201話 次の戦いの準備
前回のあらすじ
紫音達は遂に要塞に侵攻してきたオークを撃破した。
そのあと休憩中に年上お姉さんに甘えながら、紫音は自分の中に”年上のお姉さんに甘えたい”と”年下の女の子に甘えて欲しい”という、相反する感情を持ってしまう。
昔の偉い人が言っていた“人間の心には、互いに矛盾したふたつの感情がある”と……
人の心に”善と悪“があるように、きっと誰しもが心の中にこのような矛盾を抱えているに違いないと思う紫音であった。
#####
一悶着あった後、リディアは紫音に本来の目的である話を始めた。
「皆さん、今回我々は被害を最小限に抑えて、オークを撃退することが出来ました。そこで、以前からの計画通りに、二日後にオーク本拠点侵攻作戦を決行します。皆さんには是非参加して貰いたいのです」
彼女の作戦参加要請に、紫音は二つ返事で答える。
「もちろん参加します!」
「そう、それはよかったわ。では、3日後までに遠征の準備を済ませていてね」
その返事を聞いたリディアは満足そうな笑顔でそう言うと、彼女は紫音達の元を去って行った。紫音が3日後のオーク本拠地侵攻作戦に向けて、気合を入れているとアキがやってくる。
「アキちゃんいい所に、実はね…」
「大丈夫、一部始終見ていたからね」
紫音の話に、アキは皆まで言うなといった感じで返してきた。
「それなら、話は早いね。アキちゃんもオーク本拠…」
紫音がそこまで話すと興奮したアキが、彼女の話を遮って話をしてくる。
「まさか、紫音ちゃんの方からネタを提供してくれるなんてね」
「え? 何のこと…?」
紫音はこの親友は何を言っているんだと思いながら、アキの話の続きを聞く。
「優しさと厳しさを兼ね備えた年上の弓使いに諭されながらの絡み…。アリだよ、紫音ちゃん!」
「私とリディアさんをネタにするつもりなの!?」
紫音はようやくアキの話を理解して抗議する。
アキは紫音の両肩に手を置いて、目を輝かせながらこう言った。
「私は今日ほど紫音ちゃんが、親友で良かったと思ったことはないよ!!」
「今まで思ったことなかったの!?」
紫音が幼馴染のまさかの発言に、少しショックを受けつつツッコミはちゃんと行なう。
「冗談だよ、紫音ちゃん。相変わらず、反応がかわいいな~」
この世界で再開した時に涙を流しながら喜びあった事から、親友と思っていない発言は冗談だとはわかっていたが、紫音は冗談でもアキにそういう事は言って欲しくなかった。
「ごめんね、紫音ちゃん。私達は今までもこれからも親友だよ」
そのため珍しくむくれた顔をする紫音に、アキも察して彼女の両手を握ると笑顔でそう彼女に伝え、紫音も笑顔で頷く。
(黒髪美少女同士のイチャコラ、キマシタワー!!)
レイチェルは、今回も主人の命令”シオン様が、他の女の子と仲良くするのを邪魔するように。特にアキさんとソフィーさんとは”を忘れて、キマシタワーを楽しんでいた。
「それで、アキちゃん。オーク本拠点侵攻の話だけど……」
「それについてだけど……」
アキは紫音に自分の考えを話し始める。
アイアンゴーレムは製造に時間がかかるために、今回彼女は1日早く本拠点近くまで行って、製造しようと考えておりその護衛を紫音達にして欲しいと頼んできた。
「私達だけでは、危険かもね。お姉さまに相談してみたら?」
話を聞いていたソフィーがそう言うと、紫音達はさっそく要塞から撤退準備をしていたクリスに相談する。
「そうね、いい考えだとは思うけど……。準備に時間が掛かるから、クラン全員での支援は無理ね。アフラとノエミ、あと数名ってところね……」
「アリシア様の許可が出れば、私も一緒に行こう」
彼女はできるだけの協力を約束し、レイチェルも条件付きで同行を申し出る。
こうして、紫音達は2日後の打ち合わせをした後に、ミレーヌの屋敷に返ってくると屋敷には、ミレーヌとアリシアが一同の帰りを首を長くして待っていた。
「シオン様~、無事に帰ってきて良かったです。この金属製のカップはシオン様の危機を伝えてくれないので、状況が解らずに心配していたのです」
アリシアはいつものように素早く近づくと、紫音が反応するよりも早く彼女の手を握って心配をしてくる。紫音はいつものように手を振りほどこうとしない。
それは、アリシアの腕力のほうが強いので、振りほどけ無いことを学習したからであった。
「アリシア、心配してくれてありがとう」
レイチェルは二人が会話を終えるのを待つと、さっそくアリシアに先程の話をする。
アリシアはその間自分を護衛してくれるミレーヌと話し合って許可を出す。
アリシアは名残惜しそうに紫音に別れの挨拶をすると、レイチェルと共に屋敷から帰っていった。こうして、紫音達は戦いの疲れから早めに就寝することにする。
紫音達が明日の出発の為に、ミレーヌが手配してくれた遠征用の馬車の荷台に、荷物や物資の積み込み作業を行う。作業中にリズが紫音に話しかけた。
「シオンさん、女神武器の副作用の筋肉痛は大丈夫ッスか?」
リズの質問に紫音は、体のあちこちを動かしながらこう答える。
「うん。前回もそうだったんだけど、大丈夫みたい。何回も使っているから、体が慣れたのかもしれないね」
紫音の言う通り、ここ数回の発動で彼女の体はすっかり特殊能力発動の負担に慣れていた。
ただ、内臓までは負担にまだ対応できていないので、負荷がかかりすぎると血を吐いてしまう。
「そうなんッスか。では、私が次の戦いで特殊能力を使っても、筋肉痛にならないかもしれないッスね?」
「そうかもしれないね」
リズの意見に紫音はこのように相槌を打つ。
だが、この紫音の安易な相槌が後にリズに不幸をもたらすことになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます