、言うらしいよ」


 ㋞「ツッコミだから! 卑猥な隠し方するんじゃないわよ!」


 #####



「ちょっと、どうするのよ?! リザードの王には魔法も物理攻撃にも耐性があって、こちらの攻撃が効き辛いじゃない! しかも、向こうは身長約7~8メートルほどの巨体なのに尻尾を利用した移動方法で、素早くて回避力も高く、その強力な爪と牙、そして尻尾による攻撃力も高いし、まともに戦えるのはシオン先輩とウチの団長くらいじゃない! このままじゃあ長期戦必死よ! どうしたらいいのよ!?」


「ソフィーちゃん、どうしたの!? 突然、説明口調で3話前の状況説明なんか始めて!? できれば、もう少し短めに纏めて欲しかったけど… でも、ありがとう!」


「お二人共、突然どうしたのですか!?」


 急に説明キャラと化したソフィーとアキの状況説明セリフに、正統派メインヒロインキャラ(自称)のアリシアには、そのような平凡な突っ込みしか出来なかった。


「それが… 自分でもわからないけど、言わなければいけないような気がしたんです…」


 自分でも何故あのようなことを、言ってしまったのか不思議がるソフィー。


「何か見えざる力によって、強いられた感じですね…」


 そして、アキも神妙な表情でそう語るが、一同は”いや、アナタは解ってやっていましたよね”と心の中で突っ込んでいた。


「あのリザードの王を倒せるのでしょうか?」


 ソフィーはアリシアが不安な表情でそう尋ねるので、確信は持てないが自分の意見を述べてみる。


「今の所、ダメージを回復する魔物はいないから、時間をかければ倒せると思うけど… 問題は人間側があの強敵の圧力に、長時間耐えきれるかどうかよね。おトイレとかあるし…」


 お嬢様のソフィーは、最後のフレーズを少し恥ずかしそうに言ったので、それを見ていたアキは思わず萌えてしまう。


 因みにおトイレ問題は、【女神のお手洗い】というこちらの世界で言う仮設トイレのような物があり、そこで用を足すと女神の不思議な力によって、女性にも優しい防音消臭機能付き、排泄物は大地へと還る仕様になっており、馬車で運ぶのが一般的である。


 個人用として、【女神の携帯お手洗い】があり、こちらも女性に優しい防音消臭機能付きの優れモノであった。


「昔のMMORPGではレイド戦で1時間超えはザラだったらしいから、なんとかなるんじゃないかな? まあ、私はそんな長期戦に参加したことはないけどね」


「アキさんったら、またワケのわからない言葉を使って… そのMM何とかやレイ何とかでは、そんな長期戦を戦っていたの? アキさんの国の冒険者はタフなのね。そんな話、団長からは聞いたこと無いけど…」


 元の世界の事を隠すために、紫音とアキはスギハラと同じ東方国出身となっており、そのような長期戦が戦えるタフガイ達がいれば、スギハラが知らないはずはない。


「えっ!? あっ それはその……    そう! テーブルトークバトルだよ。サイコロを振って、出た目が与えるダメージになるんだよ。だから、敵の設定耐久値によっては、一時間を越すこともあって…」


「何その遊び!? 一時間サイコロを振り続けて、何が楽しいの!? 何の意味があるの!?」


 アキが誤魔化すために咄嗟に考えた遊びに、ソフィーの的確なツッコミがきまり、アキはぐうの音も出なかったが、そこは舌戦(屁理屈)のプロのアキである。


「興味のない人間から見れば、全ての趣味は面白くなくて、無意味なものに感じるんだよ!!」


 アキの自信に満ちた表情と声に、ソフィーは思わずその暴論に納得してしまい、”たしかに!!”という表情をしてしまい、彼女の嘘の遊びを信じてしまう。


「まあ、おトイレ問題は置いておくとして、あの強敵との戦闘からくる精神的消耗を長時間耐えられるかってヤツだよね。他のベテラン冒険者達さんはともかく、紫音ちゃんやリズちゃんが持つかどうか… 紫音ちゃんだからね… まあ、無理だね…」


 アキの紫音への低い評価に、ソフィーはともかく紫音全肯定のアリシアとミリアまで黙ったまま反論しなかった。


 だが、物理と魔法、両方に耐性のある敵に時間を掛ける以外の選択肢は、今のところ無いのが現状である。


 その事に冒険者達も気付き始めたのか、士気も下がり始め威勢のよい声もすっかり無くなり、沈黙の時間が長くなっていた。


「しかし、このままでは今デイノスクスと戦って有効な攻撃をおこなっている紫音ちゃんとスギハラさん、それにリズちゃんの精神が消耗して恐らく持たない。どうすれば…」


 アキが現状を打破しようと手立てを考えていると、


「もぐもぐ… 呼んだッスか? もぐもぐ…」


 いつのまにか前線から魔力補給に戻ってきたリズが、バナナを食べながら近づいてくる。


「リズちゃん もごもぐ… バナナもう一つ食べる? もぐもぐ…」

「いただくッス!」


 アフラがそう言って、リズにバナナを差し出すと彼女はバナナを一本受け取り、それを頬張り始めた。


 どうやら、先程のバナナもアフラから貰ったモノのようである。


「ミリアちゃんに、アリシア様もどう~? もぐもぐ… 」


 二人が遠慮するとアフラはソフィーに勧めてきた。


「ソフィーちゃんも― 」


「この能天気娘ー!! この緊迫した時に、呑気にバナナなんて、食べてんじゃないわよ!!」


 アフラが勧め終わる前に、ソフィーのお怒りツッコミが彼女に炸裂する。


「だってー、まだミトゥトレットインパクトがあと一回残っているから、使うっていたのにー、副団長が待機してなさいって言うだもん~ それで、暇だからバナナ食べてたんだよー」


 ソフィーのツッコミに対して、少しふてくされながら反論する彼女のその右手には、特殊能力解放状態のミトゥトレットが装着されており、宝玉はまだ輝きを放っていた。


 アキはそのミトゥトレットを見るとハッとした表情になり、次にミリアを見てその後にソフィー、リズ、紫音を見た後に、いつもと違い神妙な面持ちになる。そして、口元に右手を当てると、ブツブツと何かを言いながらそのゲーム脳をフル回転させ始めた。


「そうか…… そういうことか… 」


 そうしている間に、彼女の頭の中で点と点が線になり始める。


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