番外編

番外編 お試し



 このお話ははじめて読む方へ向けて、本作の作風紹介の為の番外編のようなお話となっています。

気に入って貰えたなら、是非とも本編を続けて読んでみてください。


*決してネタに詰まったとかそういうことではありません。


「よーし、みんな! 昨日の私の提案通り、魔物の拠点に攻め込もう!」

昼食を終えてゆっくりしていたところに、本作主人公の紫音が勇ましくPTメンバーに号令を掛ける。


 すると、それを聞いたメンバーは寝耳に水といった感じで、それぞれ食後の飲み物を飲みながら彼女の事を見ている。


 そして、いつまでも席を立とうともせずに、飲み物を飲み続けているメンバーに対して紫音は語りかける。

「どうしたの、みんな? 頼れるリーダー紫音お姉さんの指示が出ているのに、いつまで食後の優雅な一時を飲み物で楽しみながら過ごす気なの?」


 その紫音の言葉を聞いた、メンバーの一人であるツンデレ属性持ちソフィーが彼女に言い返す。

「 昨日の予定では、午前中街の近くにいる魔物を倒して、午後からはゆっくりしようって言ってたじゃない! 何急にやる気になっているのよ? いつも通りに緩くしてなさいよ。」


「なっ…、何言ってるの、ソフィーちゃん!? 私はいつもやる気と覇気に漲っているよ……」

紫音がソフィーの反論に焦りながら答えると、リズがジト目で冷静に意見を述べる。


「そうッスよ、シオンさん。良いところを見せたい気持ちはわかりますが、普段やりなれてないキャラを演じても、途中で息切れするだけッス。それに何より本編と違う偽ったキャラ演出なんてすれば、詐欺だと訴えられかねないッス。」


「それは、困るよ! よし、今から頼れるリーダーキャラは辞めて、いつもの頼れる『巨乳』のお姉さんキャラに戻るね! 大きいと肩が凝るんだよね~。」


「アナタ、いい加減にしなさいよ! まだキャラを偽るつもりなの!? このミリアの純粋な目を見ても、まだそんな事を言えるの!?」

そう言ってソフィーは、紫音に気弱でまだ純粋さを残す少女ミリアの瞳を見させる。


「シオンさん…、嘘はいけないと…思います…」

ミリアは自信の無さそうな潤んだ瞳で、敬愛する紫音を見つめて小さな声で言ってくる。


 その純粋な瞳を見た紫音は耐えきれずに、自らの嘘を告白する。

「ミリアちゃん、そんな目で今の駄目なお姉さんを見ないで! 『巨乳』というのは 嘘です! 勿論大きさが理由で、肩が凝ったことなんてないです~!!」


 その告白を聞いた女神教徒の回復職エレナは、

「シオンさん、女神様も今の正直な告白を聞いて、きっとお許しくださると思います。」

そう紫音に告げた。


「でも、確かに『巨乳』というのは、良いかも知れないッス。興味を持って貰えるとても魅力的なワードッス。なので、ここはシオンさんの悲しい嘘を、敢えて見て見ぬふりをしましょうッス!!」

リズはジト目のままキリッとした表情で、そう言ってきた。


そのリズの発言を聞いたソフィーが、呆れた顔で彼女に突っ込む。

「だから、嘘はダメだって言ってるでしょうが!」

そしてエレナが続けて、リズに諭すようにこう言った。

「リズちゃん。嘘は女神様とJ〇ROが、許してくれませんよ……」


「はいッス…。シオンさんの胸が『巨乳』という明らかに、嘘大袈裟な表現をしようとしてしまった事を反省するッス!」

女神はともかくJ〇ROの名を出されては、素直に謝罪せざるをえないリズであった。


「みんなで、私の胸をディスってるよね?!」

シオンのこの突っ込みに、ソフィーが突っ込みで返す。

「アナタが、あんな嘘をついたのが始まりじゃない!」


 さらにソフィーはツッコミ続ける。

「あと『巨乳』ワードで隠れていたけど、『いつもの頼れる』というのもダウトだからね、ダウト!」

「頼れるのは、本当だよね!?」

紫音はソフィーに頼れる発言まで、ダウト扱いされたことにショックを受けて、以下のように思考する。


”おっ、おかしいな…。こっちの世界に来てから、私かなり頑張ってきたはずだよ!? それなのに頼りにならないって言われるなんて……。そうか! ソフィーちゃんはツンデレだから、素直に私が頼れるお姉さんだと認めてくれないに違いない…、別の人に聞こう。”

そう考えた紫音は、リズに尋ねることにした。


「リズちゃん! 私頼りになるよね?!」

「…………」

紫音にそう尋ねられたリズは、眠そうなジト目で暫く無言のまま自称『頼りになるお姉さん』と見つめ合いながら、今までの出来事を思い出しながら結論を導く。

「はい……。そうッスね……。」

そっと見つめ合っていた紫音から、目を逸らして彼女はそう答えた。


「何なの、その私に配慮しました的な答え方は!?」

リズの答え方に納得のいかない紫音は

「リズちゃんに聞いたのが間違いだったよ。ミリアちゃん、私は頼れるお姉さんだよね!?」

ミリアに質問をやり直すことにした。


 紫音を敬愛しているミリアからは、勿論期待通りの答えが帰ってくる。

「はい…。シオンさんは…、私にとっていつでも頼れるお姉さんです…。」

「ミリアちゃん、ありがとう~。今のままのミリアちゃんでいてね~。」

紫音は嬉しさの余りに、ミリアに抱きつきながら感謝の言葉を彼女に述べた。


「あ~あ、こんなに話がややこしくなるなら、カッコイイリーダーの台詞じゃなくて『あ~、はらへった~』の方にしておくんだったよ……」

紫音がミリアを抱きしめながら、そう呟くとリズがその話に乗ってくる。

「更に万全を期すなら麦わら帽子を被って、ワンピースを着ていれば、なおさらよかったッス。」

その話を聞いたソフィーがすぐさま突っ込む。

「そっちの方が大問題よ!!」


 そのソフィーのツッコミに対して、リズはあくまで他意はないといった感じで反論する。

「どうしてッスか? 麦わら帽子とワンピースを着用した女の子なんて、珍しくも何ともないッスよ?」

だが、ソフィーも負けじとその反論に的確なツッコミを入れる。

「麦わら帽子とワンピースを着用した女の子は珍しくないけど、その格好で『あ~、はらへった~』なんて言うのは珍しいのよ!! 明確に何か意図的なモノがあるから、そう言わせているんでしょうが!!」


 そして、ソフィーはリズの反論の根本的な間違いを指摘する。

「どこの世界に、麦わら帽子とワンピースを着用して魔王と戦う剣士がいるのよ! 明らかに無理な設定でしょうが!!」

とはいえ、今後そんな設定の物語が出てくるかもと思いつつ、ソフィーは自分の指摘を押し切る。

彼女のその指摘を聞いたリズは、痛い所を突かれたという顔をしている。


「まあ、そもそもシオンさんは、腹ペコキャラでは無いですしね。」

エレナの最後の一言に、リズも素直に自分の否を認めこう言ってきた。

「それもそうッスね。これはシオンさんの負けッス。さあ、謝って!」

紫音はリズの急な謝罪要求に虚を突かれて、どうしたら良いのか解らずに取り敢えず謝っておくことにした。

「え!? あ、はい……。ごめんなさい……。」

それが、この場を穏便に済ませる大人の対応なのだと思いながら……

こうして、最後に主役が謝罪して論争の幕は閉じた。


 本作はこのようにコメディよりの異世界奮闘記となっています。

なお今回のお話では、紫音の性格が本編より少しダメなキャラになってしまいました。

本当の紫音の性格と胸のサイズと活躍が気になった方は、本編をぜひ読んでみてください。

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