90話 四天王との死闘
前回までのあらすじ……
猛虎球場での試合、大阪トラトラズ対愛知リザードズ戦。
7回裏ラッキー7、5対3で2点を追いかける大阪トラトラズの代打、漢・波乱万子が、ホームランを放ちリザードズ投手ヒュドラを、ノックアウト(物理)して降板させることに成功する。
トラトラズは1点を返し点差は1点、次の打者は同じく代打、天河紫音。
果たして大阪トラトラズは、追いつきさらに逆転することが出来るのか?
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アキによってヒュドラ撃破は成されたが、人類側の苦戦は未だ続いていた。
開戦時、人類側は約300人いたが、リザードとヒュドラとの連携攻撃によって、人類側の戦闘可能人数は約130人、負傷者は約120人、残りは力及ばず死に戻ってしまっている。
リザード側は200体近く居たが、今は四天王2体と副官2体、残りは80体程。
ユーウェインと紫音が四天王ナイルと戦い、タイロンがナイルの副官キューバを引きつけている間に、他の者達がリザード達と戦ったり負傷者を後方まで連れて行ったりしている。
波乱万子ことアキがMP切れで後方に下がってくると、回復役達も大忙しで回復作業を行う。
「自分で回復薬が飲めるまで回復した人は、あとは回復薬を飲んで回復してください!」
後方では、その様な声や負傷者の呻き声で満ちていた。
「これが、戦場なんだ……」
アキはその様子を見て思わずそう呟いてしまう。
ナイルは紫音が間合いのギリギリで高速で移動して、死角に移動し続けるため苛立ってきていた。
そして、ついに自ら紫音との距離を詰め武器を彼女に向けて振り降ろすが、紫音はオーラステップで跳躍力を上げて、何とか斜め前方に思い切り身体を投げ出して緊急回避して、その後受け身を取り立ち上がる所謂ローリングで回避する。
ナイルがその立ち上がりを追撃しようとすると、尻尾を避けて左斜め後ろから最高位魔法剣を溜め終わったユーウェインが斬りかかった。
紫音がローリング回避したのはユーウェインの為に、ナイルが彼に背中を向けさせるように誘導するためである。
「よくやってくれたシオン君! 魔法剣フリーズ!」
ナイルはそれを咄嗟に反応して、左盾で防ぐが無理な体勢で防いだため発動したフリーズの氷の柱から逃げられずに、盾と左腕を氷の柱に氷漬けにされてしまう。
ナイルは氷の柱を破壊しようと右腕の剣にオーラを溜め始める。
「シオン君、今だ!」
いつの間にか距離をとった紫音が、居合いの構えで攻撃せずに刀に溜めておいたオーラを更に溜めて、オーラウェイブを放とうとしていた。
ナイルはそれに気づくと、氷の柱を破壊するオーラを溜めるのが間にあわないと判断し、剣にオーラを溜めるのを辞め、そのオーラの剣で自らの左腕を切断し始める。
それを見た紫音は慌てて、居合の構えからオーラウェイブを放つ。
「オーラウェイブ!」
居合の構えから放たれたオーラウェイブは、かなりの速さでナイル目掛けて飛んでいく。
だが、少しの差でナイルは左腕を自ら切断して、紫音の居合オーラウェイブを回避する。
「自分の腕を!?」
紫音はその光景に唖然として見ていると、後ろから声を掛けられた。
「シオンさん、後ろから敵が迫っているわ!!」
エスリンの呼びかけに紫音が反応して後ろを振り向くと、両手に曲剣を持ったミシシッピが自分目掛けて接近してきている。
ヒュドラが撃破されたことにより、後方で様子見をしていたミシシッピは副官のクチビロに遠距離部隊の指揮を任せると、紫音を標的と定めて向かってきていたのだった。
紫音はミシシッピの右腕から繰り出される斬撃を刀で受け流すが、すぐさま左腕の剣の斬撃が紫音を襲う。
刀は右の攻撃を受け流し中なので、紫音は反射的に大刀に左手だけ残して、脇差を右手で素早く抜くと、その抜刀の勢いで相手の左斬撃に脇差を当てて、斬撃の起動を外に反らす事に成功させると、そのままバックステップをして距離を取る。
「スコシハ、ヤルミタイデスネ。ヤハリアナタカラ、コロスベキデスネ」
ミシシッピはそう言うと構え直す。
紫音は一度脇差を鞘に収めた。
(強引に脇差でぶつけて払ったから、その時の衝撃で右手が痺れている……)
紫音は悟られないように、左手で刀をしっかり握って右手は添えるだけで構えると、その紫音を攻撃しようとミシシッピが動き出す。すると、彼の頭を目掛けて2発の魔力の矢が飛んでくる。
ミシシッピは二刀流で切り払うと、さらに2発飛んできて、それを切り払うと更にもう2発飛んできた。
これはリズが放ったモノでミシシッピを暫く足止めするために、彼女はわざと時間差で2発ずつ放っていたのだ。紫音はその隙にミシシッピから距離を取り、右手の痺れの回復を待つ。
ミシシッピは、リズの攻撃をすべて払うと紫音に突進してくる。
紫音は先程の打ち合いで一人では厳しいと判断して、援護が来るまで更に距離を取ろうと思ったが、取りすぎてミシシッピが別の人間を襲うかも知れないと思って、一定の距離を保ちながら待つことにした。
ミシシッピも紫音が一定の距離を保っていることから、その意図に気づいて切り札を出す。
「テールステップ!」
ミシシッピは両足で地面を蹴ると同時に、尻尾でも地面を強く叩いて更に加速力を得る。
その加速力は紫音のそれを越え、彼女に追いつき右斬撃を繰り出した。
「私よりも、速い!!」
紫音は、咄嗟に刀で受け流しながら、ミシシッピの右側に体を逃して左の斬撃を受けないようにするが、ミシシッピはそのまま前に行きながら、再びテールステップで急加速して、紫音の死角に回り込もうとする。
秘眼で強化された動体視力で、紫音はミシシッピの動きを追うが体がついてこない。
彼女は右斜め後ろからのミシシッピの左の一撃目を何とか受け流すが、二撃目の右の斬撃は刀で間に合わないため、脇差を左手で逆手持ちして抜くとそのまま二撃目の剣に刃を当てて、受け流そうとするが力負けして押されてしまう。
「負けるもんか!!」
紫音は力負けして、自分の方に押された左腕を頭で支えながら、体を左に捻ってミシシッピの右斬撃を左に何とか受け流す。
受け流し終えた右手の刀で紫音はミシシッピの顔面を斬りつけるが、バックステップして回避されてしまう。
紫音の顔に、先程脇差をぶつけたときに負傷した頭の傷から血が流れてきたので、刀を握った腕で拭うとミシシッピの次の攻撃を対処する。
だが、先程のような受け流しがそうそう出来るわけもなく、だが、何とか回避を行って致命傷を避けるが、少しずつダメージを負っていく。
加速力で負けているため、逃げることも出来ず紫音は防戦一方だった。
リズは何とか援護をしようとするが、ミシシッピがそれを見込んで紫音と距離を取らないため、魔力の矢を撃てないでいる。
(私は勘違いをしていた……。新しい武器を手に入れたけど、私自身が劇的に強くなったわけじゃなかった…… )
少しずつダメージを受けながら、紫音はそのようなことを考え出していた……
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