195話 第二回前進開始!
前回のあらすじ
今回は我、二代目の魔王ビイエ・ルシファーが前回のあらすじをしよう。
とはいえ、前回ほぼ話は進んではおらぬので、正直語ることはない。
この調子では我の前に現れるのは、いつのことになるか解らぬな。
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紫音はスギハラには四天王と戦うのは大丈夫と答えたが、回復しながら四天王と戦うことを考えていると、余計なことを考えてしまってどんどん不安が大きくなってくる。
(悲観的に考えてはダメなのはわかっているけど……、どうしてもネガティブなことを考えてしまう……)
紫音が不安な表情で考え込んでいると、ソフィーが近づいてきてこう言ってきた。
「何不安そうな顔しているのよ! あ、アナタには……その……わ、私が…私達がいるんだからね!」
「ソフィーちゃん…、ありがとう。そうだね、私には皆が居るね!」
ソフィーの久しぶりのツンデレ心配発言に紫音は、自分は1人では無いことを思い出し戦への不安が消え去る。
「ツンデレ乙!!」
そして、その様子を見ていたリズとアキは、声を揃えて突っ込んだ。
「そこっ、うるさいわよ!」
ソフィーは二人に照れて顔を赤くさせながら噛み付く。
回復の済んだ人間側は遂に堀を出て打って出る。
「お前ら、奴らにここに来たことを後悔させてやれ!」
タイロンの鼓舞の後に、スギハラが出撃の号令を出す。
「オーク共を殲滅しに行くぞ!」
「オーーーー!」
スギハラの号令に参加者は、声を上げて気合を入れると再び堀の向こうに打って出る。
ソフィーのツンデレに癒やされた紫音も、号令とともに出ていく。
人間側はまず、遠距離部隊が射程距離から魔法と弓矢で一撃を与える。
すると、オーク四天王デュロックは命令を出す。
「デテキタカニンゲンドモメ、オトナシクヒキコモッテイレバイイモノヲ。カゴシマ、ブタイヲヒキイテ、カエリウチニシテコイ!」
オーク達の前衛職が、デュロックの命令で副官カゴシマを先頭に突進してくる。
突進してきたカゴシマはスギハラを見つけると、前回の続きとばかりに勝負を挑んできた。
「ワレハカゴシマ、ニンゲンのサムライ、イザジンジョウニショウブ!」
スギハラに突進してくるカゴシマに、そのスギハラの背後からノエミが弓と矢を構えながらサイドステップで右側に飛び出し、カゴシマに不意打ちする。
「ダブルハイオーラアロー!」
ノエミは飛び出したと同時に、弓につがえた2本のオーラを纏わせた矢を放つ。
至近距離での射撃のため、2本の矢はバラける前にカゴシマを捉えるが、カゴシマは何とか反応して野太刀で一本を切り払うがもう一本は左肩に命中してダメージを与えた。
「オノレ、トビドウグトハ、ヒキョウナ!」
カゴシマがそう言って、彼から見て左側に飛び出したノエミの方を見ると、その一瞬の隙をついて、アフラがオーラステップで急加速してカゴシマの右側から攻撃を仕掛ける。
だが、流石は副官であるカゴシマはそのアフラに反応して、野太刀をアフラの攻撃に合わせるが相手が悪かった。
「ミトゥトレット・インパクト!!」
アフラはその動体視力と身体能力でカゴシマの野太刀にミトゥトレット・インパクトを叩き込み粉々にする。
「ナント!?」
そして、そのまま最後のミトゥトレット・インパクトをカゴシマの体に叩き込んだ。
「ミトゥトレット・インパクト!!」
カゴシマは腕を盾にするが、ミトゥトレット・インパクトの威力は凄まじく盾にした腕ごと体を半分に吹き飛ばす。
「ムネン……」
体が半分になったカゴシマは、そのまま魔石に姿を変えた。
「これでまたしばらくは、右腕の感覚がなくなって使えなくなったよ……」
ミトゥトレット・インパクトを使い切ったアフラは、左手で右手を持ちながらそう呟く。
「でも、おかげで副管を倒すことができたわ。アフラ、アナタは下がっていなさい」
クリスがアフラに近づいて、後方に下がるように促す。
「大丈夫だよ、副団長! まだ、左腕と両足が使えるよ!」
「しかし……」
「オークはまだいっぱい居るんだから、戦わないと!」
彼女の言う通りまだオークの数は多く少しでも戦力は欲しかった。
クリスは迷った挙げ句、無理をしない事とノエミに援護するように指示して前線で戦うことを許可した。
「カゴシマガヤラレタカ、ナラ、オレミズカラコロシテヤルゾ、ニンゲンドモ!」
副官カゴシマを撃破されたデュロックは、自ら前線に出撃する。
その頃、もう1人の副官ムコタはレイチェルとタイロンの二人と戦っていた。
「タイラントブレイク!」
タイロンがオーラを宿した大剣を、左薙、袈裟斬り、唐竹の三連続で攻撃するが、ムコタは両手で持った槍で、しっかりとガードする。
そこに、レイチェルが背後から一撃を加えた。
「ブレイクスマッシュ!」
ムコタは反応して回避しようとするが、避けきれずにダメージを受けるが、当てることに重きを置いたブレイクスマッシュでは致命傷には至らなかった。
これは大技を使わずに確実に当てて、ダメージを蓄積させて撃破する二人の作戦である。
「オノレ、ニンゲンメ!」
ムコタもそれがわかっているために焦りを覚えたが、四騎将クラス二人相手には副官クラスではどうしようもなく、二人の連携にダメージを蓄積していく。
ムコタは周囲のオークに援軍を期待したが、周りのオーク達は他の人間と戦っており、ようやく近づいてきたオークはリズやリディアに頭を吹き飛ばされて、魔石に姿を変えていく。
とはいえ、体力はムコタのほうが上であるために、耐久値を削り切る前にこちらの体力が尽きてしまうと考えたレイチェルは、女神武器の特殊能力を発動させる。
「女神の祝福を我に与え給え!」
そう祈りを捧げてから、ゲイパラシュにオーラを込め特殊能力を発動させる。
レイチェルの特殊能力発動を見たタイロンは、オーラステップで加速して一撃を放とうとするが、ムコタはその突進に合わせるように槍で鋭い突きを放ってきた。
タイロンは間一髪で、左篭手で槍の口金部分を内側から外へ弾いて直撃を防ぐが、弾かれた槍はそのままタイロンの左肩アーマーを貫いて、彼の左肩の筋肉を少し抉って傷を負わせる。
「ぐっ!?」
「でやああああ!!」
だが、タイロンは肩の負傷を意に介さずに、すぐさま右手と体の捻りだけで、オーラを溜めた大剣をムコタ目掛けて横薙ぎに振るう。
ムコタは槍を慌てて引き戻そうとするが、間に合わずに槍を持っていた左腕にタイロンの大剣があたって、左腕を失うが右腕にはしっかりと槍を握っている。
そこに、レイチェルがムコタの後方から急加速でやってきて、脇構えから横薙ぎを放つ。
「アクセルブレイクスマッシュ!」
オーラの噴射で加速したハルバードは、ムコタが反応して振り向いて槍で突くよりも早く槍を持った右腕に命中し、腕を切断してそのまま胴体の右部分を切り裂く。
レイチェルは、右側まで振り抜いたハルバードをすぐさま右上に振り上げると、そのまま袈裟切りをムコタに叩き込む。
レイチェルの体の捻りとオーラの噴射で加速したハルバードの戦斧は、ムコタの左肩から胸のあたりまで切り裂き大ダメージを与える。
「グオオオオ!!」
ムコタは断末魔を上げると、魔石に姿を変えた。
レイチェルはムコタの撃破を確認すると、タイロンに駆け寄り傷の具合を確認する。
「タイロン、大丈夫か!?」
「ああ、これくらい高級回復薬を飲めばすぐ治る」
レイチェルの心配に、タイロンはそう答えて高級回復薬を飲み始めた。
「筋肉先輩は頑丈だけが取り柄ですから、それくらい大丈夫ですよ。心配して損しました」
近くで神聖魔法を使って戦っていたエスリンが、傷の心配をして近づいてきてそう話し掛けてくる。
「うるせーぞ、エスリン! ヒヨッコは他人の心配をせずに、自分の心配でもしていろ!」
タイロンは彼女にそう檄を飛ばす。
「せっかく、心配してあげたのに!」
エスリンは少しふてくされた顔で、また戦闘に戻っていった。
レイチェルは二人のやり取りを見て、少し笑うのであった。
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