194話 次に備えて



 前回のあらすじ


 前回お二人が本編に出たので、今回は私エレナ・ウェンライトがおこないます。

 私はまだまだ新米回復役なので、流れ矢などが飛んできて危険な前線での回復はできないので、安全な後方で回復をおこなっています。

 そのため、今までもほとんど出番がありません。

 なので、いつか成長して前線で回復役として、シオンさん達と一緒に戦いたいです。


 前回のあらすじですが、リズちゃん達の活躍のおかげでシオンさんは、「くっころ」なるものから無事助け出されました。

 そして、これから再び打って出るそうです。


 ######


「ところで、シオン先輩。オークに囲まれていた時に、アナタの側に誰か居たように見えたのだけど?」


 ソフィーは、高級オーラ回復薬を飲んでいる紫音に思っていたことを尋ねる。

 彼女は前に立ちふさがるオーク達の隙間から、地面に倒れている紫音の側に何者かが立っているのを見たが、彼女の元に辿り着いた時には誰も居なかったので、自分の見間違いだったのか尋ねることにした。


「たぶん誰か私の側に居たと思う……。その人が私を守ってくれたみたいなの」


 紫音はそう答えて、さらにこう続けた。


「私は動けなくて姿は確認できなかったけど、あの声はきっと年下ちゃんだよ! おそらくアンネちゃんよりも年下の11歳以下の幼女ちゃんだよ!」


 紫音がキリッとした顔でそう答える。


「あーどうやら、私の見間違えだったみたいね…。戦場に幼女なんているわけないもの……。しかし、幼女ってアナタ……」


 すると、ソフィーは呆れた顔で、そう言って紫音から離れていった。


「あれ!? 信じていないの? 本当だよ!? ノエミちゃんは信じてくれるよね?」


 紫音に尋ねられたノエミは、彼女をジト目で無言のまま暫く見ていると、そっぽをむいてどこかに行ってしまった。


(私のイーグルアイにも、フードマントを着た小柄な人物が立っているのが見えた…。それに、シオンさんの周りには魔石がいくつか落ちていた…。誰かが居たのは間違いない……)


 ノエミは人と話すのが余り得意ではないために、紫音に咄嗟に話を振られてどう話そうか考えていたが、考えが纏まらずに歩きながら頭の中で先程見た状況を整理することにした。

 そして、ようやく話す事が纏まったので、ノエミは紫音の方を見る。


「ミリアちゃんとエレナさんは信じてくれるよね?」


 ミリア達に話しかけていたので、ノエミにその会話に割って入れるほど『コミュ力』はないので、彼女はそのままソフィー達の居る所に歩いていった。


「はい…、私はシオンさんの言うことを信じます…」


 ミリアからは期待通りの答えが返ってくる。


「ありがとう~、ミリアちゃん!」


 紫音は相変わらず可愛い反応をしてくれるミリアに抱きついて喜ぶ。

 ミリアは紫音に抱きつかれて顔を赤くしている。


「私も信じますよ、シオンさん」


 今回は戦いが順調に進んでいるため負傷者も少なく、エレナも少し余裕があるので会話に参加することができた。


「シオンさん、私には聞かないッスか?」


 リズが紫音をジト目で見ながら、彼女に逆に質問してくる。


「リズちゃんも、信じてくれるの?」


 紫音は、リズはどうせ信じてくれないと思ってあえて聞かなかったが、彼女の方からそう質問してきたので、聞いてみることにした。


「それは、幻聴ッスね……」


 リズはジト目に呆れたといった感情を込めてそう言ってくる。


(やっぱり、信じてくれない…)


 紫音がその返事に心の中でそう思っていると、後ろから肩を叩かれ振り向くと、そこにはアキが立っていた。


「私にも聞いてよ、紫音ちゃん」


 紫音は怪訝な目でアキを見てこう言う。


「どうせ、アキちゃんも信じてくれないんでしょう? わかっているんだからね!」


 アキは首を振って、紫音にこう言った。


「わかるよ、紫音ちゃん。私も凄くリアルにイケメン達の絡みを想像できる時があるから…」

「アキちゃんの妄想と一緒にしないでよ!!」


「妄想とは失礼だよ! これは漫画の為の脳内シミュレーションだよ! リアルな描写をするためには必要な事だよ! 作品のクオリティの為に強いられているんだよ!」


 紫音はアキの妄想と一緒にされて怒るが、アキもそれっぽい言葉を並べて自分の妄想を高尚なものだと言い訳してくる。


「あー、シオン君。話いいかな?」


 スギハラが話に割って入ってきた。


「あ、はい。なんでしょうか、スギハラさん?」


「これから、再び堀を越えてオークを殲滅しに行こうと思う。君には四天王の1人を相手してもらいたいと思っているのだが、もう一度女神武器の特殊能力を発動できるだろうか?」


 スギハラの問いかけに紫音は、女神武器に付いている宝玉を見ながらこう答える。


「たぶん、もう少しすればオーラの充填ができると思うので、大丈夫です!」


 その答えを聞いたスギハラは、安堵した表情でこう言った。


「そうか、それなら君に四天王の1人を頼む。もちろん、援護も付ける」

「はい、がんばります。」


 紫音の返事にスギハラは、すまないという様な顔つきで彼女に話す。


「すまない、若い君にこの様な危険な役目を……」


「大丈夫ですよ、スギハラさん。私には女神様の加護がありますから」


 紫音は申し訳無さそうにしているスギハラに笑顔で答えて、これから行われる戦いの準備を始める。


「アリシア様、お茶のおかわりはいかがですか?」

「はい、お願いしますエルフィさん」


 エルフィの伺いにアリシアが答えた。


「…………」


 エルフィが、紅茶を注いでいるのを黙って見ていたアリシアは突然そう声を上げる。


「わたくしとしたことが、またこんなくだらない理由で、本編に出てしまいました!!」

 すると、アリシアは突然そう声を上げる。


「ひぃ!?」


 エルフィはその声に驚く。


「何か解らないけど、アリシア様を怒らせてしまった……。私のキャリアは、もうおしまいだわ! こんなことなら、田舎の役所で大人しく公務員をしておけばよかった!! 上司は予定をすっ飛ばすし怖いし都会も怖い、もう田舎に帰る……」


 そして、半泣きになって錯乱し始める。


「アリシア様、エルフィはこう見えてメンタル弱いのです。あまり、驚かせないでください。エルフィ大丈夫だ、アリシア様は別に怒っていない」


「本当ですか…?」


 エルフィはアリシアを恐る恐る見ると、アリシアは申し訳ないと言った表情で慌ててこう答えた。


「はい、申し訳ありませんでした、エルフィさん。ただの、独り言です……。驚かせてしまって本当に申し訳ありません…」


「よかったです……」


 それを聞いたエルフィは安心して席に戻っていく。


 その頃、リーベ達は隠れ家で原稿を描いていた。


「真悠子、もし締切りに間に合わなかったら、罰として『フェミニース教会八十八ヶ所巡礼』してもらうわよ!」


 魔王がリーベこと真悠子に罰ゲームを宣言する。


「どうして、締切りに間に合わないと罰ゲームで『フェミニース教会八十八ヶ所巡礼』に行かなければならないんですか!? おかしいですよ!」


 フェミニース教会八十八ヶ所巡礼は、最短で行なっても一週間では済まない過酷な旅であり、彼女が反論するのは当然である。


「社会人にとって、締切りは絶対なのよ! 守らなければ罰は当然よ! 間に合わせればいいのよ」


 リーベの反論に対して魔王は、社会人の掟(?)を語る。


「罰ゲームみたいになっていますけど、教会巡りは本来とてもありがたいことですよ……」


 敬虔なエマは、教会巡りを罰ゲームみたいに言っている二人に対して、少し怒りながらそうツッコミをいれた。




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