192話 ジト目到着



 前回のあらすじ

 今回は前回本編に出て権利を失ったアリシア様に変わり、前回出番のなかったわたし山川亜季があらすじの担当をします。


 紫音ちゃんはソフィーちゃん達にいい所を見せようと、投石機を1人で破壊したまではよかったのだけど、調子に乗ってオーラを使いすぎてオーク達の真ん中で、身動きが取れなくなるという最悪の事態になりました。

 果たして紫音ちゃんは、このままオーク達に無抵抗な所をR-18展開にされてしまうのか!?


 ######


「もう、こうなるのはわかっていたのよ!」


 ソフィーは、紫音を助けるべくオークの攻撃を回避しながら彼女の元へ向かうが、攻撃が激しくなかなか先に進めない。


「このままじゃあ、紫音ちゃんがオークに「くっころ」されてしまう!」


 アキはそう心配したが、それは杞憂であった。

 何故なら、この世界の魔物は生物ではない為に食欲も性欲もない、その為紫音が「くっころ」になることはなく、ただ殺されるというグロテスクなR-18展開になるだけである。


 地面に倒れた紫音にオーク達が迫り、そのうちの一体が紫音の体の横に立ち槍を上に振りかぶって、紫音の体めがけて槍を突き下ろす。


(私……、また…死んじゃうんだ……)


 紫音が死を覚悟したその時、紫音に槍を突き刺そうとしたオークは突然何者かの攻撃を側面から受けて、派手に横に吹っ飛んだ。


「え!? 何!? 何が起きているの!?」


 まだ体に力が入らないので、紫音はうつ伏せのまま首だけをなんとか動かして、周りの状況を確認しようとする。だが、見える範囲は首の動く自分の肩から前方だけなので、何が起きているかはわからない。


 紫音が状況を確認できずに慌てていると、自分の足元に何者かの気配を感じる。

 そして、その何者かが独り言を呟き始めた。


「やれやれ…、女神に選ばれた者を倒すのが我の役割であったのに…。まさか、守ることになろうとは……。まあ、仕方あるまい。此奴を今ここで死なせるわけにはいかんからな……」


 突然姿を現したこの小柄な人物は、黒いフードマントを着ているために何者かはわからないが、その小柄な体でオークを蹴りだけで軽々と吹き飛ばした。


 フードマントの人物は、紫音の足元から先程槍のオークが立っていたところまで来ると、マントの中から先端に宝玉の付いた杖を取り出す。杖は前後に伸びて身長と同じくらいになり、その杖に魔力を込めると宝玉に魔力が凝縮され生成された大きな刃が現れた。


 魔力の刃が付いた杖の形はまさしく大きな鎌で、その小柄な体には不釣り合いであった。

 そのフードマントで大鎌を持つ姿は死神を連想させる。


 この魔法の刃はケットさんの魔力を凝縮して造り出す、魔力の爪”ストライク・ニャーニャー・クロー“と同じ仕組みである。


 その大鎌を両手で持って水平に構えると、紫音と自身を囲むオーク達に向かって、大鎌を水平に振るいつつ体を一回転させた。


「スピン・サイズ!」


 大鎌はフードマントの人物を中心に円を描く軌道で振り抜かれ、周りにいたオーク達は一瞬で胴体を横一文字に切断され魔石に姿を変える。


「お前達は立派に役割を果たした。再び無に還るがよい……」


 鎌を肩にのせて、フードマントの人物は魔石となったオーク達にそう呟いた。

 残るオーク達は警戒して、二人から距離を取って隙を窺っている。


(喋り方は仰々しいけど、この可愛い声は年下ちゃんに違いない! ぜひ、姿を見たい!)


 そして、紫音は地面に倒れながら何とか姿を見ようとするが、体にまだ力が入らずに心のなかで無念の涙を流す。


 一方ソフィー達からは、オーク達が壁になっていて一連の出来事が見えていない為に、何とかそのオーク達を突破して、紫音の元に辿り着こうと必死に戦っていた。


「スピン・ブレード!!」


 ソフィーは体を捻って、その勢いを利用してブレードでオークに大ダメージを与えて、魔石に姿を変化させた。


 だが、紫音の元に早く辿り着こうと焦って大技を放った為に隙ができてしまい、その隙をオークに狙われる。


「しまった!?」


 オークがソフィーに剣で斬りかかろうとした時、飛んできた大型の魔法の矢が命中して、

 肩から上が消し飛んで魔石に姿を変えた。


「ひぃ!?」


 そして、その大型の魔法の矢はソフィーの横を掠めていって、彼女は肝を冷やす。


 ソフィー達が、その大型の魔法の矢が飛んできたほうを見ると、そこには頭の上に新しいミトゥルヴァが浮いて、周りに新しい武器ゴッデスロッドファミリア(GRファミリア)を展開させたリズが居た。


 GRファミリアは、その名の通り長い杖の形をしており先には宝玉が付いていて、中央辺りには魔力を増幅させるための女神の水晶が、柄の部分には羽の飾りが付いている。


 リズは更にオークに攻撃を続ける為に、着弾予測眼でオークの頭に攻撃マーカーを付けた。


「さっきのは、オーバーキルだったので、今度はGRファミリア3杖ずつで2体に攻撃ッス。ミー、GRファミリア発射ッス!!」


 発射命令とともに周囲の魔力を吸収して、リズはミーに魔力を送り込む。すると、ミーはリズから送り込まれた魔力と自分に蓄えられた魔力を、GRファミリアに送り込む。


 GRファミリアは3杖ずつ集まると先端に付いた魔法の宝玉から、それぞれ魔力の矢を発射させ、発射された3本の魔法の矢は途中で合流して1つの中型の魔法の矢となった。そして、オークの頭めがけて飛んでいき命中すると頭を消し飛ばして魔石に変える。


 リズは、リーゼロッテに言われた通りに移動しながら、GRファミリアを発射してオークを撃破していき、ソフィー達の進路を確保した。


「今のうちに、紫音さんを!」

「ありがとうー、リズちゃん!」


 リズの言葉にアフラは走りながら手を振って答える。


「ジト目~!! 後で文句言ってやるからね!!」


 ソフィーは、先程当てられそうになったことに対して、文句を言いながらリズの切り開いてくれた道を走っていった。



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